平均貯蓄額は前年より81万円増加
日本銀行が事務局を務める金融広報中央委員会が、11月5日に2014年の「家計の金融行動に関する世論調査」を発表しました。単身世帯、2人以上世帯の調査データが発表されていますが、まずは2人以上世帯の調査データから見ていくことにしましょう。調査時期は2014年6月13日から7月22日です。金融資産の平均保有額は1182万円と2013年と比較して81万円増加しています。中央値は400万円で2013年比で70万円増加しています。金融資産を保有している世帯に限ると、平均値は1753万円で対前年比108万円の増加、中央値は1000万円で対前年比100万円の増加となっています。金融資産保有世帯に限れば、調査を開始した1963年以降では最高の平均保有額となっています。
2013年は金融資産を保有していない世帯が初めて3割を超えた(31%)ものの、2014年は30.4%とやや減少しました。減少したとはいえ、金融資産保有ゼロ世帯が3割を超えていることから、資産格差がなかなか縮まらないことがうかがえます。
金融資産の増減とその理由
ここからは金融保有世帯に限った調査になりますが、金融資産残高が1年前と比較して増加した世帯は26.5%と2013年と比較して0.9ポイントの増加。逆に減少した世帯は29.1%と前年と比較して1ポイント減少しています。増加した理由は「定期的な収入が増加したから」が28.5%と昨年比1.3ポイントも上昇した反面、株式、債券価格の上昇により、これらの評価額が増加したからは17.9%と昨年比0.7ポイントの低下となっています。調査時期の日経平均株価が概ね1万5000円~1万5500円と、2013年末よりも下落していることが影響したのかもしれません。
一方、金融資産が減少した理由は、定期的な収入が減少したので金融資産を取り崩したからが43.3%と昨年比2.4ポイントの増加。耐久消費財(自動車、家具、家電等)購入費用の支出があったからが35.2%と昨年比3.7ポイントの増加となっています。
アベノミクスにより2014年の賃上げ(春闘)は久し振りにベースアップが行われたと騒がれましたが、かなりの世帯の賃上げは芳しくなかったようです。また、耐久消費財の購入が増えたのは、消費税の引き上げに備えた前倒し消費と思われます。2015年10月の消費税再引き上げが決まれば、1年半で消費税は倍になることから、耐久消費財の購入のための金融資産の取り崩しはさらに増加するかもしれません。
金融資産の保有状況
金融資産を保有している世帯の金融商品別の過去4年分の構成比は図のようになっています。郵便貯金を含む預貯金が54.1%と過半を占めていますが、過去4年では最低の割合となっています。ただ、債券・株式・投資信託は16.8%と2013年より0.1ポイント減少していますが、投資信託が金融資産に占める割合は順調に増加していることがわかります。NISA(少額投資非課税制度)を保有している世帯における平均保有額は125万円となっています。
大幅に増えているのは生命保険。構成割合は18%と過去4年では最も高くなっています。2015年1月からの相続税の基礎控除額の減額に備えた動きかもしれません。
金融資産構成の前年比では「現金や流動性の高い預貯金から、長期運用型やリスク資産に振り向けた」とした世帯は5.6%と前年と変わっていません。反面、「長期運用型やリスク資産から、現金や流動性の高い預貯金に振り向けた」世帯も3.9%と前年と変わっていません。
物価上昇が鮮明になっているにもかかわらず、家計の金融資産に関する行動は依然として山は動かずという感じがします。後半では、金融資産の保有目的、借入金の状況、老後の生活への心配などを見ていきたいと思います。
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