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ごはんが安くて美味しい街を探せ!

街によって家賃が異なるように、食も街によって違いがあります。ここではほぼ毎日外食という人のために、安くて、でも美味しいごはんが食べられる街をピックアップ。胃袋とお財布が住んで良かったと思える街を紹介します。

中川 寛子

執筆者:中川 寛子

住みやすい街選び(首都圏)ガイド

モノの値段が安い街は
地価が安い、利用者が多いなどの要件がある

ラーメン

下町エリア、本所吾妻橋のラーメン屋さん。昔ながらの建物、内装に味があり、下町らしかった(クリックで拡大)

モノの値段が安い街にはいくつかの要件があります。ひとつは地価が安いこと。通販以外でモノを売るためには売る場所が必要になりますが、そこにお金がかかるとしたら、モノを安くするわけにはいきません。

また、新しくできた駅ビル内の店と、自前の土地で昔から営業している店で比べると、賃料、土地代が不要な分、古くからやっている店のほうが価格を下げられる可能性があるともいえます。人件費その他も含めて考えると、チェーン系よりも、個人店のほうが価格を下げられるかもしれません。

 

ときわ食堂

同じく下町エリア、町屋、ときわ食堂のランチ。様々な種類があり、小鉢や果物などが付くなど良心的。朝昼晩通う常連さんも多い(クリックで拡大)

競争がある、利用者が多いことも要件。いくら郊外で土地が安くてもライバルがいない、利用者が少ない場所ではモノの値段は下がりません。多少土地代が高くても、利用者が多く、量が売れるのであれば価格を下げてもやっていけるはず。つまり、地価が極端に高くなく、かつ利用者が多くて競争のある街であればモノの価格は安くなる、安くできるのです。

 

下町エリアでお勧めは京成立石(葛飾区)、
足回りも便利な北千住(足立区)、赤羽(北区)などなど

その観点で安くて美味い街を考えてみましょう。まず、土地の価格が比較的手ごろという意味では首都圏の地価は西高東低。東側の、いわゆる下町エリアのほうが安くなっています。そのうちでも安いのは中央区、台東区のような江戸から明治時代の下町ではなく、大正から昭和に入って発展した、墨田区、荒川区、北区、江東区、江戸川区、葛飾区、足立といったエリア。こうした街では昭和初期までは自宅兼用の職場、あるいは地元の工場などで仕事をする人が多く、また家族総出で働いていたこともあり、外食、中食が早くから発展してきました。その歴史が残されているのです。

京成立石

京成立石には名物店が何軒かあるが、そのうちの1店、鶏で有名な鳥勇。クリスマスには揚げた鶏を求めて人が集まる(クリックで拡大)

そんな下町エリアで代表的な安くて美味い街といえば京成立石(葛飾区)がお勧め。アーケードのある商店街には夕方早い時間から満員御礼になるもつ焼き屋さんなどの飲食店が並び、お惣菜屋さんも多数。外食でも、中食でもなんでも揃います。

 

立石再開発計画

当初の想定(写真)より再開発を検討する地域が広がっており、もし、すべてが実現するとしたら駅前の風景は一変してしまいそう(クリックで拡大)

ただ、残念なのは飲食店街なども含め、駅前に再開発の計画があること。京成押上線の連続立体交差化と同時に駅の南北、複数の地域で市街地再開発準備組合が発足しており、この後、いつまで今のような外食天国が残されるか。気になるところです。

 

北千住

北千住の飲食店街。最近は和洋中なんでもござれな雰囲気に。流行のバル風の店も点在(クリックで拡大)

同じく下町エリアで、JR常磐線、東京メトロ千代田線、同日比谷線、つくばエクスプレス、東武伊勢崎線と複数路線が乗り入れる便利な街北千住も外食派にはうれしい街。古くは日光街道の宿場町として栄え、街中には古い蔵や洋館なども点在しています。

 
北千住東京電機大学

最後に移転してきた東京電機大学。学生数が多く、街の雰囲気が一気に変わった(クリックで拡大)

庶民的な居酒屋の多かった街ですが、ここ10年ほどで大学の移転が相次ぎ、街自体が若返ったせいか、洋風、エスニック系などの店も増えており、中には女性を意識した、これまでにない雰囲気の店も登場しています。

 
おでん屋さんの行列

大行列だったおでん屋さん。おでんと酒で700円という安さ。日本酒をおでんの出汁で割っただし割も人気(クリックで拡大)

