クラブと代表に横たわる「目標の違い」
なぜか? もっとも大きな理由は、クラブと日本代表の「目標の違い」だ。クラブは1シーズンごとの積み重ねである。とくにJリーグは、今年から2ステージ制となった。目の前の試合を確実に勝っていかなければ、望むべき結果をつかむことはできない。メンバー選考は、実力重視へと傾く。そもそもプロフェッショナルの本質として、ポジションは与えられるものではなくつかみとるものでもある。
目の前の試合を勝っていくのは、日本代表にも共通する。選手自身でポジションをつかまなければならないことも同じだ。
ただ、こちらは1シーズンごとに結果が問われる戦いではない。4年に一度のW杯が総決算となる。2018年のロシアW杯から逆算して、チーム作りを進めていかなければならない。現在進行形で結果を追求しつつ、未来も見据えていくべきなのだ。
たとえば、代表で長く不動のレギュラーとして君臨してきた選手にも、国際舞台から退く時は訪れる。「いま」は何の不安もないポジションでも、後継候補は探しておかなければならないのだ。
ハリルホジッチ監督のチーム作りに眼を映そう。
チームの始動となった3月の国際試合で、旧ユーゴスラビア出身の指揮官は遠藤を招集しなかった。彼が定位置とするボランチのポジションでは、22歳の柴崎岳(鹿島アントラーズ)らが台頭しつつある。ハビエル・アギーレ前監督のもとでも、柴崎は潜在能力と将来性を示した。ハリルホジッチ監督も彼の実力を評価し、世代交代を進めたのだ。
大久保は3年後のロシアW杯に出場できるのか?
5月12日から行われる合宿には、32歳の大久保嘉人が招集されている。2013、14年に2年連続でJ1リーグの得点王に輝いた彼は、今シーズンも得点ランキングの上位を快走している。実績から判断すれば、日本代表入りは当然である。ただ、18年のロシアW杯を、彼は36歳で迎えることになる。「3年後もいまと同じレベルを維持できているのか」という疑問は残る。メディアが彼の代表候補入りを騒ぐ理由のひとつだ。
結論から言えば、3年後も活躍できる可能性は高い。
国内リーグよりゲームのレベルがはるかに高く、心身にかかるプレッシャーも大きいW杯で、36歳の選手がフル稼働するのは難しいかもしれない。だが、大久保のように経験豊富な選手は、精神的な重圧との向き合いかたに優れる。フィジカル的な部分については、レギュラーではなく途中出場での起用を見込めばいい。
昨夏のブラジルW杯では、ドイツのミロスラフ・クローゼがスーパーサブの役割を担った。4度目のW杯に臨んだ36歳(年齢はすべて当時・以下同)の彼は、5試合に出場して2ゴールをマークした。
他ならぬ日本も、ベテランに苦しめられた。コートジボワールのディディエ・ドログバである。日本が1対0とリードした後半途中に、36歳の彼は交代選手として起用された。
結果はご存じのとおりである。ドログバの登場で日本のディフェンスは混乱し、コートジボワールは逆転勝利をつかんだのだった。
クローゼとドログバだけではない。日本が対戦したギリシャでは、37歳のギオルゴス・カラグニスが中盤で奮闘した。チームの全4試合に出場している。
ハリルホジッチ監督率いる現在の日本代表は、2018年に30歳から32歳になる選手が主力を担っている。本田圭佑(ACミラン/イタリア)、長友佑都(インテル・ミラノ/イタリア)、岡崎慎司(マインツ/ドイツ)らは1986年生まれで、内田篤人(シャルケ/ドイツ)は1988年生まれだ。チーム全体の年齢バランスには、注意を払わなければならない。
いずれにしても、実力ある選手を年齢だけで切り捨てるのは、人材の活用方法としてもったいないだろう。サッカー選手の寿命は国際的にも伸びており、35歳を過ぎても欧州のトップリーグでプレーする選手は数多い。年齢に対する概念を改めることも、世界と伍して戦っていくためには必要である。