U-22日本代表は五輪1次予選を突破
一方のU-22日本代表は、3月27日からリオデジャネイロ五輪アジア1次予選に臨んだ。マレーシア、ベトナム、マカオとの総当たりリーグ戦は、マレーシアの首都クアラルンプール郊外のシャーアラムで開催された。最終予選に進出するのはグループ1位か、合計8グループのなかで成績の良い2位の上位5か国に入らなければならない。手倉森誠監督(47歳)は求められる結果を追求しつつ、1次予選を最終予選の通過点だけで終わらせていない。「対戦相手によって効果的に機能する選手を選びながら」戦ったのである。GKを除いて、メンバーを固定しなかったのだ。
中1日で3試合を消化する日程では、選手の使い分けが必要不可欠である。それに加えて、先発メンバーを入れ替えることでチーム内の競争意識を高めていったのだ。
それというのも、来年1月に開催される最終予選も、カタールを舞台に中1日か中2日で試合を消化していく。セントラル方式と呼ばれる集中開催だ。十分な休養が約束されないなかで、五輪の出場権を勝ち取らなければならない。
短期の連戦では、主力選手がケガや出場停止に見舞われることも予想される。コンディショニングの失敗は許されず、控え選手も含めたチームの総力が問われる。だからこそ、手倉森監督はチーム全体の水準を高めることに主眼を置いている。エース格の選手が不在でも、クオリティの落ちないチーム作りを進めているのだ。
欧州ベースの選手がチームの骨格を担う日本代表とは異なり、U-22日本代表はJリーグでプレーする選手が中心となる。手倉森監督のチームにもFW久保裕也(21歳・ヤングボーイズ/スイス)、FW南野拓実(20歳・ザルツブルク/オーストリア)が海外組として招集されているが、彼らに寄りかかることはない。「Jリーグでプレーする選手がチームを引っ張り、彼らを招き入れる」というのが手倉森監督のスタンスだ。
欧州でプレーするふたりは、テストマッチなどの招集がままならない。彼らを生かすためのチーム作りではなく、彼らが加わることでオプションを増やすスタンスは、実効性に富んだものである。
そうした考えに基づいて、手倉森監督は3試合すべてでスタメンを入れ替えた。誰が出てもチームのクオリティが保たれ、なおかつ対戦相手に応じて有効な手立てのできる組み合わせを探っていったのだ。
起用される選手側からすれば、高い緊張感を求められるシチュエーションだ。自己アピールのチャンスを生かさなければ、リオ五輪への道のりから淘汰されてしまう。マレーシアを舞台としたアジア1次予選は、1試合ごとのサバイバルだったのだ。
レベルアップの階段を登る日本代表
かくしてU-22日本代表は、一体感を高めつつも競争力を持ったチームとなってきた。いまはまだ全国的に名前を知られた選手は少ないものの、1996年のアトランタ五輪から続く出場権の獲得に向けて、着実にステップアップしていると言える。2014年の日本サッカー界は、明るい話題を提供できなかった。日本代表はブラジルW杯でグループステージ敗退に終わり、U-21日本代表として活動していた手倉森監督のチームは、アジア大会でベスト8に終わった。
しかし、ハリルホジッチ監督を迎えた日本代表は、新たな指揮官のもとで白星スタートを切った。リオ五輪でのメダル獲得を目ざすU-22日本代表も、レベルアップの階段を登っている。
日本サッカーの風向きが、少しずつ変わってきた。