離婚の理由など第三者にはわからない。当事者でさえわかっているとは限らないものだ。ただ、彼女が言った、この言葉は非常に興味深い。
日常生活が忙しくて、互いに踏み込めない
家族になるとはどういうことだろうか
ところが、結婚生活は、日常の積み重ねだ。ふたりきりで甘い生活を送れると思っていたら、姑がことのほか口うるさく介入してきたり、親戚づきあいが面倒だったりと、予想外のことも起こってくる。
それでも日常は過ぎていく。日常生活は習慣と惰性の繰り返しのようなもの。そんな中で、夫婦は男女としての関係より、「家族」としての絆を深めていく。子どもが生まれれば、日本ではどうしても子ども中心の生活になる。そして、それをよしとする家庭も多い。
スザンヌさんの場合、子ども中心の生活になっていく過程で、夫ときちんとコミュニケーションがとれなかったのかもしれない。
ただ、中には「家族にはなれたけど、夫婦としての関係が崩れてしまった」と言う女性も多い。結婚生活が長くなればなるほど、そういうことが起こるのではないか。
「つい先日、結婚して15年で離婚しました。結婚後、5年たってようやく子どもができて、これで家族として完璧な形が作れたと思ったし、ふたりとも『親』としてがんばったけど、気づいたら夫婦として、お互いのことが何もわからなくなっていました。最後は夫の浮気がわかり、『いつからか女として見られなくなった。もうおまえとはやっていけない』と言われて、ああ、私も同じように思っていたなあ、と」
ナオミさん(40歳)はそう話す。「いつの間にか」「知らないうちに」夫婦の仲がおかしくなっていったと言うが、おそらく些細な違和感の積み重ねなのではないだろうか。
「夫婦って、いちいち話し合わなくても暮らしていけてしまうんですよね。特に子どもができてからは、話は子どもの成長や、子どもにまつわる行事の予定すりあわせ。夫が何を考えているのか、夫に今日、どんなことがあってどんなふうに気持ちが揺れ動いたのか、私に対してどう思っているのか。そんなことはまったく話さなかったし、考えもしなかった。恋愛中は、夫の心の中ばかり覗きたがっていたのに……」
ふとしたときに夫が漏らした、「仕事が大変なんだよ、今」という言葉も、ナオミさんは深く受け止めなかった。
>>夫婦だから、話せないこともある