かわいい子供たちを1型糖尿病のような自己免疫性疾患から守るための研究が進んでいます(写真は病気とは関係ありません)

かわいい子供たちを1型糖尿病のような自己免疫性疾患から守るための研究が進んでいます(写真は病気とは関係ありません)

自分の体を守る免疫システムが誤ってインスリンを産生する膵臓のベータ細胞を破壊してしまう1型糖尿病に、腸内細菌が関わっている可能性を示す発表が続いています。

2014年6月12日の糖尿病専門誌「Diabetologia」オンライン版に発表されたフィンランドを中心とする欧州7ヵ国の研究では、1型糖尿病を3歳未満で発症した小児には同年齢の健康児と比べると腸内細菌叢(そう)の構成に明らかな相違が見られました。

また、2015年2月5日の医学誌「Cell,Host&Microbe」には、フィンランドとエストニアの遺伝的に1型糖尿病のリスクが高い乳児を追跡した研究で、3歳未満で発症した小児には発症の1年前から腸内細菌叢に大きな変化が見られ、腸内細菌叢の多様性がはっきりと低下していたことが発表されています。

なぜか、1型糖尿病発症率には国によって大きな差があります

今回発表された2つの論文はフィンランドの小児を中心にしたものですが、それには理由があります。フィンランドは人口10万人あたり毎年48人の0~14歳児が1型糖尿病を発症する国なのです。理由は不明ですが、フィンランド、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、スコットランド(英)などの北欧は0~14歳児の1型発症率が高いのです。日本では北海道で2.2人、沖縄で1.4人という発表がありますから、いかに北欧に1型発症が多いかが分かります。

そのため、交絡因子の少ない小児での1型糖尿病の病因研究がこれらの国々で行われています。寒い国ですから風邪のウイルスが疑われてもいますし、夏と冬とでは発症率に差があるのですが、ウイルスの特定はされていません。意外にも腸内細菌が浮かび上がってきました。

小児の1型発症と腸内細菌の変化

上記「Diabetologia」の論文はオランダGroningen大学のMarcus C. de Goffauらの研究です。近年のいろいろな論文で1型発症に腸内細菌叢の異常が関わっていることが示されてきましたが、小児発症の1型と腸内細菌の関係が未確認だったので、そこにポイントを絞ったものです。

28人の1型発症小児と27人の健康児(いずれも1.3~4.6歳)の糞便を両親が採集して郵送(常温)し、研究所で-75℃で冷凍保存して腸内常在菌の遺伝子を直接取り出して菌群、菌種、菌株レベルで細菌の種類を定量的に特定しました。1型小児とコントロールの健康児の腸内常在菌を比較しました。

3歳未満で発症した小児の腸内細菌にはバクテロイデス門とBacilli属(直鎖球菌など)が多かったのですが、健康児にはクロストリジューム・クラスターIVとXIVaが豊富でした。とくにクロストリジューム・クラスターの酪酸産生菌が多いのが目立ちました。3歳児以上では腸内細菌叢の種類の多さ(多様性)が1型と健康児との相違のキーポイントでした。

結論として、健康児には多様性のあるバランスのとれた腸内細菌叢があり、特に酪酸産生菌が重要なポジションを占めているということでした。腸内細菌が作る短鎖脂肪酸の酪酸については後述します。

2015年2月5日の「Cell,Host&Microbe」に発表された論文は、フィンランドとエストニアの33人の遺伝的に1型の高リスクの乳児を追跡したものです。3歳児になった時点で4人が1型糖尿病を発症していました。実は発症の1年前から腸内細菌叢に大きな変化が認められており、細菌の多様性が崩れ、元に戻りませんでした。酪酸のような有用な短鎖脂肪酸を生成する菌種が減り、炎症に関連する菌種が増えたのです。

しかし、この変化が免疫異常をもたらして1型糖尿病の発症につながったのか、逆に1型糖尿病の結果として腸内細菌叢に変化が起きたのかはまだ分かりません。この現象が年長組の少年少女や、成人で1型を発症する人達にも通じるかどうかも不明です。別年代のグループとはプロセスが異なる可能性があります。なぜなら、近親者に1型糖尿病者がいる、疑わしい遺伝子を持つ子供のうち、この時点では少数の発症例しか起きなかったからです。