引っ張り癖をつけない、左か右について歩くことを教える
オーストラリア、フィリップ島の海岸にあった看板。観光地であると、海岸で犬を自由に走らせてみたいと思っても、なかなかそうはいかない
ガイドはこれまでお預かりしたよそのお宅の犬の散歩などさせてもらったこともありますが、ぐいぐいリードを引っ張りっぱなし、ちょこちょこ縦横無尽に好き勝手歩き回り、足元にまとわりつくといったコですと、正直なところ、たいへん気を使い、疲労困憊してしまいました。これでは散歩自体が大仕事。万一リードが離れたら事故を起こしてしまう危険性もありますし、小型犬であれば間違って踏みつけてケガをさせてしまうのではないか、それを避けようとして自分が転んでケガをしてしまうのではないかとヒヤヒヤしながらの散歩でした。
街中や出かけた先でこういう歩き方をしていると、一瞬すれ違うだけだとしても周囲の人たちにとっても同じく歩きにくいということになってしまうでしょう。また、ぐいぐいと引っ張ることで、場合によっては気管や首を傷めてしまうこともあります。
本来、散歩は愛犬と一緒に楽しめるものであると思います。もし愛犬が好き勝手に歩いてしまうのだとしたら、飼い主がそれについて歩くことはせず、その場で立ち止まってしまい、愛犬が行きたがるのとは逆方向に向かって歩き出す。その時に愛犬が好きなオモチャやおやつで気を引きながら、「ツイテ」と言って左側か右側につくように誘導しながら歩いてみる。というような練習をしてみてはいかがでしょうか。
余談ですが、犬を左側につかせて歩くというのは、おそらく訓練競技会やドッグショーの影響が強いと思われますが、その他に、人間の心理として心臓が左側にある分、体の左側にあるものを守りたいという意識が働くそうなので、愛犬は保護すべきものと考えると、自然と犬を左側に歩かせたくなるのかもしれません。
それはともかく、日本の交通法規では、人は道路の右側を歩くことになっていることから、特に歩道のない道路で犬を左側に歩かせると車道側を歩かせることになってしまいます。そういった時などは右側について歩かせるようにするなど臨機応変に対応できるようにするのがいいのではないでしょうか。
絶対に覚えさせたい呼び戻し、「オイデ」「コイ」
観光地などに出かけ、そこで愛犬が迷子になってしまうケースが意外にあります。オーストラリアではオフリードになっている犬も見かけましたが、飼い主さんが「Come on」「Come here」と呼ぶと素直に戻って行きました。あなたの愛犬は、呼ばれたらすぐに戻って来ますか?街中や観光地など、お出かけ先には見知らぬ匂いが溢れており、犬にとっても興味を惹かれるものです。匂いを嗅ぐことに夢中になっていて、気がついたら飼い主さん家族から遠く離れてしまっていたというのはありがちなこと。
そもそも国内では犬をノーリードにできる場所は限られているわけですが、それでも何かの拍子にリードが外れてしまったり、停車した車から飛び出してしまったりなど、ノーリード状態になってしまうシチュエーションは考えられます。また、ノーリードOKの場所であっても、知らない人や犬と出会った時に呼び戻すことで無用のトラブルを避けることができたり、人が多い場所では極力愛犬を自分のそばにいるようにさせることでお互いの歩行がスムーズになったりといったこともあります。
飼い主さんのことが大好きで、それなりの関係性が築けているなら、犬にとって飼い主さんのところへ戻ることは嬉しいはずです。呼ばれて戻ったらすぐリードに繋がれて車に乗せられた、戻ったのに「なんでもっと早く戻らないの!」と叱られた、戻らずにいるとロングリードを無理矢理ずるずる引っ張られた、というようなことを繰り返していると、犬もだんだんと戻りたくなくなってしまうことでしょう。
なかなか戻って来ないのであれば、犬とは反対方向に少し走りながら、その後を追ってこさせるようにして呼び込み、犬が来たらオモチャで遊んであげるなど、飼い主さんの下に戻ることが、犬にとってハッピーであるようにさせてあげることが一番のポイントです。
その他、犬笛を併用するのもガイドとしてはお勧めです。ガイドは愛犬に犬笛を使用していました。「オイデ」を一度覚えてしまえば、「オイデ」と言った後にすぐ犬笛を吹き、それをだんだんと言葉のコマンドの方を少なくしていくことで、犬笛に慣らすことは充分可能です。吹き方を変えることで、「オイデ」「そこでマテ」「右へ」など教えることもできます。オフリードで愛犬との距離が離れた時、人間の声だけではなかなか届かないこともありますから、犬笛を使用してみるというのもいいのではないでしょうか。
ここまで読んで頂いて、「街中や観光地など犬連れで出かける際に気をつけることはそんなことか」と思った方は、すでに愛犬のしつけについて真面目に取り組んでおり、それなりの関係性もしつけもできているという方だと思います。「え?そうなの?」と思った方は、もう少し愛犬のしつけやマナーについて真摯に考えみましょう。