スケボーのファッション
「スケーターファッション」。なんか変な言葉ですね。正確に言うと「スケートボーダーの多くが好むファッション的傾向」ってことでしょうか?今回はスケートボーダーのファッションについてご説明しましょう。
スケートボードのフィールド
スケートボードのフィールドってどこでしょう? 公園? パーク? 駐車場? どれも正解ですがハナマルの正解は「街」であります。サーフィンは海、スノーボードは山、そしてスケートボードは街なのです。僕が子供の頃に多かった砂利の道や、未舗装の路面ではスケートボードはできないのです。「街」と聞いて皆さんはなにを連想しますか? 人混みや繁華街の光、大きな駅に遊園地やデパートなんかを想像する人もいるかもしれません。そこには常に変化していく最先端の流行があり、世界の大都市でもニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドン、パリ、そして東京と、ファッションの最先端を突き進む大都市は整備された路面や施設が山盛りのスケートボードのメッカであり、スケートボーダーにとっては巨大なスケートボードパークのようなものでありました。
変化に敏感なスケートボーダー達
街は常に変化して行きます。古いビルは取り壊され、新しいビルが建ち並びます。開発が進めば街自体がどんどん広がっていき、公園や大きな施設も増えてきます。スケートボーダーはそういう街の変化に敏感です。自分たちがよりスケートボードを楽しめるフィールドが増える可能性があるから。そして街の動きにも敏感です。スケートボードで街中を移動していれば、新しいレストランやブティックを見つけたり、工事現場やいつもと違う動きを敏感にリアルタイムで目にします。常に街を一番把握しているのがスケートボーダーだと言っても過言ではないでしょう。
そんなスケートボーダー達は独自のネットワークを持っていて、特にギヤやシューズやファッションの流行、性能やデザインの評価などは瞬時に広まっていくのです。時代背景やローカリズムが反映される形でスケートボーダーの間で流行ったものが、ファッションに敏感な人たちに取り入れられ、大きな潮流になるケースも多いのです。
スケートボードの時代的背景
そもそもスケートボードはサーフィンの陸上練習用に生まれたものでしたが、映画「DOGTOWN&Z BOYS」に代表される1970年代の爆発的な流行の中心だったサーファーだけでなく、1980年代にはスケートボードのアグレッシブなトリックやクリエイティブなスタイルはギヤの革新的な進化をもたらしました。またスケートボードの社会に対してちょっと斜に構える立ち位置が、流行に敏感な若者たちの「ユースカルチャー」の一部として、当時のアートや音楽など新しい潮流の急激な進化と共に広く世界に認知されることになったのです。
ストリートシーンの主役たち
アートではKEITH HARINGなどのアーティストから「グラフティー」が広く認知され、音楽ではRUN-DMCやPUBLIC ENEMYなどのヒップホップやMINOR THREATやMISFITSなどハードコアパンクにMETALLICAなどのスラッシュメタルが一気に世界に広がっていきました。それらは現代から見れば「オールドスクール」になりますが、当時としては明らかに今までと違うモノ=「ニュースクール」の波が世界を席巻するのと同じ流れにスケートボードがありました。
この時期に世界的に人気があったTONY HAWK、CHRISTIAN HOSOI、STEVE CABALLERO、などは現在もなお強烈なカリスマ性を見せ、世界中に多くのフォロワーがいます。
ミクスチャーカルチャーのはじまり
スケートボードは発祥の地カリフォルニアから、オレンジカウンティーのハードコアパンクや、サンフランシスコのヒッピーカルチャー、さらにニューヨークのヒップホップやグラフティーカルチャーとも深く関わって行きながらシーンを拡大していくのです。そのムーブメントは誰かの企画や計画ではなく、地元の悪ガキ連中がそれぞれ好きな音楽や落書きや遊びを突き詰めていく中で、好みや個性に合わせてグラフティー、ヒップホップやパンクロック、スケートボードなどのシーンが進化し、成熟していった過程なのです。
そんな街の悪ガキ達の中から、有名や映画監督やテレビスター、アーティストやミュージシャンになるケースも多く、フォロワーだけでなくスケートボードがユースカルチャー全体に与える影響はどんどん大きくなっていくのです。
SKATE AND DESTROY
おっと、ちょっとアツくなってしまいました。なんでこんな話をしたかと言うと、このような基盤の上に進化してきたスケートボーダー達のファッションは、「スケーターファッション」というひとつのカテゴリーにまとめでご説明することは不可能なのです。次回はいくつかの傾向に分けてご紹介しますが、基本的には十人十色。しかしバラバラなようでいてスケートボーダー固有のテイストがあるのです。確かにスケートボードカルチャーから生まれたファッションは山盛りあります。
80年代に大流行した太いパンツを靴ヒモなどをベルトにして腰で止めて着用する「腰履き」や、2サイズも大きいオーバーサイズを着用するスタイル、Tシャツの袖を引き裂いてヘアバンドにしたり、ハイカットのシューズをハサミで切ってローカットにしたり、とスケートボードから生まれた流行は、スケートボードをより楽しむ上でどれも意味があるものでした。
既成の概念を壊し、新しいスタイルを作り出すのはスケートボーダーの得意技。ストリートではスケートボーダー達が常に最先端でありました。 【関連記事】