「罰」は子どもに嘘をつかせる
Journal of Experimental Child Psychologyに掲載されたマギル大学のVictoria Talwar先生の報告では、4~8才の子ども372名を対象に以下のような実験を行っています。テーブルの上におもちゃを置き、子どもに「大人がいない間に覗き見をしないように」と言ってから部屋を出て、1人で1分間過ごさせます。部屋を出た後、隠したビデオカメラで部屋の中で何が起こっているのかを撮影。そして研究者が部屋に戻って、子どもに「いない間、後ろのおもちゃを覗いた?」と聞くというものです
まずは、おもちゃを覗いた子どもは372名中251名いて、2/3以上の子どもがおもちゃを覗き見ていました。年齢が高くなるにつれて、覗き見する子どもが少なくなっていたそうです。
では、質問に対して、子どもはどのように答えたのでしょうか?
実は、覗いた人数の約2/3にあたる167名が、覗いたのに覗いていないとウソを言いました。また、年齢が高くなるにつれてウソをつく傾向があったとのことです。
子どもは罰を受けることを恐れるために、本当のことを言わない可能性があるという結果でした。
Talwar先生は結論として、「つまり、罰することで真実を語らせることはできないということだ。実際子どもに真実を話させようとするとき、罰への脅威は逆効果なのである。本研究は、子どもと良く接し、子どもに正直になって欲しい、小さな子どもを持つすべての親や教師等の専門家に有用な情報となるだろう」と語っています。
子どもが嘘をついてしまう心理
怒られるとわかっている時に、真実を言えるでしょうか?
本当のことを言っても、嘘がばれても、怒られることに変わりがないのであれば、ばれた時に怒られる程度が大きいとしても、突き通せる可能性がある嘘を選択するということになります。
嘘にはいろいろな種類があります。「嘘の方便」と言って、嘘をつくことで相手を思いやることもあります。正直なだけでは生きていけないのが、この世の中なのかもしれません。それはお互いの利益が衝突する場面が必ずあり、そこで正直であるだけでは、利用され、利益を損なう結果になるからです。それでもいいと思う場合を別にして、人それぞれの思惑があるわけですから、本音だけでは生きていけないのかもしれません。
では怒るよりも…
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