虫歯

治らない手湿疹…歯の金属アレルギーが原因かも?

虫歯治療で使用される金属で、アレルギーが発生することがあります。気になる症状と治療法について、簡単にまとめてみました。

丸山 和弘

執筆者:丸山 和弘

歯科医 / 歯の健康ガイド

歯科で使用される金属とアレルギー症状について

歯科金属

歯科金属は口の中の環境にも変化しにくい配合となっている。

歯科の金属アレルギーとは、唾液などによって金属がイオンとなって溶出し、それが吸収されて起こるとされています。原理的にはピアスやネックレスなどのアクセサリーと同じです。歯科で使用される金属は直接口の中で唾液に触れているため、金属アレルギー反応がでやすい環境になります。

一般によく用いられる保険の銀歯などは「金銀パラジウム合金」というものです。配合は、金12%、パラジウム20%がJIS規格で決まられており、それ以外に銀が約49%、銅が約19%、インジウムなど数%を組み合わせます。そのため粗悪な金属などは使用されていません。以前大きな問題になった金属アレルギーの代表格でもある「ニッケル」は、歯科ではほとんど使用されなくなりました。

さらに大幅に金の含有量を増加させた(金の含有量12%以上)保険が適用されない金合金などは、金属アレルギーが起きにくい成分が多く、歯と同じようにすり減るため、歯に優しい金属として利用されています。しかし口腔内金属である以上、どんな金属を使用しても、イオン化した金属の影響で、人によっては、アレルギー反応を起こすこともあります。

歯科用金属などで起こるアレルギーで最近有名になってきたのは、「掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)」というものです。口の中から入り込んだ金属イオンが体内に吸収されて、タンパク質と結合、変質してアレルゲンとなり、アレルギー反応を起こします。手掌・足底にブツブツができて破れてから、ガサガサした状態になります。難治性でなかなか完治せずに、これまで原因がはっきりしませんでした。手足と全く異なる場所である口の中の金属が原因の一つとして考えられるようになり、口の中から金属を排除することで完治しないまでも症状が軽減することも増えています。

これ以外にも、歯科治療後に治りにくい口内炎や歯ぐきの炎症、皮膚トラブルができた、もともとの金属アレルギーがひどくなった、などの症状が現れることがあります。

金属アレルギーの診断と治療について

受診する際は、歯科金属アレルギーに対応する歯科医院や大学病院の金属アレルギー外来などがあります。一般の歯科医院であれば、皮膚科などと連携して、まずアレルギー反応を示す金属の種類をパッチテストなどで確認します。もし金、銀、銅、パラジウムなどに反応するようであれば、口の中の金属に含まれている可能性が高まります。それ以外の金属であれば、口の中の金属の成分を分析することで判明します。

治療としては、原因除去療法が基本となります。これはアレルギー反応を起こす可能性がある金属を取り外し、反応を起こさないセラミックや樹脂などの素材に入れ換えを行うことです。以前はセラミックでは強度を保つことが困難とされていた数本の歯をつないだ大きなブリッジなども、最近では強度のあるジルコニア素材の登場で、ほとんどの被せ物やブリッジなどを強度的にも問題なく入れ替えることができるようになりました。

歯の金属を除去した後は、治療後に原症状がどのように変化したかを観察することになります。金属を取り除いてすぐに症状が改善すると言うよりも、良くなったり悪くなったりを繰り返しながら症状が低減することを待つ感じが多いようです。


治療費について

金属の被せ物をセラミックに置き換える治療に関しては、基本的には保険が適用されない素材が中心となるために、1本で5~15万円程度の費用がかかります。金属の小さなはめ込み部分に関してはセラミックやハイブリッドセラミックと呼ばれる樹脂などを利用して、2~10万円程度の費用が必要です。歯の本数は、上下で28本ありますから、金属の本数によっては高額な治療費が必要となります。

一般的に虫歯の治療で歯に被せ物をする段階は、虫歯が進行した状態が多いものです。歯の治療は、虫歯を早期発見・早期治療を行うことで、最小限の治療に済ませることも可能です。初期の虫歯であれば金属を利用しない樹脂などの詰め物で治すことができます。普段から予防を中心としたしっかりとしたブラッシングを行い、早期発見につながる定期検診などへの投資を行なうことは、金属アレルギー対策だけでなく歯の健康対策にも大変重要なことなのです。

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