J-POP/ヴィジュアル系グループの情報

闘病生活を経て新たな壁に立ち向かうSynk;yet(2ページ目)

シンフォニックなメタルサウンドで実力の高い若手バンドとして知られるヴィジュアル系バンドSynk;yet。以前、悪性リンパ腫のため闘病生活を強いられたBa.栞-shiori-が今月10日、再発の可能性の疑いのあることを報告。発表後に行なった緊急取材にて気丈に振る舞う彼から受け取った言葉は大変印象深く、改めてバンドやファンの形について考えさせられるものであった。

執筆者:金川 彩子

バンドにとって『壁を乗り越える』とはいったいどういうことか

Synk;yet,栞

昨年闘病生活を公開

前回の闘病生活に入るまで、栞はバンドのリーダーであることもあり、バンドに関する業務をほぼひとりで担っていた。かつて「ワンマンの前になると、あれこれと事前準備に怠りがないかと心配になって眠れない」と語っていたのが思い出される。

彼の几帳面で責任感の強い性格、また周囲からの厚い信頼が自然と彼の役割を作っていったのだろう。

それが彼らのバンドの進め方として成り立っていた訳だが、当然、闘病生活に入ると栞に業務を集中させる訳にはいかず、他のメンバーが手分けして引き継ぐことになった。おかげで、以前は眠ることもままならなかった栞だが、今では睡眠時間も取れ、負担も軽減したという。

だが、役割を分担することでバンドが円滑に進むようになったかといえば、そうとは限らない。やはりそれまで頼りにしていたリーダーを失うことの影響はバンドにとって大きく、様々な反省点が浮き彫りとなって表れたようだ。

栞だけでなく、同じくらい残されたメンバーにとっても、苦悩の伴う日々の続いたことだろう。それでも彼らは、ライブではベースにサポートメンバーを入れることなく栞の帰る場所を空け、めげることなく試行錯誤を繰り返しながら活動を続けた。

その期間は結束が強化するなどメンバーそれぞれに多くの気づきを与え、バンドにとって必要な時間をもたらした。

そして、彼にこれまでどんな言葉に励まされたかを尋ねたところ、次のように返ってきた。

「とある関係者の方に『同情はしない。試練だと思って強くなって帰って来るのを待っている』と掛けられた言葉に一番励まされました」

それは結果的に栞だけでなく、バンドに対しての試練でもあり、その言葉を聞いてバンドにとって“壁を乗り越える”とはどういうことか、というのが少しわかったような気がした。

 
脱退や解散には止む終えない事情の場合もあるが、近年の、始動・加入してからその決断に至るまでのスピードの速さ、また、その頻度の高さを思うと、やはり無念でならない上に、ついつい「なんとかならないものだろうか」と思ってしまう。

だが、彼らの関係性の再構築を伴った継続に対する強い思いを感じさせるそのエピソードは、壁と呼ばれる試練を乗り越えるひとつヒントに思えたのだ。

メンバーのこともあまりわからないままで終えていくバンドも少なくないのかもしれない。試練は、本当の意味で互いを理解し、関係性を構築するきっかけとなって、強固なバンドを形成していくのだろう。

>>音楽の作り手にとって忘れてはならない本来の喜びとは。
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