アメリカ西海岸のオレゴン州最大の都市ポートランドは、いろいろな呼び方をされています。
・最も住んでみたい街
・自転車通勤に適した街
・全米で注目の美食の街
・地元第一主義が徹底した街 など
そんな魅力的な街は、地域コミュニティが盛んな街としても知られています。
具体的な事例を3つ紹介していきましょう。

廃校の小学校をリノベーションして地域にも開放
(Kennedy School)

外観写真

ケネディ・スクールの正面玄関

最初の事例は、「Kennedy School(ケネディ・スクール)」。公立小学校が統廃合の結果、廃校になってしまいました。それを買い取ったのが、ポートランドの地ビール会社マクメナミンズです。マクメナミンズは、教会や農家など古い建物をブルワリーにリノベーションして、成功を収めている会社です。

ポートランドには、数多くのブルワリーがあり、その場所でビールを醸造して販売しています。マクメナミンズの地ビールは、マクメナミンズのバーやレストランでしか飲めません。そこに、ビール好きが集まるというわけです。
廊下の写真

廊下には絵画や彫刻をたくさん展示


ただし、小学校跡地なので住宅街の中に位置します。地域住民から反対の声が上がったそうですが、小学校の景観をそのまま残し、地域のコミュニティセンターとしての役割も担うという条件の下で、廃校が見事に生まれ変わりました。

ホテルのフロント

ホテルのフロント

小学校の広い敷地・建物を活かして、地ビールバーや中庭に面したレストランのほかに、教室を改修して客室にしたホテルも経営されています。かつての講堂を利用した映画館、小さなプール、体育館もあり、地域住民にも開放。校庭は駐車場と市民菜園になっています。廊下には地元のアーティストの作品が展示されるなど、地域コミュニティの場として、様々に活用されているのです。
レストランの写真

左)中庭に面したレストラン。右)中庭も屋外レストランになる

ホテルの客室の写真

教室を2つに仕切って、トイレやシャワールームを付け加えて、客室にしている。客室内には元教室らしく黒板が設置され、子ども連れの宿泊客が落書きできるようになっている


シェア工房で若い人材を育成
(ADX)

外観写真

ADXの個性的な外観

2つ目の事例は、ADXです。ものづくりに携わる人たちが有料メンバーになって、コミュニティを形成する「シェア工房」という言い方がわかりやすいと思います。

メンバー(3つのレベルがある)は、木材や金属の工作機械、デジタルデザイン用コンピュータなどのツールを共有のスペースで使うことができます。シェアすることでメンバー間のスキルや知識の共有ができたり、ADXが様々なワークショップを開催するなどして、ものづくりの学びの場としての役割も果たしているのが特徴です。
金属加工部門の写真

金属加工の作業スペースMetal shop

木工部門の写真

木工用の作業スペースWood shop

ADX室内写真

ラインのオレンジが金属、黄色が木工、赤がレイザーなどのジャンルでスペースが分かれている。手前左は工具のライブラリー、奥は無料で利用できるカフェ

地元の企業などとも連携して、資材を安価で提供してもらったり、講習会を開催してもらったりといった、ものづくりの支援体制も整っています。

家具製作の写真

モダン家具職人のAndrew Moeさんのレンタルスペース

案内をしてくれたMatt Preston(マット・プレストン)によると、月極なので幅がありますが、約120~220人のメンバーがいるそうです。趣味として数時間利用する人から、起業する人まで様々で、創設して3年半ですが、ADXを卒業して10~20社が独立しているということです。

また、地元の有名企業ナイキやコロンビアなどにこの場所でイベントを開催してもらったり、小学生や非行少年などに学びの場を提供したりなど、ポートランドの活力となるように幅広い活動を行っています。

自転車愛好家のための店
(VELO CULT)

室内写真

集まって楽しめる空間が豊富なベロカルトの店内

3つ目の事例は、自転車店の事例です。
自転車店というには、あまりに広いのですが、VELO CULT(ベロカルト)の店内には、自転車やパーツが並んでいるだけでなく、ビールや本格コーヒーが飲めるバーカウンターやボーリングのレーンを加工した大きなテーブルがあり、愛好家たちが集まりやすい場所であることがわかります。
バーカウンターの写真

ビールやコーヒーが飲めるバーカウンター

至る所に廃材が活用されていて、1階には跳ね橋を活用した小さいステージも用意されています。さらに地下には、小さいながらもイベントホールやシアターがあり、自転車愛好家たちの冠婚葬祭もできるといいます。自転車コレクターとしても知られる、オーナーのSky Boyer(スカイ・ボイヤー)さんによると「葬式はまだやったことがない」とか。
イベントホールの写真

地下のイベントホール

ポートランドでは自転車が通勤などの足として広く利用されているため、サンディエゴからポートランドに移ってきたそうですが、結婚式や誕生会、コンサートなどのイベントの開催、映画の上映と地元の自転車愛好家が交流できる場を提供し、コミュニティを形成している面白い事例です。

○協力/日本賃貸住宅管理協会、ポートランド在住・谷田部 勝氏

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