大学改革の先頭をひた走る慶應義塾大学
「全社会の先導者たらん」という福沢諭吉の志のもと、社会を牽引していくことが慶應義塾の掲げる教育の理想
1990年、慶應義塾大学はSFC(湘南藤沢キャンパス)新設学部であった総合政策学部、環境情報学部でAO入試を始めた。アメリカの制度であったAO(アドミッションオフィス)による新しい試験制度。それは推薦入試のように学力試験を課さず、書類選考と面接だけで優秀な生徒を集める方法だ。何事も客観的であることを重んずる日本の教育界で、AO入試はアメリカ式の主観的な方法による新しい選抜手段として広く注目を浴びた。この方式が推薦入試とは違った形で日本に根を下ろすことになり、現在は大半の大学が慶應方式を踏襲している。
現在主流になりつつある文理の枠を排除した教育を導入したのも、このSFCからである。早くから大学学閥を廃し、教授陣を全国、海外から広く集めている。例えば、浅野史郎氏(元宮城県知事)、竹中平蔵氏(元総務大臣)、福田和也氏(文芸批評)、富田勝氏(先端生命科学)など、教授陣は多彩な顔ぶれだ。
また、私立医大トップにある慶應義塾大学医学部に2008年から薬学部が新設された。共立薬科大との統合を発表し、大きなニュースとなったのも記憶に新しいだろう。2001年度に設置された看護医療学部を合わせれば、大学が考えうるあらゆる種類の学部学科を持つ総合大学となったと言える。