モダンでありながら、和の風情を感じさせる外観

――本日は『邸宅設計プロジェクト』の第一弾である駒沢第一展示場を実際に拝見できるのを楽しみに伺いました。気鋭のインテリアデザイナー・橋本夕紀夫氏とのコラボレーション作品ということで、どのような空間が広がっているのかとワクワクしています(藤丸さん:以下同)。
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【左】住友林業 住宅事業本部 技術部 デザインパートナーグループ マネージャー 忠保覚さん【中】住友林業 住宅事業本部 技術部 デザインパートナーグループ 副部長 加藤常孝さん【右】藤丸由華さん:ラジオパーソナリティ、All About「東京」ガイド。ラグジュアリーホテルなど都内の注目スポットを1200ヵ所以上取材している


――まずは、異色ともいえる外観に圧倒されました…。箱型のモダンな形でありながら、和の趣も感じさせる、今までにないルックスですね。

加藤さん(以下、加藤):都市部の住まいを想定した、外に閉じて内に開く“コートハウス”スタイルの建物です。ただし、単なる箱型にしてしまっては従来のものと変わりません。住友林業ならではの提案として、日本人の琴線に響く、都市の“風情”を感じさせる外観にしたいと考え、伝統建築の象徴である庇形の屋根を組み合わせました。
外観

敷地いっぱいに外壁をつくり、中央に中庭を配したロの字型のスタイルが印象的


――箱型の都市型住宅は数多くありますが、庇形の屋根がついているスタイルは初めて見ました。外壁の仕上げも、よくあるタイル貼りではないところが新鮮ですね。

忠保さん(以下、忠保)
:外壁は、貝殻や雲母石をブレンドした住友林業オリジナルの“シーサンドコート”を使用しています。昔ながらのコテ塗り左官仕上げで、吹付け仕上げでは出せない表情をつくり出しました。イメージ通りの仕上がりになるよう、現場で何度も見本をつくってディスカッションを重ねたんです。

――モダンな外観なのに、冷たい感じがしないのはそのためなのですね。工業製品の均一な表情とは違った、人の手による仕上げならではの温かさや味わいを感じます。
それから、窓のないファサードに、大きな木の引き戸がとても印象的ですね。

忠保:我々はこの戸を「ゲート」と呼んでいます。ゲートは、内と外を仕切る部分であり、シーンに応じて襖のように開け閉めできます。ゲートを開くと、アプローチから中庭へと続く空間が“内でもなく外でもない”日本的な曖昧さをもったスペースとしてあらわれます。

――そして、中庭に置かれた大きな石がお出迎え、というわけですね。ドラマチックで、ラグジュアリーホテルの演出に通じるものを感じます。

忠保:これは、香川県産の庵治石(あじいし)です。日本三大花崗岩の一つとして知られる、庭石としても高い評価のある石で、独特の色合いや石肌に何とも言えない味があります。インテリアデザイナーの橋本氏と共に産地へ行って、この場所に合う形と質感の石を半日以上かけて探しました。

加藤:石がモニュメント的な存在であると共に、アプローチと中庭の境に置くことで、外と内をゆるやかに区切る役割も担っています。
中庭

長い年月を経た自然の石が醸し出す、堂々とした存在感はまさに邸宅に相応しい。日差しや雨水など自然の恵みが降り注ぐ中庭には、艶やかに色づくオオモミジが植えられている


――最近のトレンドとして、ホテルのエントランスやロビーに、存在感のあるオブジェなどを配するスタイルがあります。華美ではないけれども、重厚感がそのホテルの格式をおのずと表すような…。この石もまさに、そのような存在だと感じました。

忠保:都市に暮らす家だからこそ、自然から生まれた素材を積極的に取り入れたいものです。加工してきれいに整えたものではなく、この石のように元のままの姿でそこにあるというのも意義深いです。自然のものが持つ力で、住まいに自然の息吹が吹き込まれるようなイメージですね。


厳選された素材と、匠の技が織りなす空間>>