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スケボー練習は「プッシュ」から
プッシュは正確にいうと「トリック」ではありません。デッキに乗って地面を蹴る、というスケートボードで動くのに必要な最低限の動作になります。坂道でもない限り、プッシュができなければ前に進めませんので、当然スケートボードをやっている疾走感的なものも感じることができません。プッシュは教えることもなく、自然とスケートボードに乗ってすぐにやっている人も多いのです。自然に体が動く感じですね。
じつはすごく大切で奥深い「プッシュ」
でもね、キチンとしたプッシュってすっごく大事で奥が深いものなんです。整備されたパークではプッシュはあまり使わない。セクションから降りてきてスピードの調整して次のセクションに入るだけなので、スケートボードを始めてずっとパークで滑っていた人は本当にプッシュが残念なケースが多いのです。個人的にはどんなにトリックのメイク率が良くてもプッシュがカッコ悪いとガックリします。どこでもプッシュ!
「ストリートスケート」と呼ばれる街中で滑るスタイルでは、パークとは違い滑る環境がコロコロ変わっていくのです。商店街の綺麗な路面から、路地裏のガタガタ路面、ビルの前のタイル路面になったり、石があったり溝や段差が普通に目の前にあるのです。そういう環境をいかに楽しく滑りぬけて、見つけたスポットで狙ったトリックをメイクするか、がストリートの醍醐味です。だから、ただキレイな路面だけでプッシュした人と、ストリート育ちの人では全くプッシュのクォリティーが変わってくるのです。ただ地面を蹴ってスピードをつけるだけなのに、こんなに乗り手のスタイルが表現され、プッシュだけでどれだけの楽しさを味わえるのかをまずわかっていただきたいです。
素敵なプッシュとはどんなプッシュなのか?
では、どうしたら素敵なプッシュができるか、を今回のテーマにしたいと思います。まずはプッシュの動作の確認です。プッシュは前足をデッキに乗せたまま後ろ足で地面を蹴ってスピードをつける動きです。前足はやや縦気味に、前トラックの中央よりのボルトが綱先でちょっと隠れるくらいの位置がいいでしょう。まずはまっすぐ進めるようになるのが必要で、デッキが左右にブレないように前足は右左どちらかに加重が偏らないようにすることが必要です。街中を自由にプッシュできるようになるには、プッシュしながら左右に曲がらなければいけないシチュエーションも多く、前足をやや斜めに置いて前足だけで左右に加重できるように置くケースもあります。
最終的には自分がシックリくる位置、って表現になりますが、状況によって置き場所が変わるケースもあり、人によって好みも誓うので、自分にとって一番安定して無駄のない位置を探してみてください。 僕は初めてデッキに乗ってプッシュする人に、まずは全体の動作を1、2、3、4、5、と番号を降ってスピードをつけてデッキに乗り、スピードを落としてデッキを止める、という動作の説明をしています。まずは細かい部分を抜きに全体の動作をざっくりイメージしてみてください。
1.前足の位置を確認し、後ろ足で地面を蹴ってスピードをつける
2.地面を蹴った後ろ足をテールの正しい位置に置く
3.やや縦向きに置いていた前足を横向きに直してライディングスタンスをつくる ここまでがプッシュ。スケートボードで動くのに必要な動作です。続いての4、5は動いている状態から止まるのに必要な動作です。
4.動いているデッキの上で、横向きの前足を後ろ足を降ろしやすいように縦向きに直す
5.後ろ足の裏を地面に擦り付けてスピードを落として止まる
以上がプッシュに必要な動作です。
スケボーにおけるプッシュの種類
これで「走る」、「止まる」がお分かり頂けたかと思います。人によって、また場合によっては「アメリカンプッシュ」と呼ばれる後ろ足をデッキに置いて前足で地面を蹴るプッシュや、「ランニングプッシュ」と呼ばれる走りながらデッキに飛び乗るようにプッシュをスタートする方法もあります。最終的な目的は「スタンスやバランスを崩さずに確実にスピードをつける」というものになりますので、僕がおススメする上記の方法よりも、もっと効率よく目的に達することができる方法があれば、その方法でも全く問題はありません。
環境の違い
プッシュの基本的な動きが頭で理解でき、身体が慣れてきたらぜひ色々なところでプッシュしてみてもらいたいです。街中の段差やマンホールや路面の変化など、最初は下ばっかり見てプッシュしているでしょうが、そのうち段々と慣れてくると完全に前を向いてプッシュしていけます。路面の状況や交差点、曲がり角などあらゆる情報をインプットして行きながら自分の進むルートをプッシュで突き進むのです。「あの角から自転車が出てきたらこうやって避けよう」とか「これ以上スピード出るとあそこ曲がれないな」とか、「あ!道に穴が開いてる」とかの瞬間的な判断が絶えず自分の中で行われていて、その繰り返しがそれぞれのスケート経験値を上げていくのです。
もちろん転ぶ事もあります。転び方もまた経験なのです。
転ぶのはカッコ悪くない
そうそう、転び方のハウツーはあまりありませんので、今回の最後は転び方の考え方。まず「転ぶのはカッコ悪い」と思うのをやめましょう。スケボーしてたら誰でも全員、必ず転ぶのですから。たとえば沢山の人も前で予期せぬ段差に詰まって転んでも、それはそういうシチュエーションで段差を見逃してしまった自分の経験値を上げただけ。
恥ずかしいという思いよりは、なるべくケガをしないように瞬時に対応する方が大事なのです。だって怪我しちゃったら滑れなくなるからね。恥ずかしいより滑れない方が痛手です。
コケるより飛び降りる
ケガをするケースとしては、転んでいるのに「カッコよく見せたい」って思う時が多いような気がします。派手に転ぶのを避けて、手や足で無理に転ぶ身体を止めようとする。手の付き方、足の向きなどでは思ったよりも簡単に折れちゃうこともあるのです。なので、おススメとしては、「転びそうになったら飛び降りる」ということと、「転んじゃったら転がっちゃう」という2つのスローガンを覚えておいて頂きたい。デッキの上でバランスを崩して転びそうだけどギリギリまで耐えてしまうのはコンテストやプロライダー達の常ですが、僕らが街中でそこまで耐えることはない。グラッとしたら飛び降りて両足で着地すればケガのリスクは減ります。スピードがあるときには飛び降りて走る。またもう身体がバランスを崩していて倒れてしまう時には、地面に大事なところ打ち付けないように守ることは優先しますが、基本的には勢いよく倒れる身体を手で止めるのはやめて、猫のように体を丸めてゴロゴロ転がるのです。
擦り傷ができるかもしれませんが大きなケガを避けることができると思います。もちろん完全にスキル以上のトライに負けて気が付いたらケガをしているケースもありますが、それはもう交通事故みたいなものでどんなスポーツでも避けることができない修行です。
継続は力なり
ケガをしてしまって治療の日々は本当に滑りたくってたまりません。スケボーのDVD観たりしてごまかしてもドンドン滑りたい気持ちばっかり積もってきます。それもまた経験で、もしかしたら上達するのに必須の感覚かもしれませんが、できればなるべくケガなく楽しくスケートライフを続けて頂きたいです。【関連記事】