子育て/子育てに役立つ最新心理学

子供だけではない! 親だってイヤイヤ期

子供のイヤイヤ期はあって当たり前。でも実は、親のイヤイヤ期も存在します。「育児を投げ出したい」「我が子を愛せない」、そんな親のイヤイヤ期の乗り越え方について、子育て心理学の見地からお伝えします。

佐藤 めぐみ

執筆者:佐藤 めぐみ

子育てガイド

親のイヤイヤ期に見られる2つの「べき」って?

育児の過程で、「何もかもイヤ」「自分の子供が可愛く思えない」と悩むママがいます。私も日々のご相談でそのようなお悩みを吐露されることが時折あります。色々とお話を伺ってきて気づいたのは、そこには2つの「べき」が存在するケースが多いこと。1つめは子供への「べき」、2つめは自分への「べき」。まずは、ここでいう「べき」について解説しましょう。

■子供への「べき」の例
  • 出したおもちゃは自分で片づけるべきだ
  • お皿の上のものは、ぜんぶ食べるべきだ
  • 親の言うことは聞くべきだ

■自分への「べき」の例
  • 毎日おいしいごはんを作るべきだ
  • 予定はきちんとこなすべきだ
  • 自分の子供なのだから当然愛するべきだ
「えっ、『べき』くらいでどうして?」と思われるかもしれません。でも、心理学的に見ると、この「べき」は、ストレス要因として決定的なもの。というのも、自分の中での縛りが多すぎることで、OKの範囲が極端に狭くなってしまうからです。

強いマイルールを自分にも子供にも課してしまうため、母親としての自分に満足できない、子供の行動や態度すべてが目につく、という状態に。そんな完全アウェー状態では、人間誰しも心穏やかにはいられません。その結果、すべてがイヤ、愛することができない、という状態に陥ってしまうことが多いのです。

実際、このようなお悩みを吐露なさるママは輪をかけてまじめな方が多く、それゆえ「○○すべき」と自分を枠にはめ込んでしまう傾向があります。では親のイヤイヤ期、どうやって抜け出せばいいのでしょうか?


悩んでしまうのは、かけがえのない存在だからこそ

日々の育児相談やストレス診断で感じるのは、悩みやストレスは「気になる相手」「重要なこと」に対して発生するのだということ。そうなんです。その人にとって「どうでもいいこと」ならば、自分の心にひっかからずに”すり抜けて”いくので、悩みにはならないのです!

ニュースで見る虐待のケースなどは、まさにすり抜けの典型例。「しつけのためにやった」と言い訳をする親の姿をよく見かけますが、その言動自体、全く悪びれた様子がありません。彼らは「自分の子供を愛していない」ということを悩んでもいないし、自分を責めたりもしていないのです。

親のイヤイヤ期は、この点で虐待のケースとは大きく違います。イヤイヤ期のママは「育児がイヤ」と思いながらも、子供のことをスルーできません。我が子がママにとって重要な存在であるゆえ、悩んでしまっているのです。

こんな状態のときに、「親が子供を愛するなんて世間一般の常識だよ」と正論を言ったところで、「そうか、わかった」となるはずがありません。むしろ悪化の一途をたどるのがオチです。


親のイヤイヤ期は「おたがいさま」の姿勢で

自分を受け入れることからはじめよう

自分を受け入れることからはじめよう

まずなにより必要なのは「こういうときもある」という自己受容です。これは、前述の「べき」の縛りを取り外す効果があります。

またこのときカギになってくるのが、ご主人や友人などの身近な人々の姿勢。ママ自身が「こういうこともある」と現状を受け入れ、「べき」から脱するためにも、周りも同じ姿勢で見守ってあげることが大切です。

長い子育て生活、常に100%でいられるママはいません。誰だって波があります。自分の調子がいいときは周りのママをサポートし、ペースに乗れないときには、逆に助けてもらう。そんな温かな関係こそが、親のイヤイヤ期には必要なのです。

また、「自分の子を愛せない」という悩みは基本的にずっと続くものではありません。ご本人の気づきと周りのサポートで変わっていきます。実際、私も、ご相談にのっていくうちに変わっていくママ達の姿を目の当たりにしています。そして、その時期に育児に真摯に向き合った経験は、そのママの糧となり、母親としての実りを多くしているということも忘れてはならないポイントです。

我が子を愛するのは大事なこと、そして、我が子を愛せていないと気づくのも大事なことです。「気づき」がない育児は実りも少ない。気づくということは、母親として一歩前進しているということなのです。
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※乳幼児の発育には個人差があります。記事内容は全ての乳幼児への有効性を保証するものではありません。気になる徴候が見られる場合は、自己判断せず、必ず医療機関に相談してください。

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