介護

楽しみ・居場所・仲間が「生活不活発病」を予防する

日常生活が不活発なことが原因で生じる「生活不活発病」。高齢者を中心に病気で長期間安静にした後や災害後の避難所生活で発症しやすいと言われています。医学的には廃用症候群と呼ばれ、筋力や持久力、内臓機能や認知機能などに様々な症状が現れます。生活不活発病から生活習慣病や要介護状態に移行するケースも多く決して油断できません。生活不活発病についての正しい知識があれば予防・改善が可能です。

執筆者:中山 奈保子

生活不活発病1

生活が不活発なことにより歩行障害や認知機能低下などを引き起こすことがあります。

久しぶりに故郷に暮らす両親に再会したら、病気持ちでもないのに急激に老化が進んだように見受けられたり、何となく覇気が失われたような姿を見てハッとした経験はありませんか?そんな時、是非気にかけておきたいものの一つに生活不活発病が挙げられます。

生活不活発病は、その名の通り「生活が不活発」なことにより生じる筋力や持久力、内臓機能、認知機能の低下など、全身のあらゆる機能が低下した状態を指します。ここで言う「不活発」とは、単に運動不足の状態にあるというものではなく、例えば、以下の3つのような状態が当てはまります。特に、高齢の場合は生活不活発病が生活習慣病の引き金となり、要介護状態へ移行するリスクも高まりますので「歳だから」といって安易に見過ごさないようにすることが大切です。

1) 日中座っている時間や部屋に閉じこもっている時間が多い

家に居ても家事以外に何もすることがない、趣味もなければ、新聞も読まない。お茶を入れてテレビをつける、飽きてくれば横になる…こういった生活スタイルは、まさに生活不活発病に繋がる典型例です。何か趣味を見つけて打ち込むことができれば良いのですが、「年老いた身体には無理」「若い頃のように上手くできない」と消極的になり、上手く続かないケースも少なくありません。

また、「趣味」と言われてもピンとこない、何を始めたらよいか分からずにいるケースもよく見受けられます。仕事一筋、家事一筋。自分のことよりも、子供や家族のことを考え長年過ごして来た人が突然、新しいライフスタイルを求められても、すぐにはイメージできず「やってみたいけれど、自信がない」となるのが多いようです。

2) 同居する家族以外と話したり、交わったりする機会が極端に少ない

せっかく通い始めたデイサービスにも馴染めず、結局は自宅に閉じこもってしまうケースをたびたび目にします。話を伺ってみると「デイサービスには知り合いが一人も居なかった」「若い職員に慣れ慣れしく話しかけられるのが気に食わなかった」などと、コミュニケーションや仲間づくりの面で隔たりを感じることが多いようです。また「子供だましのような遊びをさせられた」などと、介護施設で行われるレクリエーションを嫌煙し外出や居場所づくりの機会を逃しているケースもあります。誰かと会う、話す、交わるという目的や楽しみが毎日の生活から奪われてしまった時、生活不活発病は一気に加速するのかもしれません。

3) 悩みごとを一人で抱え込んでいる、助けてくれるのをじっと待っている

生活不活発病2

居心地の良い居場所、仲間を持ち、社会と繋がり続けることが大切。

馴染みの仲間と愚痴を言い合い、悩みがあれば聞いてもらう。何歳になっても居心地の良い仲間とのネットワークを維持していれば、毎日を明るく前向きに過ごしていくことができるでしょう。また、何か問題が生じた時にどのように解決をしていったらよいか…仲間に相談をする他にも、自ら役所の窓口を訪ねたり、インターネットで情報検索をするなど、どれか一つでも社会と繋がる手段を持っていることは、高齢者が自立した生活を営んで行く上で重要な要素となります。どの手段もなく、一人でじっと助けを待っているようでは、生活が不活発になるだけではなく社会から「孤立」してしまいます。

生活不活発病は改善・予防できる?

生活不活発病は、ちょっとしたライフスタイルや価値観の見直し、興味・関心の拡大により改善することができます。また、若い頃から積極的に地域の活動に参加し職場以外の仲間をもっていたり、自分よりも若い世代の人と積極的に交流をしていると、生活不活発病の予防に役立つでしょう。

外出する目的や楽しみ、居心地の良い場所と仲間。これらは、身体が衰え自信や意欲を喪失しがちな高齢者が生き生きと毎日を過ごしていくために欠かせない重要な要素なのです。

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