同様に複数路線が利用できる赤羽(北区)も飲食店街が元気な街。朝から飲める店があったり、また、荒川に近く、昔は鰻が取れたのでしょう、鰻屋さんなども複数あります。最近ではテレビにも出る有名店が増えており、撮影に行った日にもおでん屋さんに長い行列ができていました。

 
赤羽の路地

夕暮れ時には満員となっている店も多い。悩んでいるといつまでも入れないから、えいやっという思い切りが大事(クリックで拡大)

いずれの街も駅前などには大手のチェーン店ができてはいるものの、一歩路地に入り込むと個人営業の、小さな店が中心で一見入りにくそう。特に時間が遅くなってしまうと混んでより入りにくくなるので、最初のうちは早めの時間に入って、顔なじみになるのが手かもしれません。

 

ちなみに赤羽は居酒屋のイメージが強い街ですが、最近はラーメン屋さんが増えており、穴場という人もいます。ボリュームのあるチャーシューが人気の店が多いところが赤羽らしいところです。

上野の飲食店街

上野はなぜか、焼き鳥、居酒屋に加え、海鮮モノを出す店が目立つ(クリックで拡大)

もうひとつ、江戸から明治の下町エリアになりますが、上野から御徒町にかけても安くて美味しい店が多い場所。幹線道路沿い、高架下にはチェーン店も少なくなりませんが、ここも一歩入ると個人店中心。中華料理、韓国料理の店も多く、上野は駅から少し離れたところにミニコリアンタウンもあります。

 
ネクタイ

上野から御徒町にかけては飲食だけでなく、物販店も多く、かつ安い。生活費全般が安くてすむ(クリックで拡大)

また、上野周辺は安くて美味しいに加えて、老舗の高いけれど美味い店も点在しており、歴史のある街ならでは。鰻、フグ、洋食、天ぷら、鶏料理にとんかつなどなど、種類も豊富。和菓子やあんみつの名店もあるので、甘党さんにもうれしいエリアです。

 

西側エリアお勧めは下町っぽさのある蒲田(大田区)、
大井町(品川区)に練馬(練馬区)などなど

蒲田の飲食店街

和洋中なんでもありの蒲田だが、寿司店がやや多め。最近はベトナムなどのエスニック系も増えている(クリックで拡大)

下町というと、東京の東側をイメージする人が多いようですが、大正から昭和の下町ということで考えれば西側の大田区、品川区などにも同じような雰囲気の街があります。中でも単身ビジネスマン率が高く、飲食店が多いのが蒲田(大田区)。JR、東急線の蒲田駅から京急蒲田駅間、蒲田駅周辺、東急線高架下と商店街とともに伸びています。

 
羽根つき餃子

パリッと薄い皮がビールに合う羽根付き餃子。飲み放題、食べ放題で3000円以内という中華料理店も

そして、その蒲田といえば名物は羽根付き餃子。何店もの中華料理屋さんが売りにしており、テレビなどに登場することもしばしば。中華以外では寿司店、ラーメン店、エスニック系の店も多く、風俗店が集まっているエリアも。大学もあるため、どこも全体のボリュームたっぷりです。

 

洋食店

路地の店はどこもそれほどキレイとは言い難い。潔癖症の人にはやや抵抗があるかも(クリックで拡大)

もうひとつ、西側エリアで安くて美味いといえば大井町(品川区)。JRの線路脇から西側には路地に小さな飲食店が集まっっており、人気店ともなればはちきれんほどの満員ぶり。あまりキレイとは言えないものの、その雰囲気が良いとたびたび、テレビに登場する店などもあります。

 
大井町の路地

テレビにしばしば登場する洋食店。わざわざ訪れる人も多い(クリックで拡大)

ただ、以前は大井町線高架下などにも飲食店があり、独特の昭和な雰囲気があったのですが、同線の耐震補強のために店舗は退去。だいぶ、雰囲気は変わってしまいました。開発が行われると街はきれいになって良いものの、個人店が減り、全国均一な感じの店が増えるのはちょっと残念なところです。

 
大田区、品川区は商店街の多さでも知られているところですが、商店街では中食は充実しているものの、外食はそこまでではないこともあり、今回は取り上げてみません。もちろん、住宅街中心の街よりは充実していますから、外食も、中食もという人であれば食べ歩いてみてください。

中野の飲食店

安くて美味いと考えると、路地の写真が並ぶことになる……(クリックで拡大)

