とはいえ、満月のたびに月食になるわけではありません。その理由は、太陽の周りをまわる地球の軌道に対して、地球を周回している月の軌道が約5度傾いているため。普段見ている満月は、地球の影から北か南にはずれた状態になるので、太陽の光がちゃんと月面にあたり、私たちがいる地球からは真ん丸の月が見えるわけです。
月食ごとに異なる月の色。今年は?
地球の影には、本影(濃い影の部分)と半影(淡い影の部分)があり、月の一部分が本影に入りこむと「部分食」、月全体がすっぽり本影に入ると「皆既食」となります。皆既食のとき、月は真っ暗になって完全に見えなくなりそうに思えますが、実際はそうではありません。地球の大気の影響で屈折した太陽の光が本影の中に入りこんで、波長の長い赤い光が月をほんのりと照らします。
皆既食中の月の色は一般的に「赤銅(しゃくどう)色」と表現されますが、いつも同じように見えるわけではないのがおもしろいところ。大気中のチリが少なければ明るく、多ければ暗く見えます。また今回は、本影の内側をかすめるように月が通過していきますから、皆既の状態でも半影側は明るい印象を受けるかも。オーソドックスな赤銅色か、オレンジ色か、赤黒い感じか、それとも……どんな色に見えるかは当日のお楽しみ。ぜひ自分の目で確かめてみましょう。
今年はどんな色の月が見られるのでしょうか?
皆既の12分間は星空を楽しんで
月が本影のど真ん中を通り抜けると皆既の状態は長く続きますが、今回の場合は本影の内側ギリギリを月が通過するため、皆既食は20時54分から21時6分までのたった12分間。かなり短めなのが特徴といえます。通常、満月の夜はとても明るいので、目に見える星の数は少なく、星空観察には不向きです。けれど皆既月食によって月が暗くなれば、普段は目立たない暗い星たちも姿をあらわにして、ここぞとばかりに輝き出すはず。月のまわりには、おとめ座、うしかい座、からす座といった春を代表する星座たちが輝いています。皆既の状態が続く12分間は、星たちと月の共演も楽しみです。
【4月4日の月食タイムスケジュール】
・部分食の始まり/19時15分
・皆既食の始まり/20時54分
・食の最大/21時00分
・皆既食の終わり/21時06分
・部分食の終わり/22時45分
月食は、月が見られる場所であれば、どこでも同時刻に起こります。月の高さや月が欠ける方向は地域によって多少異なるものの、極端に違うわけではないので国内であれば気にすることはないでしょう。
部分食が始まる頃、月は東南東の低い位置にいますが、食が進むとともに見やすい位置に昇ってきます。月は下側から欠け始め、時間が経つにつれて欠け方が大きくなり、皆既に近くなると月の上側が光っている状態に。さらに皆既を過ぎると、月は左側からだんだんと明るくなり、影の部分は月の右側へ抜けていきます。
皆既月食の一部始終は肉眼で見られ、特別な道具や準備も不要。夜空を見上げるだけという手軽さがうれしいですよね。当日は週末と重なるうえ、ちょうど桜の時季。こんなめぐりあわせはなかなかありません。夜桜と月食の美しいコラボレーションにも期待が高まります。