脳・神経の病気/脳挫傷・急性硬膜外血腫

急性硬膜外血腫の症状・診断・治療

急性硬膜外血腫は、動脈が障害されて発生する頭部外傷の中で稀な重病の疾患です。診断はCTですぐに可能です。早期の手術が必要となります。

井上 義治

執筆者:井上 義治

形成外科医 / 皮膚・爪・髪の病気ガイド

急性硬膜外血腫とは

頭部外傷で脳出血とよばれる病気は急性硬膜外血腫、急性硬膜下血腫、急性脳内血腫の3つがあります。血の固まりである血腫が脳の組織の直上や脳内に形成される病態です。

硬膜外血腫は側頭骨の骨折に伴い中硬膜動脈が障害され血腫が発生します。頭部外傷の1%程度の珍しい外傷です。
血腫

硬膜外血腫は側頭骨骨折に伴い中硬膜動脈が障害され発生します。


中硬膜動脈は、頚部から顔面にかけて 総頚動脈→外頚動脈→顎動脈→中硬膜動脈と分岐し、破裂孔という頭蓋骨の孔を通って、頭蓋骨の中にある硬膜という脳をカバーしている膜の外側に位置している動脈です。

中硬膜動脈以外の後頭動脈や篩骨動脈の枝が障害されて、硬膜外血腫ができることも稀にあります。

急性硬膜外血腫の年齢、性差

骨折に伴う血腫ですので、若年の男性に多くみられます。交通事故、転落事故、高エネルギー外傷などの大きな事故で発生することが多いです。

急性硬膜外血腫の症状

初期に意識消失などの症状があり、その後意識が清明に戻ることがあります。この状態が数分間から数時間続き、その後また昏睡などの意識消失となります。
この症状があるため、頭部外傷は、意識清明であっても24時間程度は意識レベルの観察が必要とされます。

他の症状としては、いままで経験したことのない強烈な頭痛、嘔気、嘔吐、半身麻痺、呼吸停止などの症状が発生します。

急性硬膜外血腫の診断

■CT
頭部外傷の初期検査としてCT撮影を行います。

CT

頭部単純CT像

血腫は動脈からの出血のため急速に増大し、半月状の形態となります。脳圧が亢進し、脳脊髄液でみたされた側脳室が圧迫され、縮小します。さらに健常側の脳が圧迫され側方に移動します。


急性硬膜外血腫の治療法

ごく一部の軽症の場合、非常に重症で手術に耐えられないと判断された場合を除いて手術が必要です。

■開頭血腫除去術
全身麻酔の下で脳外科の治療が必要です。

開頭手術

開頭手術でまず側頭骨を取り出し、その後血腫を除去します。

血腫除去単独であれば、比較的時間の短い手術です。

急性硬膜外血腫の予後

血腫だけの障害では予後は良好です。血腫に合併する脳挫傷が重症である場合、なんらかの後遺症が残る可能性が高くなります。いずれにしても早期に治療が必要な病態です。



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