住宅性能表示制度を利用する人が増加
今回の調査結果では、約半分の51.9%の人が住宅性能表示制度を利用しています。利用者の割合は、2009年度に62.7%と最も高くなりましたが、2011年度が52.2%、2012年度が49.3%というように最近は50%前後です。この調査では利用者の割合はさほど増えていませんが、利用者数は増えているようです。国土交通省のデータによると、一戸建て住宅で、設計住宅性能評価を受けた住戸は、2009年度が77,166戸でした。2011年度は92,092戸、2012年度は93,693戸、2013年度は100,339戸になりました。別々の統計ではありますが、年を追うごとに利用者は増加しているということになりますね。
住宅性能表示制度を利用するということは、第三者機関によるチェックを受け、客観的に評価されるということです。また、建設住宅性能評価書を受けた住宅は、完成後、業者などと紛争になった場合、紛争処理機関が1件1万円で利用でき、スピーディーな解決が図れます。そのほか、地震保険料が割引になったり、住宅ローンの金利優遇を受けられることもあります。こういったメリットがあることを理解し、コストをかけて表示制度を利用する人が増えているのではないでしょうか。
住宅性能にこだわる人が増えてきた!
利用の内容には変化が見られます。住宅性能表示制度の各項目において、最高等級を取得している割合が年々増えているのです。例えば「耐震」では、表示制度の利用者が6割を越えた2009年度に、最高等級3を取得した家は81.7%でしたが、2013年度では88.2%に。「耐久性(劣化対策)」では、最高等級3を取得した家は2006年度が82.9%だったのに対し、2013年度は90.5%と高い比率になりました。
そのほかの「維持管理」や「省エネ対策」「ホルムアルデヒド対策棟」「バリアフリー対策」などの項目でも、下記のように同じような傾向が見られます。
・2009年度→2013年度 最高等級取得の割合(最高等級)
維持管理(3等級) 77.0%→82.3%
省エネ対策(4等級) 65.7%→73.7%
ホルムアルデヒド対策(3等級)80.5%→83.0%
バリアフリー対策(5等級) 1.8%→22.1%
さらに、長期優良住宅の認定の割合は、2012年度63.7%→2013年度70.7%に増えました。大手住宅メーカーで建築した家の7割以上が長期優良住宅だということになります。長期優良住宅の場合は減税というメリットもあるとは思いますが、ここからも、性能にこだわる人が増えていると言えるのではないでしょうか。
標準仕様の高水準化と関心の高まり
なぜ、住宅の性能にこだわる人が増えたのか、それについては2つの理由があると考えられます。ひとつは、住宅メーカーが建てる住宅の基本性能そのものが向上したこと。住宅メーカーが用意している標準仕様が長期優良住宅や、住宅性能表示制度の主要項目の最高等級に相当する仕様になっていることも珍しくありません。
構造体は家が完成してしまえば隠れてしまいますが、性能に影響する重要な部分
もうひとつは、家を建てる人の意識が変わってきたこと。大地震などを経て、耐震性や耐久性を重視する人が増えてきたように思います。実際に、新築するなら「耐震・耐久性の高い家にしたい」という声を聞くようになってきました。各社のカタログやインターネットでも「長く暮らす」とか「ロングライフ」という言葉を目にする機会が多くなっています。
また、省エネについては、太陽光発電、低炭素住宅、フラット35Sなど、優遇制度や減税などの後押しもあり、節約の観点からも関心が高まっているようです。2013年には省エネ基準が改正され、2020年の義務化が決まるなど、時代は確実に省エネ性能を求める方向へシフトしています。
日本の住宅は性能が向上し、寿命も伸びている!?
2013年度では、約3割が古い家を解体しての建て替えでしたが、解体された家の平均築年数は38.3年。2007年度の33.3年と比べると、徐々に築年数が長くなっています。38.3年前といえば、1970年代後半。この間に建築基準法改正などにより、住宅の性能はアップしました。キッチンなど設備は飛躍的に進歩し、省エネ性能も向上。複層ガラスも一般的になってきました。性能が劣る古い住宅が解体され、耐震性や耐久性の高い家に建て替えられています。こうして、日本の住宅の水準は高くなっていき、住宅の寿命が伸びていると思いたいところです。
これから家を建てる人は、見た目の豪華さやデザインだけに目を奪われることなく、耐震性や耐久性、気密・断熱性など、住宅性能にもこだわって長く暮らせる家を建ててほしいと思います。