相続税法24条の改正とは?
今回は相続税法24条の改正と生命保険を使った相続対策の変化について解説します。
相続税法24条とその改正とは?
もともと相続対策に生命保険はよく使われていました。日本では資産として不動産を所有していることが多いのですが、相続の際にその不動産を現金化できないため遺族の間で分割しにくい、相続税を払うために不動産を売却しなくてはならないなどの欠点があり、それを生命保険の保険金で解消することができます。また生命保険金は法定相続人一人当たり500万円の非課税枠があります。例えば2,000万円の生命保険に入っていた場合、法定相続人が妻と子の2人であれば、1,000万円(500万円×2人)が非課税となります。
そしてこれ以外にも相続税対策に有利な税法として代表的なものに相続税法26条の「生命保険の権利の評価」と相続税法24条の「年金受給権に関する権利(定期金に関する権利)の評価」というものがありました。しかし生命保険の権利の評価は実はすでに廃止されており、また今回の相続税法24条の年金受給権に関する権利の評価についてもやがて廃止されるだろうとは言われていました。
この「年金受給権に関する権利(定期金に関する権利)の評価」とは、自分で保険料負担をしていない個人年金保険の契約があって、将来の年金を自分がもらうときに個人年金というかたちで財産を受取ることになります。このときの年金の評価を下げることができるというものです。
どのくらい評価が下がるかについては、年金の種類や期間によって変わりますが、例えば確定年金の場合、残存期間が15年超~25年以下であれば評価額が年金総額の40%となりました。
評価額が低いということは、課税対象となる資産の金額が下がりますので、相続税の節税が可能になっていたわけです。しかし現行のこうした方法による評価額が実際の年金の受取金額の現在価値とかけ離れすぎている等を踏まえて今回相続税法24条の改正がなされ、「年金受給権に関する権利(定期金に関する権利)の評価」が廃止されたわけです。
相続税法24条とその改正、既に年金保険契約がある場合は?
個人年金保険は相続対策に有効な商品としてさまざまな販売ルートで販売されていました。今回の税制改正により、これから個人年金保険を新規に契約する場合は当然これまでのような年金受給権の評額の優遇は受けられないわけですが、では、すでに既契約がある場合はどのような扱いになるのでしょうか?既存の個人年金保険の契約についても2010年3月31日までに相続や遺贈、贈与により取得していなければ、これまでのような年金受給権の評価額が優遇されることはなくなります。すでにこれらの該当契約がある人には、保険会社の担当者から説明などがあったのではないかと思います。ですから上記に該当しなければ、既存契約についても年金受給権に関する権利の評価は適用されないと思っていてください。
相続税法24条の改正で生命保険を利用した相続税対策は?
相続税の納税資金の確保や遺産を相続人の間で分けやすくするために生命保険を利用するというのは、引き続き有効な方法の一つです。生命保険で現金を作ることで資産の現金化、分割化しやすいことは変りませんし、引き続き生命保険金の非課税枠も使用可能です。相続対策は将来を見越して行うものですが、税制改正も時代にあってこなくなったものは改正されていきます。いたちごっこな面も否定できませんが、相続対策も一度行えば、もう大丈夫ということはありません。
時代に合わせたものに適宜合わせた相続対策が必要になるわけです。必要に応じて相続対策の見直しをしていきましょう。