親知らずが与える影響
親知らずは名前の通り、子供が親の手から離れる年齢になってから萌出する第3大臼歯のことです。もちろん生えてこない場合も有りますが、多くの場合は半分顔を出している半埋伏の状態や、斜めや真横に生えてしまい、手前の歯にぶつかってしまったり……。奥歯をしっかり使う硬い物やすり潰す必要のある食物をたくさん食べていた昔の人に比べ、現代人は顎がとても小さくなってきています。顎が小さくなった分、本来親知らずが生えるはずのスペースは無くなり、結果まっすぐと生えるはずが斜めになったり、真横に生えてきてしまうのです。
その為、半分しか出てこない親知らずはお手入れがしづらい為虫歯や歯周病になり易く、斜めや真横に生えてしまった親知らずが手前の歯にぶつかり、虫歯の誘発や歯列の乱れを発生させてしまいます。
以前の記事「親知らずと歯科インプラントの関連性」も合わせてご覧ください。
ウィズダムトゥースアウトとは?
まだ歯根が出来ていない智歯。歯嚢の中に埋まっている。
それは、悪さをする前にその原因である親知らずを抜歯してしまうということ。中学生から高校生の夏休みを利用して、ご両親と一緒に来院、相談されることが多く、親知らずの歯根が出来る前のまだ歯嚢という袋状のものの中に歯の赤ちゃんが納まっている状態で抜歯をするのです。
歯嚢を破ると歯槽骨に固定されていない歯はくるくると動きます。少しの力で歯を取り除くことが出来、縫合も少なく済みます。成長して歯根が出来てしっかりと固定された親知らずを抜歯するより、はるかに負担が少なく済むのです。
歯科矯正と親知らずの関係
親知らずが与える影響の中に、歯列の乱れが有ります。小さい顎に28本の永久歯がびっしりと並んでいるところに、無理やりスペースを開けて親知らずが生えてくるのです。定員オーバーで椅子に座るときに、人の上に重なったり、前後をずらしたりということをして座ったことは有りませんか?まさにこれが口腔内で起きているので、歯列の乱れを引き起こしてしまいます。この原因を取り除くために親知らずを抜歯するという方法も有るのです。
欧米でウィズダムトゥースアウトが一般的であるのは、日本と欧米の歯に対する意識の違いから来ているのだと考えます。綺麗な歯列が周りに与える印象の大切さを欧米では子供のころから親がしっかりと子供に教えているのです。
日本にもウィズダムトゥースアウトを
先日、お子様の親知らずを抜歯して欲しいと当院の患者さんから相談を受けました。矯正担当医から親知らずを抜かなければならないと言われたそうです。15歳の患者さんの親知らずはまさに歯嚢に包まれた状態であり、軟らかい歯槽骨を少し広げると簡単に抜歯することができました。2針ほど縫合し、部分麻酔で約20分ほどですべての処置は終了しました。
海外居留経験がある方や、国際結婚している方が多くなって日本にもこのような前向きな親知らずの抜歯を希望する若年層の患者さんが増えてきました。
近年のむし歯罹患率と保存歯科治療技術の向上をふまえ、これも1つの予防歯科治療と言っていいのではないでしょうか?