神奈川県川崎市の高齢者住宅を3タイプ見学
前回の執筆記事「アメリカの高齢者住宅が日本と違う点は?」で、アメリカの高齢者住宅の事例として「リタイアメント・コミュニティ」を紹介しました。アクティブシニアのうちから入居し、多様な共用施設、多彩なアクティビティで自立した生活を支援するスタイルが主体で、介護や看護のケアなど継続的なサービスが整っているというというのが、大きな特徴です。
一方、日本の場合は、介護保険制度を利用する前提で、比較的単身者向けの高齢者住宅が多い傾向にあります。
今回、「高齢者の住まいと暮らしの支援センター」が主催した見学会に参加して、代表的な次の3つの高齢者向け住宅・施設を見学しました。
・サービス付き高齢者向け住宅(Cアミーユ川崎小倉)
・介護付き有料老人ホーム(ライフコミューン川崎)
・特別養護老人ホーム(クロスハート幸・川崎)
3つのうち住宅の領域となるのは、サービス付き高齢者向け住宅で、ほかの2つは介護施設の領域になります。それぞれ居室の考え方、ケアサービスの種類や選び方、費用の支払い方などが異なり、それによって自分でどこまで対応するかも変わってきます。個別事例で詳しく見ていきましょう。
高齢者住宅(1)サービス付き高齢者向け住宅:
Cアミーユ川崎小倉の事例
サービス付き高齢者向け住宅は、賃貸借契約(利用権方式の契約の場合もある)を結ぶのが基本で、ケアの専門家が安否確認と生活相談のサービスを提供することが義務付けられています。多くの場合は食事などの他の生活支援サービスや介護サービスなどを提供する外部の事業者と提携しており、個別にこうしたサービスを受けられるようになっています。建物には段差がなく、手すりが設置されていて、車いすでも移動しやすいバリアフリー設計になっています。室内にトイレや洗面、浴室、キッチン、収納が備えられています(浴室、キッチン、収納は室内ではなく共用部分に備えられている場合もある)が、通常の賃貸住宅同様に、家具や家電は自分で用意します。
Cアミーユ川崎小倉の外観(夕方に撮影)
エントランスはオートロックで各部屋のメールボックスがあるなど、広いことを除けば通常の賃貸住宅と変わりません。廊下は広く、手すりがつけられていますが、部屋ごとに鍵がかけられるようになっています。
廊下は広くて手すり付き
モデルルームの室内(手前左側ミニキッチン、右側浴室と洗面台、奥が居室)※家具、家電、カーテン、食器等は含まない
モデルルームの浴室と洗面台※車いすや備品は含まない
共用の食堂。奥が厨房で、茶器や電子レンジ、トースターも常設。食堂は映画上映の会場にもなる
特殊浴室
生活支援や介護のサービスについては、サービス付き高齢者向け住宅を運営している(株)メッセージが個別に対応しますが、自分で外部の介護事業者を選ぶこともできます。医療についても自分で選べますが、地域の医療機関や薬局と連携もしています。
気になる費用についてはどうでしょう。
初期費用は特にかかりませんが、月額の利用料として14万2520円を支払います。これには、家賃、共益費、義務付けられている生活支援サービス(安否確認と生活相談)の費用が含まれます。逆に含まれないものは、食費、居室で利用した電気代と水道代、医療や介護のサービス費用(個別に利用した場合)になります。
「賃貸住宅なので、介護施設に移るまでの数カ月だけ入居するという方もいますし、お亡くなりになるまで住み続ける方もいます。要介護5の方や認知症の方なども実際に入居されていますから、介護度が重たくなっても住まいの移動をすることなく、最後までこちらの住宅で暮らしていただくことが我々の役割だと思っています。」と語るのは、Cアミーユ川崎小倉マネージャー辰巳清治さん。
>>次ページからは、介護施設の有料老人ホーム、特別養護老人ホームの事例について見ていきましょう。