スケーターファッションは?
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典型的なスタイルはナシ?
まず最初に、スケートボーダー達のファッションを見てみましょう。巷のファッション誌では「ちょっとルーズなパンツにキャップやサングラスを合わせたB-BOYスタイル」とか「細身のディッキーズにコーチジャケットを合わせたヘッシュスタイル」とか「ざっくりフードにメッセージTシャツのミクスチャースタイル」とか、なんだか色々ありました。そういうカテゴライズもわかりやすくていいのかもしれません。しかし、スケートボーダー達は地域や年代によって全くファッション傾向も違うし、基本的には見てすぐわかるような統一感もありません。スケートボードはチームスポーツと違ってユニフォーム的なものがない……というか、そういう無理やり着せられるユニフォーム的なものに中指を立てる人たちが多いので、もしそういう傾向を感じた時点ですぐに背中を向けてしまう。
では、どこに共通点があるのか、じっくりと観察してみましょう。
スケーター達の共通アイテム、人気ブランドとは
ベースボールキャップ? ネルシャツ? フードパーカー? ストレッチデニムや細身のチノ? スケーターが身に着ける色々なアイテムがありましたが、どれも共通項とは思えません。唯一スケーターに共通すると思われるモノ。それは足元にありました。スケーターはみんなやっぱり「スケシュー」と呼ばれるスケートボードに適したシューズを履いています。人気のブランドはNIKE、EMERICA、adidas、DC、ETNIES、DVS、SUPRA、VANS、GRAVIS、es、CIRCA、AREth、HUF、GLOBE、など。僕らが運営しているショップで扱うだけでも沢山のメーカーがあります。
それぞれのメーカーに人気プロライダーが所属していて、それぞれのシグニチャーモデルと言われる自分のモデルがあり、何人ものライダーモデル以外にも様々なモデルがあって、さらにスケシューの回で詳しくご説明させてもらったように、デザインやソールの違いなどで本当に色々な種類のシューズがリリースされています。
スケシューはシーズンで大きく入れ替わる
アパレルやデッキと同じように、シューズも主にSS(spring/summer)を呼ばれる春夏物とFW(fall/winter)と呼ばれる秋冬物の間に、それぞれHolidayラインという新商品リリースのタイミングが入るので、一年を通して全部で4回、NEWシューズのリリースがあるのです。シーズンごとに変わっていくモデルやカラーとは別に、黒白のベーシックなモデルなどは“キャリーオーバー”と呼ばれ、シーズンに関わらずリリースされ続けて行くものもあり、いったい何種類のスケシューがリリースされるのか僕ら専門店でも想像もつきません。
単純に各メーカーがモデル別、カラー別、などで30種類のシューズを1シーズンにリリースしたとして、×4シーズンの×ブランド数……。1年間だけで何千種類というスケシューがリリースされ、消費されているのが今のシーンなのです。
スケシューが選ばれる基準
シューズは履く人によって様々な好みがあります。作りが丈夫でソールが薄く、足の裏の感触をつかみ易いバルカナイズド製法や、クッションが良く耐久性が高いカップソール製法で作られたシューズなど。ビジュアルや履き心地で大きな違いがある分け方もありますが、多くはその人でないとわからない特別な理由、「このモデルしか足の幅が合わない」とか「このモデルのこの部分が得意なトリックに合う」とか「この素材の耐久性が一番」など、でシューズを選ぶケースが多いのです。
色々なモデルを履いて何足も履き潰し、自分の足型やライディングによって消耗する部分を把握し、自分に合ったシューズを見つけた時にはかなりテンションが高まるのはスケーターのコモンセンスであるでしょう。
ボロくたって気にしない
おっと、またスケシューの説明で終わってしまいそうなのでファッションに話を戻しましょう。スケートボードが好きな人はどうしても滑っちゃうのでシューズが磨り減ったり穴が開いたりしちゃいます。どんなにイカしたヘアスタイルでもアイロンが効いたシャツを着ていても、生活にスケートボードが入り込んでいる人はシューズがボロいことが多く、それを気にする人は少ないのです。
