これからの男性が目指すべき本当の強さとは?
仕事との両立ではなく、育児・家庭に軸足を置く勇気が必要
でもでも、それって、他人との比較でしか自分を捉えられていないということではないでしょうか。競争社会に染まりすぎてしまっているもしくは他人の目を気にしすぎているだけではないでしょうか。
これからの父親が目指すべきカッコ良さは、24時間働き続けることでも、「ちょい不良」を気取ることでもありません。例えば金曜日の夜には毅然として飲み会を入れず、そこから家族との週末を始めるとか。ときどき子供を預けて妻とデートするためにも、普段から義父義母とも仲良くできるとか。家族が寝静まっている早朝や深夜の時間を利用して、一人の時間を大切にするとか。自分なりのライフスタイルを貫ける芯の強さを持っているってことじゃないでしょうか。
まず自分から、子育ての時期に、仕事上でのレースから一度降りてみたり、少なくともペースダウンしてみたりということをしてみてもいいのではないでしょうか。それで会社での評価が下がっても、出世競争から遅れても、それでいいと思えばいいんじゃないでしょうか。それができることが、家族人として、仕事人として、そして人としての本当の強さじゃないかと思います。まあ、「強さ」って言葉も違うのかもしれませんけどね。
それに、みんながそうすれば、結果、競争だって緩和するはずです。今はみんなが必死になって今まで通りのペースでレースを続けようとしているからみんながつらくなっているだけではないでしょうか。
「もっとがんばる」ことよりも「何かを手放す勇気」
そもそも、「仕事が忙しくて育児ができない」なんて、するべき仕事があって、世界一愛おしい子どもがいて、しっかりもののママがいるという、奇跡的なくらいに恵まれた状況にいる男性でないと口にできない超贅沢なセリフです。要するにそういう超贅沢なパパがやらなきゃいけないのは「もっとがんばる」ことではなくて、「何かを手放す勇気をもつこと」ではないかと思います。それで僕は会社を辞めちゃいました。ま、それはむやみにはおすすめしませんけど。
家族時間の量を追い求めると、どうやって仕事を早く終えるかばかりに意識がいってしまいます。仕事を早く終えること自体が自己目的化していくのです。結局頭の中は仕事のことで占領されてしまいます。
ひとまず量は後回しにして、質を追い求めるようになると、父親の意識が直接家族との時間に向けられます。すると仕事優先の価値観に乗っ取られていた無意識が、家族との時間に向けられるようになります。
無意識が家族との時間に向かえば、言動が変化をはじめます。家族との時間を一番に考えてライフスタイルを調整しはじめるのです。無意識の作用で、ほとんど自動的にそうなります。特に強く意識しなくても、じわりじわりと家族との時間が増えていきます。つまり質を追い求めれば、量は後から付いてくるのです!
無意識がライフスタイルをデザインする
ライフスタイルなど、何か大きなことを変えようと思ったら、余計なことを考えず、まずはいちばん大事なものに意識を傾けることが大切です。すると心理学でいう「観念運動」のようなものが作用し始めます。「観念運動」とは、無意識がその人自身を操りはじめるということです。「夫婦喧嘩ではお互いに言いたいことを言ったらおしまい。その場で結論を出さなくてもいい。そうすればお互いの無意識が、勝手にいい落としどころを見つけてくれる」と僕がいつも推奨しているのもその原理に則ってのことです。これから育児をはじめるということは、新規事業の立ち上げをするようなもの。今までの業務と併行して新規事業を立ち上げるなど至難の業。今までの業務については多少業績が悪化してもいいからと割り切り、できるだけうまくしくみで回しながら、新規事業のほうに軸足を移さないと、新規事業はうまくスタートできない。だから「両立」ではなく、一度、育児もしくは家庭に軸足を置くという勇気が必要。いったん軸足を家庭において、そっちの足場をしっかり固めてからまた仕事に軸足を移せばいい。そうやって長い時間軸の中でバランスをとればいい。
実際にそうしてみると、心配していたほどには仕事の成果も落ちないものだと思います。案ずるより行うが易しということです。少なくとも「仕事での成果を落とさずに……」なんて手品みたいなことを言っているうちは何も変わらないでしょう。
でも、弱いから欲張っちゃうんですよね、男って。