今回は日本で30年以上の歴史があり、我が家でも使用している2つのメーカー〈ギャラリー収納〉と〈ip20〉を中心にご紹介します。金具や素材が変化していく中で、30年前の顧客の要望にも対応できる企業は、家具の歴史の浅い日本ではまだ珍しいことです。
でき上がったインテリア空間に個性の差はさほど感じないように思える2社ですが、作られ方の違いから頼む流れや得意とする提案内容が異なります。
昨今では他にも質の良いシステム家具のメーカーやブランドがいくつかでてきています。その際はこの記事のステップ毎のポイントを掴んで、是非複数のメーカーを比較検討する事をお勧めします。
第1ステップ:ショールームに出かけて話を聞く
壁面収納家具メーカーには〈プランナー〉と呼ばれるライフスタイルを提案するプロがいます。「なんとなく使いにくい」「兄弟の子供部屋に、そろそろ仕切りが必要かもしれない」等の日常生活の〈ぼんやりとした改善したいポイント〉も、ショールームの展示を見たり、プランナーの話を聞いたりすることで明らかになっていくことがあります。そのポイントを把握するきかっけを感じられたショールームが、相性のいい可能性の高いメーカーです。・積み木式で考える〈ギャラリー収納〉
ギャラリー収納は、箱を重ねて、特殊な金具で固定しながら空間を作っていくスタイル。自社工場で制作しており、自社スタッフが設置に来てくれます。そのまま運んで使える美しいトレイや、柱や天井との段差への配慮等の細やかさに、日本のメーカーならではのホスピタリティーが感じられます。ウレタン塗装や突き板の素材感や、面の合わさり方等の細かいディテールも経年劣化(年月を経て、色あせたり、面が剥がれてきたり等)しにくいクオリティーです。
リビングの片隅に作られた一坪書斎なら、繋がりながらも集中したワークスペースを作れます/写真提供:ギャラリー収納
・壁面パネル単位で考えるドイツ生まれの〈ip20〉
ip20は、120×120の構造計算済の1センチ単位で対応できる規格パネルと、統一された金具の組み合わせにより建築的に自由度のある提案をしてもらえるのが特徴です。様々な提案がしてもらえる分、最初は戸惑うかもしれませんが、図面と見積りを丁寧に作成してくれます。設計図を基に自社工場で加工された製品を自社スタッフが設置場所で組み立てるだけのスピード工事で、騒音や汚れの心配することなく建築家に頼んだような立体的な空間を作ってもらえます。
窓辺の高さを利用して、ベッドを上部に持ち上げた下に勉強コーナーを作った事例/写真提供:ip20
第2ステップ:打ち合わせ
自宅の図面を持って、ぼんやりと見えてきた改善点を挙げながらプランナーに提案書を作成してもらう為の打ち合わせをします。家族で出かけて、それぞれの言い分を聞いてもらって一緒に整理するのがポイントです。例えば、将来的に性別の違う兄弟の部屋を壁面収納家具を使って変えようと考えている場合は、この時点で希望を伝え、将来の組み替えを見越した提案を依頼する事が可能です。・ショールームで打ち合わせする〈ギャラリー収納〉
自宅の図面や希望を元に、ショールームのパソコン上で、定番家具の箱を積み重ねながら作る壁面をプランナーが描いてくれます。また、図面ではわかりにくい仕組みも現物があるので確認できます。
使いやすい収納アイデアも知識豊富なプランナーに相談できます/写真提供:ギャラリー収納
ショールームで概算や完成イメージが持てるのが魅力/ギャラリー収納
・自宅で打ち合わせする〈ip20〉
ショールームにはいろいろなアイデアの展示品の他にも、たくさんの施工例写真を用意してあるのでイメージを膨らすことができます。一方で1センチ単位で対応できるパネルシステムによる空間づくりは、自由度が高く、住戸によって条件が異なるので、早い段階でプランナーに自宅を見てもらう事になります。実際の空間をプロの目で見て、一度持ち帰り、後日提案書とともに再訪してもらう流れになります。建築と家具の間のような立体的な提案の作り込みや、すっきりとしたおさまりが魅力です。
プランナーの提案から見えてくる、自分達らしい暮らし方/写真提供:ip20
第3ステップ:設置
両社とも自社工場で加工済みのものを持ち込み、自社スタッフが組み立てを行うので、とてもスピーディーな工事です。クギや接着剤を一切使用しない独自の組立工法なので、騒音も悪臭もなく普段の暮らしをしている傍らで設置をしてもらう事ができます。また、引っ越しの際や暮らし方が変化した際に移動できるのも大きな魅力です。いかがでしたか?建築と家具の間のような壁面収納が、変容する家族形態によりそって変化できる理由がお分り頂けましたでしょうか?それでは、次のページに記事内でご紹介したメーカーのデータをまとめておきます