モノの値段が安い街は
地価が安い、利用者が多いなどの要件がある
モノの値段が安い街にはいくつかの要件があります。ひとつは地価が安いこと。通販以外でモノを売るためには売る場所が必要になりますが、そこにお金がかかるとしたら、モノを安くするわけにはいきません。また、新しくできた駅ビル内の店と、自前の土地で昔から営業している店で比べると、賃料、土地代が不要な分、古くからやっている店のほうが価格を下げられる可能性があるともいえます。人件費その他も含めて考えると、チェーン系よりも、個人店のほうが価格を下げられるかもしれません。
競争がある、利用者が多いことも要件。いくら郊外で土地が安くてもライバルがいない、利用者が少ない場所ではモノの値段は下がりません。多少土地代が高くても、利用者が多く、量が売れるのであれば価格を下げてもやっていけるはず。つまり、地価が極端に高くなく、かつ利用者が多くて競争のある街であればモノの価格は安くなる、安くできるのです。
下町エリアでお勧めは京成立石(葛飾区)、
足回りも便利な北千住(足立区)、赤羽(北区)などなど
その観点で安くて美味い街を考えてみましょう。まず、土地の価格が比較的手ごろという意味では首都圏の地価は西高東低。東側の、いわゆる下町エリアのほうが安くなっています。そのうちでも安いのは中央区、台東区のような江戸から明治時代の下町ではなく、大正から昭和に入って発展した、墨田区、荒川区、北区、江東区、江戸川区、葛飾区、足立といったエリア。こうした街では昭和初期までは自宅兼用の職場、あるいは地元の工場などで仕事をする人が多く、また家族総出で働いていたこともあり、外食、中食が早くから発展してきました。その歴史が残されているのです。そんな下町エリアで代表的な安くて美味い街といえば京成立石(葛飾区)がお勧め。アーケードのある商店街には夕方早い時間から満員御礼になるもつ焼き屋さんなどの飲食店が並び、お惣菜屋さんも多数。外食でも、中食でもなんでも揃います。
ただ、残念なのは飲食店街なども含め、駅前に再開発の計画があること。京成押上線の連続立体交差化と同時に駅の南北、複数の地域で市街地再開発準備組合が発足しており、この後、いつまで今のような外食天国が残されるか。気になるところです。
同じく下町エリアで、JR常磐線、東京メトロ千代田線、同日比谷線、つくばエクスプレス、東武伊勢崎線と複数路線が乗り入れる便利な街北千住も外食派にはうれしい街。古くは日光街道の宿場町として栄え、街中には古い蔵や洋館なども点在しています。
ちなみに赤羽は居酒屋のイメージが強い街ですが、最近はラーメン屋さんが増えており、穴場という人もいます。ボリュームのあるチャーシューが人気の店が多いところが赤羽らしいところです。
もうひとつ、江戸から明治の下町エリアになりますが、上野から御徒町にかけても安くて美味しい店が多い場所。幹線道路沿い、高架下にはチェーン店も少なくなりませんが、ここも一歩入ると個人店中心。中華料理、韓国料理の店も多く、上野は駅から少し離れたところにミニコリアンタウンもあります。
西側エリアお勧めは下町っぽさのある蒲田(大田区)、
大井町(品川区)に練馬(練馬区)などなど
下町というと、東京の東側をイメージする人が多いようですが、大正から昭和の下町ということで考えれば西側の大田区、品川区などにも同じような雰囲気の街があります。中でも単身ビジネスマン率が高く、飲食店が多いのが蒲田(大田区)。JR、東急線の蒲田駅から京急蒲田駅間、蒲田駅周辺、東急線高架下と商店街とともに伸びています。
パリッと薄い皮がビールに合う羽根付き餃子。飲み放題、食べ放題で3000円以内という中華料理店も
もうひとつ、西側エリアで安くて美味いといえば大井町(品川区)。JRの線路脇から西側には路地に小さな飲食店が集まっっており、人気店ともなればはちきれんほどの満員ぶり。あまりキレイとは言えないものの、その雰囲気が良いとたびたび、テレビに登場する店などもあります。
西側エリアで沿線全体がお勧めなのが中央線。ただ、下町エリアの安さに比べると、そこまで安くはありません。ただ、中野から吉祥寺にかけてはどの街も商店街、飲食店街が充実していて、どこに住んでも胃袋は満足できるはず。あえて挙げるのであれば、東京メトロ東西線とJRが利用でき、始発も多い中野。駅から早稲田通り間には何本もの路地があり、小さな店が密集しており、中には知る人ぞ知る店も。ラーメン屋さんの数の多さも有名です。
西荻窪の飲食店、食料品店をガイドしたパンフレット。西荻窪に住みたいならぜひ入手してみてほしい
西側ではもうひとつ、練馬(練馬区)を挙げておきましょう。ここも西武池袋線、都営大江戸線、西武有楽町線を介して東京メトロ副都心線、同有楽町線が利用できる駅で、かつ練馬区の行政の中心地でもあるという場所。当然、人も多く集まっており、駅前には飲食店街が。
神奈川方面なら川崎(川崎市)、鶴見(横浜市鶴見区)、
弘明寺(横浜市南区)などなど
神奈川方面で飲食店が多いといえばなんといっても川崎、横浜そして中華街ですが、手頃さ、庶民的な雰囲気ということでは川崎でしょうか。ラーメン店が多いのは有名ですが、駅から離れたところにコリアンタウンがあることからも分かるように韓国料理店も多く見かけます。
川崎から一駅、鶴見も飲食店が集まっており、こちらはブラジル料理、沖縄料理が地元名物。駅から少し離れたところには沖縄タウンもあります。とはいっても、店の数でいえばラーメン屋さん、もつ焼き屋さんのほうがはるかに多い感じで、気取らないのは川崎同様です。
もうひとつ、個人的にお勧めは弘明寺。横浜の浅草的な門前町で、アーケードの下には昔ながらの和菓子、呉服、豆腐、おでん種などの店と並んで中華料理店、居酒屋などがあり、お手頃価格でボリュームたっぷり。横浜周辺だからでしょう、このエリアには中華料理屋さんが多く、それほど大きな当たり外れがないのはさすが。駅から離れていても人が集まるような店もあります。
ところで、こうした街を再度歩いてみて気づいたのは、今回取り上げた街には昔ながらの喫茶店、いわゆる純喫茶がいくつも残っていること。大手のチェーン店ではまず取り扱っていないナポリタンや昔ながらの分厚いトースト、ドリアなどが出てくる店も多いので、お茶をするだけでなく、食事にもOK。雰囲気によっては我が家の外のリビングとしても使えるのではないでしょうか。