攻撃センスのある選手は守備もうまい
攻撃の局面で球際に強い選手は、日本にもいる。宇佐美貴史(22歳、ガンバ大阪)だ。ドリブルで局面を打開することができ、決定的なラストパスが出せて、自らゴールを狙うシュート力を持つ。ボールを持った彼は、様々な場面で「球際の強さ」を発揮している。
しかし、9月と10月のテストマッチで、アギーレ監督は宇佐美を招集していない。所属クラブでの好調ぶりが、メキシコ人指揮官には届いていないのだ。
ディフェンスの局面で戦うイメージが、宇佐美は薄いからかもしれない。彼と同じようにドリブル突破に優れる武藤嘉紀(22歳、FC東京)は、守備の局面でもハードワークしている。
とはいえ、攻撃センスに長けたアタッカーは、守備のセンスも備えていることが多い。W杯の優勝メンバーが揃うドイツのバイエルン・ミュンヘンで、宇佐美は2012年にプレーした。翌シーズンは同じドイツのホッフェンハイムにも在籍している。ディフェンスの重要性は肌で感じてきた。先天的なセンスも問われる攻撃とは異なり、守備は身に付けることができる。アギーレ監督が宇佐美の守備力を気にかけているのなら、なおさら招集したほうがいい。
細身でも球際に強い内田
11月のテストマッチで招集が噂される内田篤人(26歳、シャルケ/ドイツ)も、球際で頑張れる選手だ。すらりとした身体からは力強さを感じにくいが、彼は1対1の攻防における原則を忠実に実行できる。身体のぶつけ合いだけでなく、相手の心理を読んだ攻防で優位に立てるのだ。駆け引きができるのである。それもまた、球際に強いということである。パワーとスピードに溢れた選手が多いドイツ・ブンデスリーガで、移籍1年目から定位置をつかんできた実績は眩しい。ブラジルW杯後に代表引退を示唆した内田を、それでも招集したいとアギーレ監督が考えるのも納得できる。
アギーレ監督が言う「世界で戦える選手」とは、これまでのところ「フィジカルコンタクトに怯まない」とか「競り合いに強く激しく挑む」プレーとして理解されている。メンタルとフィジカルで相手に負けないのは、もちろん大切な要素だろう。しかし、身体の線が細くてもシュートをブロックさせないストライカーは、球際に強い選手と言うことができる。
11月のテストマッチに向けて、アギーレ監督は誰を招集するのか。「球際に強い」選手のリストアップを期待している。