西側エリアで沿線全体がお勧めなのが中央線。ただ、下町エリアの安さに比べると、そこまで安くはありません。ただ、中野から吉祥寺にかけてはどの街も商店街、飲食店街が充実していて、どこに住んでも胃袋は満足できるはず。あえて挙げるのであれば、東京メトロ東西線とJRが利用でき、始発も多い中野。駅から早稲田通り間には何本もの路地があり、小さな店が密集しており、中には知る人ぞ知る店も。ラーメン屋さんの数の多さも有名です。

 
西荻窪ごちそうさま手帖

西荻窪の飲食店、食料品店をガイドしたパンフレット。西荻窪に住みたいならぜひ入手してみてほしい

個人的には西荻窪もお勧め。居酒屋からしゃれたフレンチ、きちんとした和食まで幅の広い飲食店が揃い、メキシコ、ブラジル、バングラディシュ、モロッコ、シンガポールなどなど各国料理も楽しめます。

 

練馬の飲食店街

練馬の場合、飲食店ばかりが集まっているわけではなく、化粧品店、和菓子屋さん、神社なども入り混じっており、商店街が発展した形のように見える(クリックで拡大)

西側ではもうひとつ、練馬(練馬区)を挙げておきましょう。ここも西武池袋線、都営大江戸線、西武有楽町線を介して東京メトロ副都心線、同有楽町線が利用できる駅で、かつ練馬区の行政の中心地でもあるという場所。当然、人も多く集まっており、駅前には飲食店街が。

 
近年は他でもそうですが、中華系、エスニック系の店が増えており、夕方4時くらいから開く店なども。都心からはちょっと離れているので、今回紹介した西側の他駅に比べると賃料その他はかなりお手頃です。

神奈川方面なら川崎(川崎市)、鶴見(横浜市鶴見区)、
弘明寺(横浜市南区)などなど

川崎駅周辺

ここまで紹介してきた中ではチェーン店系も多い川崎駅周辺。人が多く集まり、新しいビルが増えるとどうしても賃料が高くなる結果か(クリックで拡大)

神奈川方面で飲食店が多いといえばなんといっても川崎、横浜そして中華街ですが、手頃さ、庶民的な雰囲気ということでは川崎でしょうか。ラーメン店が多いのは有名ですが、駅から離れたところにコリアンタウンがあることからも分かるように韓国料理店も多く見かけます。

 
昔ながらの中華料理屋さん、居酒屋さん、洋食屋さんなど、見た目にはあまりこだわらず、それよりは安さ、ボリュームで勝負するという店も多く、量にこだわりたい人にはお勧めです。

沖縄の食品

沖縄タウンで売られていた地元の食材。何店か沖縄食材を扱う店も出ている(クリックで拡大)

川崎から一駅、鶴見も飲食店が集まっており、こちらはブラジル料理、沖縄料理が地元名物。駅から少し離れたところには沖縄タウンもあります。とはいっても、店の数でいえばラーメン屋さん、もつ焼き屋さんのほうがはるかに多い感じで、気取らないのは川崎同様です。

 
駅自体は川崎駅が最寄りではありませんが、同区生麦に魚河岸があることから、鮮度の良い魚を出す店も多く、食のバリエーションは豊かな街ともいえます。

弘明寺

中華料理屋さんが多く、お手頃お惣菜も多く売られている(クリックで拡大)

もうひとつ、個人的にお勧めは弘明寺。横浜の浅草的な門前町で、アーケードの下には昔ながらの和菓子、呉服、豆腐、おでん種などの店と並んで中華料理店、居酒屋などがあり、お手頃価格でボリュームたっぷり。横浜周辺だからでしょう、このエリアには中華料理屋さんが多く、それほど大きな当たり外れがないのはさすが。駅から離れていても人が集まるような店もあります。

 

練馬駅前の純喫茶

練馬駅前の純喫茶。懐かしい雰囲気に長居する客も多い(クリックで拡大)

ところで、こうした街を再度歩いてみて気づいたのは、今回取り上げた街には昔ながらの喫茶店、いわゆる純喫茶がいくつも残っていること。大手のチェーン店ではまず取り扱っていないナポリタンや昔ながらの分厚いトースト、ドリアなどが出てくる店も多いので、お茶をするだけでなく、食事にもOK。雰囲気によっては我が家の外のリビングとしても使えるのではないでしょうか。




※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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