もちろん滑れないのがわかっていてオシャレをして出かける時にはキレイなシューズを選ぶかと思いますが、普段はそんなボロいシューズで全く問題ないのです。
スケーター達のセンス
このように書くと「シューズ以外はなんでもいい」って感じに聞こえるかもしれませんが、全くそんなことはなく、スケートボーダー達はとことんこだわる人種なのです。まれにとことんこだわらないのがこだわり、ってタイプもおりますが、ここで大きく2つのスケートボーダー的スタンスを説明し、普段の日常生活でどうあてはめていくかをご紹介しましょう。<スケートボーダーのスタンス1:「かぶる」のを避ける>
まずひとつ目。スケートボーダー的にすっごく気になるNGファッションは「かぶる」こと。
一緒に滑る仲間はもちろん、街ですれ違うファッションリーダーたちとも着ているTシャツやキャップがかぶることを嫌います。たまに「申し訳なく思う」ってタイプもおりますが、だいたいチッって感じです。その対象は人だけではありません。
基本理念として「SKATE AND DESTROY」や「ANTI SOCIAL」とか「FUCK YOU HEROS」などスケートシーンに広まるキーワードは、どれも“多勢に埋もれず尖るマイノリティーでいること”を良しとする傾向があります。なので目指すところは「オリジナルでいること」であり「自分であること」なのであります。
ファッションリーダーの評論家がテレビで「ファッションは自己表現だ」って言ってましたが、まさにスケートボードはファッションやライディングスタイルを含めて全てが自己表現なのであります。
<スケートボーダーのスタンス2:選んだ理由があること>
そしてふたつ目。それは「わかっている」こと。スケートボーダーはスケートボードのセッティングにもシューズのひもの通し方にも、オーリーの時のスタンスやノートに貼るステッカーにも、すべてにおいて理由があるのです。
だからウィールの大きさは径が0.5mm刻み、幅も全幅と接地面でも選べるし、デッキもサイズだけじゃなくコンケーブや素材で、ベアリングも生産国やオイルの硬度なんかも気にする人が居るのです。そんな人は、なんでそのTシャツを着ているのか、なんでそのシューズを履いているのか、そしてなんでそのステッカーをその角度でそこに貼っているのかまで、すべてにおいて理由がある。
もしくはすべてにおいてインスピレーションがあって自分なりのひらめきに従っているのです。
スケートボーダーのファッションにおけるNG例
だからね、ちょっとオヤっと思ってしまうのは「シューズはDC、TシャツはNIKE」などという組み合わせ。例えて言うとTOYOTAの車にNISSANのステッカーを貼っている感じ? SMAPのコンサートにEXILEのうちわを持って行く感じ? なんだか説明が難しいですが、その人なりの理由がない「そぐわない」感じがするものに対しての嫌悪感があるのです。
ただ、誰でも最初は知識も経験もないのでやらかします。それを恐れるのも良くないのです。どんどん失敗して周りのスケートボーダー達とコミュニケーションを取りながら自分の中の「定規」を作っていく。
スケートボードを5年もやれば立派なテクニックとは別の「スケート定規」ができるでしょう。
スケートボードは共通言語
そしてどこかで初めて会うスケートボーダーに会った時、そのお互いが持つ「スケート定規」を確認し合うことがお互いのスケートライフの蓄積を共有することになるのです。僕はここがプロライダーやスケートレジェンドたちが言う「スケートボードは言語だ」という意見につながるのだと思ってます。言葉ではなく、お互いのライディング、身に着けているもの、そのテイストやスタイル、そんなファクターが言葉を越えてお互いを理解する重要な要因になるのです。
結局スケーターファッションとは?
おっと、またファッションから脱線しておりました。今回はかなり長くなってしまったのですが、結論を書きましょう。今、あなたが身につけるすべてのモノに選んだ理由がありますか? その選んだ理由は自分で決めたものですか? そのままスケートボードができますか? 全部に頷いたあなたのファッション、そなわちそれが「スケーターファッション」というものなのだと思います。
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