資産運用/投資初心者にもできるカンタン資産運用法

40代からの老後積立は、財形年金と確定拠出年金で

多くの40代の世帯は、これから子どもの教育費がかかる時期にさしかかります。住宅ローンの返済もあれば、自分たちの老後資金は後回しになってしまう家庭も。でも、同時並行に準備しておかないと、時間が過ぎ去るばかりです。ムリなく準備できるオトクな制度を優先的に使いましょう。どんな制度があるのか解説します。

伊藤 加奈子

執筆者:伊藤 加奈子

貯蓄ガイド

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<目次>

住宅購入が終わっていれば、「財形年金」をフル活用

老後資金を貯めなければと、40代から資産運用を開始するのもいいのですが、それは勤務先にオトクな資産形成の制度がない場合です。まず勤務先に「財形貯蓄制度」があるか、確認しましょう。
40代でやっておきたい資産防衛

40代でやっておきたい資産作り

厚生労働省の「財形貯蓄制度の実施状況」(2022年3月末時点)によると、財形貯蓄制度の契約件数は636万件(前年比95.0%)。そのうち一般財形の契約件数は444.7万件、財形住宅は51.1万件、財形年金は140.4万件となっています。企業によっては、一般財形は導入されているが、財形年金は使えないというケースもあるでしょう。実態としては企業規模によって導入の状況が変わりますが、もしも自分の勤務先で財形貯蓄制度を導入していたら、使わない手はありません。

一般財形は分離課税で、通常の預貯金と同じように利息に税金がかかります。しかし、財形住宅と財形年金は、2つ合わせて貯蓄残高550万円(貯蓄型)までは利息が非課税になります。

今、40代でそろそろ老後資金をと考えるなら、まずは「財形年金」の積み立てを利用しましょう。

財形年金の加入条件のひとつに、契約時55歳未満、積立期間5年以上というものがあります。定年が60歳だとして、54歳から始めて5年間積み立てるという方法もありますが、非課税特典の550万円をフルに活用しようとすると、毎月の積立額は約9万円になります。

もちろん、積立可能な金額でできる範囲でということでもいいのですが、せっかくの非課税特典。フルに活用したいものです。現在40歳であれば、積立期間は20年。毎月の積立額は約2万2000円。これならムリなく老後資金を貯めることができるのではないでしょうか。

財形年金のメリットとして挙げられるのは、引き出しは原則60歳以降と決められている点です。60歳以降、5年以上20年までの期間が、年金として受け取る期間となっています。また60歳すぐではなく、5年の据え置きが可能なので、定年後65歳までは再雇用などで働き、65歳から年金として受け取ることもできます。公的年金の受給開始は原則65歳からなので、定年からの5年間、無収入期間を乗り切るための貯蓄と考えることもできるでしょう。

財形年金は、原則的に途中で引き出せない、目的外の引き出しができないという縛りがあるからこそ、確実に老後資金として準備できます。これは、貯蓄下手な人にとっては、最大のメリットかもしれません。

財形制度がなければ確定拠出年金を利用

もうひとつ、特典のある資産形成のツールは「企業型確定拠出年金(DC)」です。公的年金を補完する役割として2001年に始まった制度です。勤務先で導入していれば、利用すべきです。最近の傾向として、財形貯蓄制度や従来型の確定給付年金に代わり、この企業型確定拠出年金制度を導入する企業が増えています。2022年3月末現在で、約782万人が加入しています(厚生労働省データより)。

基本的な仕組みは、会社が掛金を拠出し、従業員は運用商品を選択、運用途中での商品入れ替えの指示もできます。会社が導入していればマッチング拠出といって、会社の掛金に従業員が掛金を上乗せすることもできます。その場合、従業員の掛金は全額所得控除になるので、所得税、住民税の軽減という観点からも有利なものです。運用中の利益も非課税になるので、効率よく運用することができます。また、受け取り時には退職所得控除や公的年金等控除の対象となり、税の優遇が受けられます。掛金は、会社が他の企業年金を実施していなければ、月額最大5万5000円。他の企業年金を実施している場合は月額2万7500円です。マッチング拠出は、その限度額の範囲で、会社の拠出額を上回らない金額で設定できます。

運用商品は、企業によってさまざまですが、元本保証の預貯金から投資信託などリスク商品まであります。すでに定期預金など何らかの預貯金があるなら、投資信託などで運用するほうが、この制度の利用価値が高いでしょう。

個人で投資信託の積立を始めようとすると、数多くの銘柄から選ぶのに時間がかかります。しかし、企業型確定拠出年金のラインアップ数はそれほど多くはありません。物足りないと感じるかもしれませんが、何よりも少しでも早く始めることが大事なのです。ハイリスクのものは制度上、取り扱っていないので、1~2%を目指す運用で十分な老後資金が確保できるのではないでしょうか。

なお、現行制度では、企業型確定拠出年金加入者がiDeCoに加入する場合、規約の定めが必要ですが、2022年10月からは、規約の定めが不要となり、iDeCoを利用することが可能になりました。

たとえば、これまで月額最大5万5000円のうち、事業者掛金が2万円だった場合、3万5000円が残っている枠になりますが、規約がなければ残りの枠をiDeCoで運用することはできませんでした。これが2022年10月からは、上限2万円の範囲内であれば、iDeCoを利用することができるようになりました。iDeCo加入にあたっては要件がありますので、十分確認するようにしましょう。

マッチング拠出を導入している企業の企業型確定拠出年金加入者は、2022年10月以降、マッチング拠出を利用するか、iDeCoに加入するかを自由に選択できるようになります。

自営業者でも加入できる個人型確定拠出年金

とかく、こうした公的な制度から取り残される自営業者ですが、確定拠出年金は会社員だけの制度ではありません。自営業者や、勤務先で導入していない会社員、公務員、専業主婦は「個人型確定拠出年金(=iDeCo)」を利用することができます。つまり、企業型確定拠出年金に加入できない人でも加入できる制度なのです。

自営業なら月額6万8000円(国民年金基金と合算の限度額)、会社員や公務員なら月額2万3000円まで拠出できます。加入は取扱金融機関を調べて、直接申し込みをします。2023年6月時点で約290万人が加入しており、急速に増加しています。

自営業者にとっての最大のメリットは、掛金が全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)になること。運用中の利益が非課税になる点も企業型と同様です。ただし、個人型の場合は、運営管理手数料が運用期間中にかかるので、その点は注意が必要です。

受取開始は企業型も個人型も原則60歳から可能ですが、加入期間が10年未満だと受取開始年齢が引き延ばしになるので(たとえば8年以上10年未満だと61歳から)、早めに加入するというのも大切なポイントです。

2022年5月からは加入可能年齢が60歳未満から65歳未満に拡大され、2022年4月から受給開始時期を60歳から75歳までの間で、自由に選択できるようになりました。

多くの40代は、子どもの教育費や住宅ローンの返済が重なり、家計は厳しくなる時期。しかし50代になればラクになるということはありません。いまから老後資金を考えておくのは本当に重要で、そのためにこうした税の優遇などが受けられる制度を活用して、老後積立を始めておきたいものです。

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