収入が増えない状況下でも金融資産が増えていたことは驚き
日本銀行は四半期(年4回)ごとに資金循環統計を公表しています。公表データは統計期間が終了してから3ヵ月後に公表されるため、足元の家計の状況と正確に比較する速報性には欠けますが、全体の流れを知るには参考になるデータと言えるでしょう。ポートフォリオのリバランスは別として、途中経過を知るには重宝なデータと言えるはずです。2014年12月18日には、2014年7月~9月の資金循環統計が公表されました。家計が保有する金融資産残高は、9月末現在で2.7%増加し1654兆円となり2四半期連続過去最高を更新。前年比では16四半期連続増加しているのですから、かれこれ4年間は増加していることになります。
2013年、2014年は円高、株安が続き、また2014年は久し振りに春闘でベアがあったことから金融資産残高が増えるのは理解できますが、それ以前の収入が増えない状況下でも残高が増えていたことは驚きと言わざるを得ません。日本人の貯蓄好きを背景としているのか、はたまた将来を悲観したのかは定かではありません。
投資信託の対前年比二桁増は続く
それでは金融資産ごとの増減を見ていくことにしましょう。金融資産残高の過半を占める現金・預金は前年比1.7%増加の870兆円となっています。家計の金融資産残高全体に占める割合は52.6%やや低下傾向にありますが、前年比で増加していることを考慮すれば、インフレ傾向の政策を国が行っているにしても、貯蓄から投資へと山が動いていないことがわかります。
対前年比で二桁の増加が続いているのが投資信託です。2014年7月~9月期も14.9%増と株式・出資金が一桁増に甘んじているのとは対照的です。考えられるのは、海外の株式やREIT(不動産投資信託)、高利回り社債(ハイイールド債券)などが日本株と比較して好調だったことが二桁増の要因と考えられます。
株式・出資金が対前年比5.6%増と2014年に入って最も増加率が低くなっているのは、日本株が秋口まで低迷していたことが要因でしょう。ただ、金融資産残高全体に占める割合は9.4%の156兆円です。投資信託の増加率が二桁増を続けているとはいえ、構成比は5.2%の86兆円ですから依然として残高や構成比には倍近い差があるのです。
構成比から見て現金・預金についで多いのが、保険・年金準備金です。構成比は26.8%、444兆円の残高があります。ただ、前年比の増加率は1.9%とアベノミクスが始まってからは最低になっています。2015年1月からの相続税の基礎控除4割減、年金不安などを反映して期を追うごとに増加率は大きくなると思われましたが、実際は逆でした。
唯一減少しているのが債券です。対前年比の増加率はマイナス6.1%、構成比は1.7%、残高は28兆円まで減少しています。個人向け国債などが満期になっても、金利が低いことから乗り換えが行われていないことが要因でしょう。残高が少ないからでしょうが、増加率のマイナス6.1%はアベノミクスが始まってから最も少なくなっています。
最後に外貨建て資産を見ていくと、全体ではアベノミクスが始まって以来の残高43.1兆円、構成比は2.6%です。円安が進行した影響もありますが、家計が外貨建て商品への投資を増やしたことが大きいと思われます。2014年に入ってから外貨預金は期を追うごとに残高は減少していますが、外貨建て投資信託、外貨建て対外証券投資は順調に増加しています。
家計を1つの器に見立てた統計データですが、資産ごとの増減、全体に増え方などを皆さんの金融資産残高、増減と比較されてください。皆さんの家計は全体の平均を上回っていましたか。上回っている家計はその調子で、下回った家計は平均以上になるよう頑張りましょう。
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