「出世しない夫」の妻……21世紀の「内助の功」は?
どうやったらだんな様をサポートできる?
春は人事異動の季節。転勤や転職で、だんな様が新しい職場に移られた方、また、職場は同じでも部署の配置換えや業務分担の変更があったり、上司や部下に新しい方が配属されたりなど、何らかの働く環境に変化があった方がほとんどかもしれません。
サラリーマンにとって春は昇進や降格の季節でもあります。同期や年の近い先輩や後輩が、課長になっただの、出向しただの、課長からヒラにもどっただの、人事の話題は最も関心が高いでしょう。人事の話は妻にとっても気になるもの。同じ社宅にいるような職住接近の環境ならもちろんですし、そうでなくても、自分のだんな様の会社での「出世」は、妻にとって一大関心事です。
しかし、社会も環境も変化している中、「この会社で課長になれるかどうか」がだんな様のキャリアの中での最重点事項ではなくなってきていると考えることもできます。
そこで今回は「だんな様がなかなか出世しない」とお悩みの妻の皆様と、今どきの会社やだんな様の働き方を考えながら、21世紀の「内助の功」を考えてみましょう。
ウチのだんな様が「出世」できない理由とは
いわゆる会社での「出世」は社員の人数とポストの問題、さらに日本の景気や社会情勢とも深く関係しています。
バブル期入社の40代後半から50代前半のだんな様たちにとっては、すでに出世レースは終盤。ゴールももう見えてきています。
大量採用で同期が多い割にはポストが少なく、かつては大卒なら8割が管理職になれた会社でも、課長ポストを得られるのは半数以下、というのがこの世代。すでに40代のうちから親会社から関連会社に「出向」そのまま「転籍」と本体を離れてしまった方も少なくないでしょう。
また幸運にも親会社で次長・部長などのポストを得ていたとしても、55歳の「役職定年」をもうじき迎え、一握りの経営層への昇進組以外は、お役無しの一般社員に戻されてしまいます。
また、バブル後の「氷河期」に入社の30代後半から40代前半のだんな様たちは、採用人数が少なく同期や前後に入社した社員が少ないのが特徴です。先輩や後輩が少ない職場環境で育ったため職場で教育を受けたり、逆にリーダーシップを発揮するような経験もない方が多いという評価を耳にすることもあります。
さらにこの世代の社会人生活は日本経済の最も厳しい時期と重なっていますので、バブル世代とは違い、会社での「おいしい体験」もほとんどなかったはず。
そんな中で、一生懸命働いても課長にもなれないバブル組を眺め、少ない人数で多くの仕事をこなし、忙しさから、時には心を壊す先輩や同期たちを目の当たりにし、
「この先10年頑張っても自分の将来はどうなるだろう…」
とモチベーションがどん底な方も少なくないでしょう。
そんな環境の中での「管理職」のポストはある人にとっては「なりたいけどなれない」ものであり、また別の人にとっては「全然なりたくない」ものでもあります。
「うちのだんな様、いつまでたってもヒラで困るわ。」という妻の皆様は、まずだんな様がどちらのタイプであるのかをしっかり見極めましょう。このタイプの違いによって、声がけの仕方、サポートの仕方が全く異なるのは言うまでもありません。
「21世紀の内助の功」の第一歩は、だんな様の管理職に対する考え方を見極める点から始まるのです。
では次に、2つに分けただんな様のタイプに沿って、適切なサポートの仕方、誘導の仕方を考えていきましょう。
管理職に「なりたいけどなれない」だんな様の場合
こんなだんな様の頭の中はまだ「昭和」。会社の中での自分の存在、立ち位置に価値を見出すタイプです。
このようなだんな様の場合、プライドがあってめったに弱音を吐かないでしょうが、会社での同期の出世、後輩の台頭に、毎日プレッシャーを感じています。そこで、会社に認められようとキャパ以上に頑張ってしまい、過労に陥る傾向があるかもしれません。
妻としては、家庭が癒しの場となるよう、家庭の環境を整えてあげることがまず大事です。また、だんな様が会社の話をするときには、敢えて人事の話題には触れないようにし、「●●さんのだんな様は…」などの噂話は避けましょう。
ポイントは、だんな様ががんばっていることを認め、感謝していることをわかりやすく伝え、だんな様自身が、自信を取り戻し、安心できるようなコミュニケーションを心がけることです。子供さんを使って「パパってすごーい!」といわせるようなシーンを演出するのも有効です。
一方で、もし、妻自身が会社のポストなどにこだわっているとしたら、妻も発想の転換をすることが必要です。今や日本を代表するような企業でも大幅赤字を出したり、海外の企業に買収されるような時代。現在の会社のポストにこだわるより、だんな様自身が元気で楽しく、長く働ける環境でいることの方が数倍大事です。だんな様も、そのような価値観を持てるよう、少しずつ誘導していくこともおすすめです。
管理職に「なりたくない」だんな様の場合
こんなだんな様に言わせれば、会社のわずかなポストめぐって、社員が争奪戦を繰り広げるような状態はナンセンス。「課長になっちゃったら残業代も出ないし、土日も会社の仕事が発生するし損じゃない?」と合理的に考えることができるタイプです。
ただし、会社のポストにこだわらず自由に働くことを志向しているのか、それとも単に、働くことに夢が持てず、モチベーションの低い状態にいるのかは慎重に見極めましょう。
このようなだんな様へのサポートは、まずは彼が自分のキャリア設計や将来の収入プランをどう考えているのかを、一緒に確認するところから始めましょう。
「夢がない」だんな様の場合は、一緒に目標探しをしてあげることも有効です。本人のプライドや責任感を上手に刺激しながら、やる気を育てていきましょう。
そして具体的にだんな様のキャリア設計プランが確認できたら、その実現に向け発生する転職、キャリアアップ、スキルアップ、就学や留学など、様々な「変化」をしっかりサポートしてあげることが大事です。
最近では共働きの妻が稼ぎ、だんな様は学生に戻ってMBA取得に向け勉強。などという、大胆な夫婦の役割分担の例もあります。
もちろん、だんな様の働き方に理解を示し、妻自身が「会社のポスト」にこだわらない柔軟な視点を持つことが大事なことは言うまでもありません。
かつての「出世しない夫」の妻は、それを嘆くか、我慢するか、夫に文句をぶつけるか、あるいはただひたすら励まし、応援するしかありませんでした。しかしこれからの「出世しない夫」の妻には、広い視野と家族の将来のプランニング力と夫のプロデュース力が必要となるといえるのではないでしょうか。
【関連記事】