溢れる陽光と陽気な人々~スイス、ティチーノ地方
湖畔のプロムナードに咲き誇る花と木は南国の趣
スイス南部、イタリアと国境を接するティチーノ地方
しかしティチーノ地方は、個人的にガイドのとてもお気に入りの場所なのです。ガイドが初めてこの地方を訪れたのは5月。山岳リゾート地として名高いサン・モリッツから、ティチーノ地方の中心都市、ルガーノまでのバス便を利用しました。
夏のシーズン前の静かな雰囲気が漂うサン・モリッツからルガーノに到着して驚いたのは、まずその活気でした。アルプスの南に位置し、陽光溢れるティチーノ地方のシーズンは長く、5月には大勢の人々が旧市街の広場や湖畔のプロムナードを散策しています。
そしてこの地方の一番の魅力は、イタリア語を話す陽気な人々。ここはスイスのイタリア語圏なのです。ルガーノで入ったレストランでこんなことがありました。お店のスタッフ注文を聞き間違えて一品多く持ってきてしまったのですが、大声で笑いながら「これは無料サービスよ。どうぞ気にしないで食べて!」。恰幅の良い女性スタッフのその時の笑顔が、今も強烈な印象で残っています。
そんな陽気なティチーノ地方ですが、スイスが誇る「安全、確実、清潔」という面もスイスの他の地域同様、しっかり保っています。スイスとイタリアの両方の良い部分を兼ね備えた場所、とも言えるでしょう。ここでは隠れた魅力に溢れるスイス、ティチーノ地方をご紹介します。
ティチーノ地方の中心都市、周辺の魅力も一杯のルガーノ
ショッピングの後は広場のカフェで一休み 画像提供スイス政府観光局www.myswiss.jp
旧市街は小路が複雑に入り組み、ショッピング天国になっています。スイスやイタリアの有名ブランドをはじめ、生活雑貨や食料品など個性的なお店が軒を並べています。ガイドが秋にここを訪れた時は、通りのそこここに栗の屋台が立ち、美味しそうな匂いに道行く人が引き寄せられていました。歩き疲れた後は、町の中心地でいつも賑わいを見せるリフォルマ広場のカフェで一休みしましょう。
ルガーノの数ある観光ポイントの中で必見は、サンタ・マリア・デッリ・アンジョリ教会。イタリア人画家、ルイーニがキリストの磔刑を描いた巨大な壁画があります。ルイーニはイタリア盛期ルネサンスの時期に、レオナルド・ダ・ヴィンチから大きな影響を受けた画家の一人です。
「スイスのリオ」と形容されるルガーノ 画像提供:スイス政府観光局 www.myswiss.jp
ガンドリアの村は湖から一望できる 画像提供:スイス政府観光局 www.myswiss.jp
マジョーレ湖畔のロカルノとヴェルザスカ谷
ロカルノの高台にある教会、マドンナ・デル・サッソ 画像提供:スイス政府観光局 www.myswiss.jp
ロカルノと言えば、世界史の教科書に出てきたロカルノ条約を覚えているでしょうか。これは1925年、ここで調印された国際条約で、イギリス、フランス、ドイツ、イタリアなど西ヨーロッパの集団安全保障による国際的安定がもたらされました。
映画ファンならロカルノ国際映画祭の方が馴染みあるかもしれません。例年8月、カンヌとベネチアの映画祭の間にあたる時期に開催され、期間中述べ20万人近い観客が集まる毎年恒例のビッグイベントです。
スイスの秘境と呼ばれるヴェルザスカ谷 画像提供:スイス政府観光局 www.myswiss.jp
アクセスはロカルノからポストバス(バスの定期便)を利用。谷に入るとすぐ、バスは巨大なダムの近くを通ります。ここは映画「007/ゴールデンアイ」のロケ地となった場所で、ジェームズ・ボンドがはるか眼下の川をめがけてジャンプしたところです。
ボンドの追体験をしたい人は、ここのバンジージャンプに挑戦してはいかがでしょうか?高さ220メートルは数ある世界のバンジーの中でもトップクラス。東京、池袋にあるサンシャイン60の高さが240メートル(60階建)なので、ほぼこれに近い地点から真っ逆さまに飛び降りることになります。ダムの淵のジャンプ地点に立ち、係員のOKが出てから飛び降りるまでの制限時間は3分。我こそはという人は、ぜひどうぞ!
