恋は不条理
その後、容疑者は大阪に戻り、被害者は追いかけてくるように大阪に就職。彼は前からつきあっていた女性と結婚した。被害者が彼の結婚を知ったのは、SNSでの彼の投稿らしい。ショックだっただろう。
彼女は以前から、何度か別れ話を持ち出していた。だが彼は、「オマエはオレのことがいちばん好きなんだから、別れられるはずがない」などと言っていたとか。惚れた弱みがあったのかもしれないが、そこで女性が「ふざけるな」と別れてしまえばよかったのに……とつくづく思う。男女の「別れどき」、案外むずかしいのかもしれない。
恋愛ほど不条理なものはない
殺人事件を例に引くのはあまりに不謹慎なので、ここからは一般論。不倫だろうが不倫でなかろうが、男女関係において、別れどきというものはあるのだろうか。そもそも、恋愛ほど不条理なものはない。つきあうときは、お互いの同意がなければ始まらないのに、別れるときは片方の拒絶だけで成立してしまうのだから。それをわかっていないと、別れるときに揉めごとになりやすい。
昔は、片方が別れたいと言っても、もう片方が別れたくなければ粘って粘って、別れを撤回させたりもした。まだ「ストーカー」という言葉がなかったから、待ち伏せもしたしつきまとったりもした。私自身にも若い頃、そんな経験がある。
だが、恋も数回繰り返してみると、相手の「別れたい」思いを、一度は撤回させたところで、結局はうまくいかないのだとわかってくる。どちらかが「別れたい」と思った時点で、恋は死ぬのだ。蘇りはしない。それがわかると、無駄な延命措置はやめようと思えてくる。互いの恋の炎が燃えている間に、燃やし尽くすしかないのだ。結果が結婚になるか別れになるかは、ある意味で時の運。あるいは互いの強い意志が持続するかどうか。
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