W杯に続く敗退の意味
今大会で何度もチャンスを逃した香川真司(25歳・ドルトムント/ドイツ)は、「自分が決めていれば、というシーンがありましたし、そこで点が取れなかったですし、責任を感じています。申し訳ないです」と、何度も頭を下げた。PK戦でも彼のシュートは左ポストに嫌われ、敗戦を招いてしまった。チャンスを逃したのは、香川だけではない。
前半は乾貴士(26歳・フランクフルト/ドイツ)が、後半は途中出場の武藤嘉紀(22歳・FC東京)や豊田陽平(29歳・サガン鳥栖)らが、至近距離からのシュートをミスしている。Jリーグなら確実に決めているか、少なくともゴールの枠内に飛ばしているはずの一撃が、ゴールを外れてしまっていた。
ワク内ならGKが弾いたボールを詰めるとか、DFに当たってコースが変わるといった次の展開が生まれる。しかし、ワクを外したら攻撃はそこで終わりだ。相手にひと呼吸する時間を与えてしまう。後半途中から棒立ちのボクサーのようだったUAEを倒せなかったのは、攻撃の持続性に物足りなさがあったからである。
昨夏のブラジルW杯に続く早期敗退は、何を意味するのだろうか。
アジアのパワーバランスは、これまでと変わっていない。4年前にベスト8を構成した日本、カタール、ウスベキスタン、ヨルダン、オーストラリア、イラク、イラン、韓国のうち、カタールとヨルダンを除く6か国が今回も準々決勝に勝ち残った。今大会では結果を残せなかったものの、日本が韓国やオーストラリアと並んでアジアのリーダー的存在なのは間違いない。
ならばなぜ、日本はUAEに足元をすくわれたのか。
ピッチ上の現象としては、決定力不足とカウンターへの対応に集約される。ただ、より根本的な原因を探ると、日本のサッカースタイルに行き着くのではないだろうか。
アルベルト・ザッケローニからハビエル・アギーレへ監督が代わっても、日本はボールポゼッションを重視したサッカーを志向している。前監督当時とメンバーがほぼ変わらないから、サッカーも似てくるのは必然だが、ポゼッションという言葉が隠れ蓑のようになっている気がしてならない。
ブラジルW杯当時に比べると、フィフティ・フィフティロングボールを使うようにはなっている。それでも、ボールを大切にする、しっかりとつないで崩すという大前提がチームに深く根を張り、その結果としてダイナミックさや意外性が限定的にしか発揮されていないのである。見栄えの良い綺麗なサッカーだが、相手がぞっとするような怖さを与えることはできていない、と言えばいいだろうか。
それでもたくさんのチャンスを作っていたし、UAE戦もちょっとした運に恵まれれば勝てていた、という意見はあるだろう。
アジアで勝てれば、それでいいのか?
日本の目標は、W杯での上位進出である。
ボールポゼッションはできるものの結果がついてこないでは、ブラジルW杯から何ら進歩していないのと同じだ。
フィールドプレーヤー全員が攻撃にも守備にもダイナミックに関わり、これでもかというぐらいに走り続けるチーム作りを、進めていくべきではないかと思う。アギーレ監督の進退問題はなおも不透明だが、誰がチームを率いるにせよ、選手選考の基準を考え直すべきだと思うのである。
ポゼッションサッカーでいいのかという疑問から、日本サッカーの再建は始まるはずだ。