その名も「007ゴールデンアイバンジージャンプ」 画像提供:スイス政府観光局 www.myswiss.jp
世界遺産の古城がシンボルのベリンツォーナ
カステル・グランデの周囲に広がるベリンツォーナの町 画像提供:スイス政府観光局 www.myswiss.jp
サン・ゴッタルド峠やサン・ベルナルディーノ峠をはじめとするいくつかの峠道がベリンツォーナを通ります。中世の時代、これらの峠を自由に行き来するには、ベリンツォーナの町を押さえる必要がありました。
中世よりこの地はヴィスコンティ家などのイタリアの諸侯がこの地を治め、スイスがこれを押し返すといった攻防が繰り広げられていました。そこで戦略上特に重要な拠点だったこの町に、次々と城が築かれていったのです。
3つの古城の中で、町中からのアクセスが最も便利なのが大きな岩山の上にそびえるカステル・グランデ。1980年から12年の歳月をかけて修復が行われ、昔のままの外観を留めながらレストランや考古学博物館を併設する市民の憩いの場に変貌しています。
カステル・グランデの上には、モンテベッロ城、サッソ・コルバーロ城と連なり、それぞれの城内には博物館があります。ベリンツォーナはルガーノやロカルノから列車で20~30分の距離なので、アクセスもとても便利です。
ティチーノ地方で味わうイタリア料理と赤ワイン
花の島、ブリサーゴのグロット 画像提供:スイス政府観光局 www.myswiss.jp
この地方には通常のレストランに加え、グロットGrotto と呼ばれる小さな食堂兼居酒屋がたくさんあります。グロットは「小さなほら穴」という意味があり、もともと山の洞窟を利用してワインやサラミを保存する貯蔵庫でした。そこに人が集まり、簡単な食事が楽しめるようになったのです。設備こそ簡素ですが、誰もがこの土地に溶け込んだ気分を味わうことができるでしょう。
ピザ、パスタ、リゾット、ミネストローネなど、この地方ならでは料理に欠かせないのがワイン。ティチーノ地方では、フランスのボルドー地方から運ばれたメルロー種の赤ワインが有名です。食事の後は、この地方の特産品のひとつ、栗を使ったデザートで締めくくりましょう。
スイスからもイタリアからも便利なアクセス
■チューリッヒ/ルツェルン方面からチューリッヒ中央駅からルガーノまでスイス国鉄で約3時間。ルガーノ近郊には空港もあり、チューリヒから空路移動も可能です。ルツェルンからはスイス国鉄で2時間半~3時間。ルツェルンからは湖船と列車を組み合わせたパッケージ、「ウィリアムテル特急」でルガーノまたはロカルノまで行くことができます。
■ミラノ方面から
ミラノ中央駅からルガーノまで国際列車で約1時間10分。ミラノ・マルペンサ空港からルガーノまで空港バスで約1時間20分。ミラノ・リナーテ空港から空港バスで約2時間。
■サン・モリッツ方面から
サン・モリッツからルガーノまでパーム特急(バス)で約4時間。サン・モリッツからティラーノ乗り換え、ベルニナ特急のバスでルガーノ、またはサン・モリッツから列車とバスを乗り継いでサン・ベルナルディーノ峠を越え、ベリンツォーナに行くこともできます。
■ツェルマット方面から
百の谷を走るチェントヴァッリ鉄道 画像提供:スイス政府観光局 www.myswiss.jp