先日、マイクロソフト共同設立者のポール・アレン氏が潜水艇にて、フィリピン・シブヤン海の水深およそ1,000mに沈む「戦艦武蔵」を発見。その写真や動画が公開され、去る3月13日(金)には潜水艇によるリアルタイムでのライブ放送も実施されました。船首の様子や錨なども確認でき、ワクワクしながら映像をご覧になった方も多いと思います。さすがに水深1,000mに沈む船に「ちょっとダイビングで」というわけにはいきませんが、実はダイビングで行ける水深にも数多くの船が沈んでいるのをご存じでしょうか? それらの海に沈んだ船を舞台に楽しむダイビングが「レックダイビング」です。
レックダイビング

海の中には数多くの船や飛行機などが沈んでおり、冒険心&ロマン溢れる「レックダイビング」を楽しめる恰好のスポットとなっています。


「レックダイビング」とは?

レックダイビングの「レック(Wreck)」とは、「難破船・沈没船」のこと。その名の通り、海に沈んだ船への冒険を楽しむダイビングですが、船だけでなく飛行機や車など、人工物全般を指すこともあります。海の中には数多くの船が沈んでおり、「戦艦武蔵」にように戦争などで沈められた「戦跡」のほか、海難事故などで沈んだもの、廃棄するために沈められたもの、あるいは魚たちが集まる「魚礁」にするために沈められたものなど由来は様々。大きさも、漁船などの小さなものから、戦艦武蔵のように巨大なものまで、実にバリエーションに富んでいます。水中を楽しむだけでなく、沈む前にその船がどのような活躍をしていたのか、その歴史を知ることもレックダイビングの大きな楽しみといえます。

レックダイビングが楽しめる海は?

レックダイビング

チュークの海に沈む「富士川丸」。1944年2月17日のアメリカ軍のヘイルストーン作戦(トラック島空襲)によって沈められたこの船には、写真のような記念碑が甲板部に設けられており、歴史を伝える貴重な戦争遺跡となっています。

日本ではそれほどメジャーではないレックダイビングですが、欧米のダイバーからの人気は非常に高く、世界ではレックダイビングで有名なエリアがいくつもあります。中でも人気が高いのが、ミクロネシア連邦に属する「チューク」。かつては「トラック」と呼ばれていたこのエリアは、第2次世界大戦の激戦区としても知られ、「富士川丸」や「神国丸」、「日豊丸」など40隻以上の船が沈んでいます。風や波の影響を受けにくいリーフ内にあるため、形がきれいに残されているものが多く、レックダイビングを楽しむのに絶好の環境。当時積まれていた遺留品なども残されており、歴史に思いを馳せながらロマン溢れるダイビングを楽しめるのが魅力です。ほかにも、パプアニューギニアのラバウルやソロモン諸島、サイパンなどが、レックダイビングが楽しめる海として人気があります。

もちろん、日本でもレックダイビングを楽しめるエリアは数多くあり、週末に行ける日帰りエリアでも、巨大な砂利運搬船「旭16号」が沈む「熱海」、大小10隻の船が沈む「西伊豆・土肥」、旧日本海軍の潜水艦「呂-11型」が沈む「大磯」、全長およそ30mの船が沈む「南紀白浜」などでレックダイビングを楽しむことができます。

レックダイビングの注意点

魅力たっぷりのレックダイビングですが、楽しむ際にはいくつか注意点があります。

まずは、むやみに沈船の内部に進入したり、船に接触しないこと。長い年月を経た船は崩れやすくなっており、触れることでケガをする恐れがありますし、特別なトレーニングや器材なしに沈船内部に進入(ペネトレーション)するのは非常に危険です。「どうしても内部を探検してみたい!」と思ったら、「レック・ダイバー・スペシャルティ・コース」など、そのための知識とスキルをしっかりと身につけられるトレーニングを受けたうえで楽しむことをおすすめします。

それに加えて、戦争で沈んだ船などは歴史を伝える貴重な遺物でもあるため、傷つけたり、そこから何かを持ち去ったりすることは厳禁です。国やエリアによっては法律で保護され、潜る前に許可が必要だったり、船体に触れたり、船から物を持ち出すことが禁止されています。自分の不注意で船を傷つけてしまうことのないよう、きちんと浮力コントロールが取れるレベルであることが求められます。

また、船が沈んでいるのは比較的深い場所が多いため、近くでじっくりと楽しむにはディープダイビングの知識とスキルを身につけておくこともおすすめです。「アドヴァンスド・オープン・ウォーター・ダイバー・コース」や「ディープ・ダイバー・スペシャルティ・コース」を受講して、深い場所でダイビングを楽しむためのノウハウを身につけ、しっかりと潜水計画を練ったうえで楽しむようにしましょう。


数あるダイビングの楽しみの中でも、奥深い魅力を持つレックダイビング。アドベンチャラスなダイビングが好きな方はもちろんのこと、歴史好きな方にもぜひおすすめしたいダイビングスタイルです。戦後70年を迎える今年、改めてダイビングを通して歴史を見つめてみるのもいいのではないでしょうか。


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