消費者心理は改善したものの……
各調査から景気動向を考えてみましょう
内閣府経済社会総合研究所が景気動向の把握や経済政策の企画・立案の資料とすることを目的として、消費者の暮らし向きの変化などを捉えるために毎月実施されているものです。調査時点は毎月15日で、当月の調査結果が翌月の中旬に公表されています。
具体的には、今後の暮らし向きの見通しなどの消費者の意識、物価の見通し、世帯の状況は毎月、自己啓発、趣味、レジャー、サービスなどの支出予定は3月、6月、9月、12月の四半期ごと、主要耐久消費財などの保有・買い替え状況は3月の年1回調査されています。
2014年12月の調査結果が2015年1月16日に公表されたので、一般世帯がどのような意識を持っているのか見てみることにしましょう。
消費態度指数を構成する各意識指標は、2014年後半(7月)から11月までほぼ5ヵ月連続して悪化していたものの、12月には上昇に転じています。暮らし向き、収入の増え方、雇用環境は1.0ポイントを超える上昇、耐久消費財の買い時判断だけは0.9の上昇に留まっていますが、全項目で改善しています。消費者の意識からはプチ景気後退は2014年の11月で終了しているのかもしれません。ただし、資産価値に関しては前月よりも0.4ポイント悪化しているのは気になるところです。
物価の見通し、「1年後に上昇する」が減少傾向に
それでは、物価の見通しを見てみることにしましょう。消費者が予想する1年後の物価の見通しは、上昇すると回答した割合が1.8ポイント減少したのに対して、変わらないは1.4ポイント、低下するは0.2ポイント増加しています。原油価格の急落を背景としたガソリンや灯油価格の下落が、物価の見通しを引き下げたのかも知れません。とはいえ、全体の9割弱が1年後の物価は上昇すると予想しており、2.0%以上5.0%未満の上昇を予想している世帯が全体の4割弱で最も多くなっています。
娯楽費、外食費などの支出は減少傾向。収入減に備えている?
次に、3ヵ月毎に調査されているサービス支出などを見ていくことにしましょう。内閣府経済社会総合研究所では「サービス支出DI」を公表しているのですが、このDIは支出を「増やす」という回答から支出「減らす」という回答を引いて作られているものです。
2015年1月から3月まで各項目のDIを見ると、自己啓発はマイナス10.4ポイントで、2014年10月~12月期(以下「前期」という)と横ばい。スポーツ活動費はマイナス7.0ポイントですが、前期比より0.2ポイント上昇。コンサートなどの入場料はマイナス12.2ポイントで、前期比より3.4ポイントの減少。
遊園地などの娯楽費はマイナス20.9ポイントで、前期比より1.6ポイントの減少。レストランなどの外食費はマイナス33.8ポイントで、前期より2.0ポイント減少。家事代行サービスはマイナス6.8で、0.4ポイントの上昇となっています。
上昇(改善)しているのは、スポーツ活動費と家事代行サービスの2項目のみ。健康志向の高まりと共働き世帯の増加を反映しての事と考えられますが、家事代行サービスの数値が改善したのは「支出を減らす」の回答が減少したからです。実質的に支出を増やすの回答が増加したのはスポーツ活動費のみとなっています。
年末にかけやや明るい兆しが出てきたものの、消費動向からは実質賃金の減少に備えている姿が窺えます。2015年度は昨年以上のベースアップが期待されていることから、今年度の支出水準を維持できれば、ベースアップ分は貯蓄に回せると思われます。貯蓄を増やすには、ムダな支出を見直し、身の丈にあった家計管理をすることが重要。今年はより気を引き締めていく必要がありそうです。
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※サービス項目の6支出ですが、私たちがイメージするものと違っているかもしれませんので、内閣府経済社会経済研究所の公表している対象をそれぞれ明記しておきます。
「自己啓発」=カルチャーセンター、英会話、茶道、着付け、料理学校など。「スポーツ活動費」=スポーツ教室・クラブ、テニス、スキー、ゲートボール、ゴルフなど。「コンサートなどの入場料」=コンサート、演劇、美術館、博物館など。「遊園地などの娯楽費」=遊園地、スポーツ観戦、ゲームセンター、カラオケ、パチンコ、競馬など。「レストランなどの外食費」=和食料理店などでの飲食代。「家事代行サービス」=ハウスクリーニング、食材配達、ベビーシッター、ホームヘルパーなど。