ライドフィールは明暗がくっきりと……
まずはヤマハ ボルトから。跨がってみると、着座位置がかなり低いことに気づきます。シルエットを見れば一目瞭然ですが、シート部分が深くなるようなフレーム設計になっているのです。水平なラインのスポーツスターとは異なるこのライン、ハーレーで例えるならリジッド型フレームのソフテイルでしょうか。ここで体が沈み込むので、足着きは良いものの、ハンドル位置が高く感じられます。狙ったのがボバースタイルですから、コンセプトどおりと言えますね。走り出してからの挙動は、実に滑らか。ツインエンジン特有のパワーを感じさせつつも、スムーズなギアチェンジに軽快なハンドリングと、「さすがヤマハ、さすが国産メーカー」と唸らされるほどの高レベルな設計。ただ、ハイウェイでの高速域は快適なのですが、中低速での取り回しが重ったるい。排気量950cc & 車重274kgという点を考えると致し方なしかもしれませんが、ストリートシーンでこそ映えるモデルなので、ここは改善したいポイント。軽量化を目的としたカスタムを施せば、もう少し乗りやすくできるのかな?とも。
ポジションそのものはハーレー・ソフテイルに近しいことから、スポーツスターというよりは、日本人サイズにまとまったFXSB ブレイクアウト(ただしステップはミッドコントロール)といったところでしょうか。良い意味で“ハーレーのいいとこ取り”な一台だと思います。899,640円(税込)という販売価格は、安すぎず高すぎず、スタイル&スペックを見れば適正価格ではないでしょうか。
そしてストリート750に試乗。先日、プレスカンファレンスでしっかり試乗したのですが、改めて乗ってみると……正直、戸惑いを隠せないほどの違和感を覚えました。以前乗ったときの印象が錯覚だったのかと思わされるほどに。
ハーレーらしいスタイルを目指したボルトとは対照的に、ハーレーらしさから脱却しようとするストリート750。エンジンフィーリングはシャープでこれまでのハーレーにはなかったものですが、ちょっとクイックすぎる感が否めません。車重やエンジンの違い(空冷と水冷)の違いからか、ボルトの出だしは良い意味でゆったり。ここは好みが分かれるところか。
身長174cmの私が跨がると膝が曲がりつつのベタ足で、身長158cmの女性が跨がってもカカトが浮く程度。背筋がまっすぐになるポジションで前方をしっかり見られるメリットがありつつも、なぜかハンドル位置が妙に高い。シートがフラットなので、どちらかと言えばハンドル位置を低くして、ストリートレーサーよろしくやや前屈気味でライディングするのが似合うのではないでしょうか。そうすると、前後サスペンションは今より伸ばした方が良いとも思うのです。なかなか手がかかるモデルのようですね。
スタイル、性能ともにボルトに軍配が
車重、ホイールベース、前後ホイールのサイズ、エンジン型式など、さまざまな要素が組み合わさって生み出されるライドフィールに、そのモデルの“オートバイとしてのバランス感覚”に対する答えが潜んでいるのですが、「オートバイとしてバランスが良いのは」という問いについては、ボルトに軍配があがります。グラフィックに関しても然りで、ボルトのデザインコンセプトにハーレーダビッドソンという要素があったか否かはともかく、ハーレーなのにハーレーらしくないストリート750に対して、そのアイデンティティをどこに求めるべきか、見れば見るほど悩んでしまうところ。クルーザー色が濃いものの、目指したスタイルと高い走行性能をしっかりと証明したヤマハ ボルト。ハンドル位置が手前に来るポジションにしてやれば、さらに乗りやすい仕様となるでしょう。一方のストリート750はカスタム次第で……というところですが、ボルトはもちろん、人気モデルであるXL1200X フォーティーエイトをも凌ぐスタイルを手に入れるには、85万円という販売価格とほぼ同じカスタム費用が必要になるでしょう。 しかし、それはあまりにも非現実的。ボルトだけでなく、他のライバル車種に対してアドバンテージとなるところが“ハーレーダビッドソンの直系”だけというのは辛いところです。
カウンターパートと言っていい両者の明暗がはっきり分かれた比較インプレッション。この2モデルのいずれかで購入を検討されている方は、ぜひそれぞれの販売店で試乗し、ライドフィールやグラフィックをじっくりと検証してみてください。