親の支援が受けやすく
子ども世帯の住宅取得が大きく前進することも
まず挙げたいのが、住宅取得資金の贈与です。「近くに住むなら」「同居するなら」と、親が住宅資金を支援してくれる可能性が高まります。もちろん、子ども世帯のほうでも相談しやすいということになるでしょう。
今なら住宅取得資金で親から贈与を受けても、贈与税が非課税になる制度が使えます。表のように、徐々に非課税枠が縮小していきます。この制度を利用すれば、多額の贈与を受けられることができますし、生前贈与で相続財産を圧縮するという相続税の節税対策にもなります。
さらに同居の場合は、親の所有する土地に子どもが2世帯住宅を建てたり、2世帯住宅にリフォームしたりする場合も多く、その場合は子ども世帯が負担するのは建築費用やリフォーム費用だけで、土地代は不要です。単独で住宅を買うより費用を抑えることができるため、マイホームを得やすくなると考えられます。
また、自治体によっては、3世代同居・近居に対して補助金を出している場合もあります。例えば、千葉市や大阪府岸和田市では同居・近居に対して50万円を助成する制度を設けています。
同居か近居か
どう考えればいいの?
子育て家族から見て、同居・近居には多様なメリットがあることがわかりましたが、同居か近居か、どう考えればよいのでしょう。まずは、親世帯、子ども世帯がどう暮らしていきたいか、よく話し合う必要があります。近くに住めば互いの暮らしぶりが分かり、「プライバシーを保ちづらい」「ライフスタイルの違い、生活時間の違いが気になる」といったマイナス面もあります。
こうした点をよく考えて、同居のメリットが大きいと思うのか、ほどよい距離の近居がよいと思うのか、離れて暮らしたほうがよいと思うのか、総合的に長期的に考える必要があるでしょう。
また、同居については、新たに2世帯用の土地を購入する場合もありますが、多くは親世帯の土地を利用します。土地の大きさや建築上の制限によっては、希望通りの2世帯住宅が建てられず、想定した暮らしができないといったこともありますから、どういった住宅なら建てられるのかもあらかじめ知っておいたほうがよいでしょう。
一方で、同居の場合は相続時に、土地の評価額を8割減(240平米まで)にする「小規模宅地等の特例」が使えます。副産物として、相続税の節税対策もあるということです。
ただし、兄弟姉妹と相続時にトラブルになって、売却して現金化せざるを得ないとなった場合は、マイホームもなくなりますので、慎重に判断しましょう。
3世代同居・近居のメリットはさまざまあります。互いにメリットを享受しながら、干渉しすぎない関係性を築けるように、よく話し合って決めるのがよいと思います。
○野村不動産アーバンネット「同居・近居に関する調査結果」
http://www.nomura-un.co.jp/page/news/pdf/20150507.pdf