子供は歯医者さん自体が嫌いなのではない
歯医者さん嫌いにしないママのアプローチとは?
では、子供は歯医者さんの何を怖いと感じるのでしょう? あのキーンという音? 病院の整然とした空気? 白衣の先生? いえいえ、これらは子供が歯医者さんを怖がる決定的な要因ではありません。
それでは、子供はなぜ歯医者さんを怖がるのでしょう?
最近行われたスペインの研究で、子供がなぜ歯医者さんを怖がるのか、その原因が明らかになりました。原因が分かれば、ママも対処がしやすくなります。早速そのデータをご紹介しましょう。
子供が歯医者を怖がる根本的な原因とは?
その研究では、185人の子供達を対象に、次の項目に関する聞き取り調査を行いました。- 歯医者に行くことが怖いか?
- 過去に歯医者でいやな経験をしたことがあるか?
- その子の性格
- その子の考え方の傾向
子供達の親にも、これと同じ質問に答えてもらいました。
すると、子供の歯医者嫌いにもっとも影響していたのが、4の「考え方の傾向」。他の項目と比較しても、群を抜いて高い影響力があり、「考え方の傾向」が脆弱(ぜいじゃく)であればあるほど、子供は歯医者を怖がることが分かったのです。ここで言う脆弱とは、悲観的に考えてしまう傾向のこと。
具体的には、
- イスに座ったら最後、もう自分には何も太刀打ちできない
- 何が起こるのか、何をされるのかが予測不能だ
- 痛いにちがいない
- 気持ちが悪くなるにちがいない
過去を”今”どう思っているかが分かれ目
「過去のいやな経験は関係ないの?」と思われたかもしれません。実は、過去の経験自体は、その子の歯医者嫌いを決定づける要因ではなかったのです! 「過去の歯医者でのいやな経験」を“今”どう捉えているか、これこそが決定的な要因でした。つまり、過去の経験があっても、それを悪い方向へ引きずっていなければ、大丈夫というわけ。古代ギリシャの哲学者エピクテトスの言葉
「人を悩ませるのは、物事自体ではない。その物事をどう捉えるかによって悩むのだ」
を借りれば、
「子どもを怖がらせるのは、歯医者自体ではない。歯医者をどう捉えるかによって、恐怖心が芽生えるのだ」
と言えます。
歯医者嫌いは伝染する!?
また、この研究で分かった興味深いデータがあります。それは、歯医者嫌いは親子で伝わりやすいということ。親が歯医者嫌いだと、子供も歯医者嫌いの傾向が高かったのだそうです。心理学で、物の見方は、親から子へ伝わる傾向が強いことが分かっています(*参照『プラス思考の子育て:ママだから伝えていきたいこと』)。だから、これは納得の結果。なんと歯医者嫌いまで、子供には伝わるのですね。
面白いのは、
- 13歳までは、父親の歯医者嫌いが影響を及ぼしやすい
- 13歳以降は、母親の歯医者嫌いが影響を及ぼしやすい
歯医者=怖い、にしないおすすめアプローチ
日頃の歯磨きタイムに、次のようなことを言ってしまったことはありませんか?「きちんと歯を磨かないと大変なことになるよ」
「虫歯になったら痛いんだよ」
「歯医者さんで痛い思いをするのはイヤでしょ」
特にお子さんの年齢が低いうちは、たいがいの子が歯磨きが苦手なので、ついママも脅かしてしまうことってありますよね。でも、これが、先に触れた、脆弱性につながってしまいます。
「そうか、歯を磨かないと大変なことになるんだ」
「虫歯って痛いんだ」
「歯医者さんは痛いことをするんだ」
と考えるようになってしまうのです。
こうなってしまうと、歯医者さんを目の前にして、
「痛くないよ」
「大丈夫!」
と励ましても、それは気慰めにしかなりません。歯磨きのたびに、悪いイメージを植えつけられる「歯医者さん」こそ、お気の毒。
それよりは、普段から、
「歯を磨くとつるつるして気持ちいいね」
「ママ、歯磨き大好き」
と純粋に歯磨きだけをプッシュする声かけがおすすめです。
歯磨き自体をポジティブに促す習慣をつけ、歯医者さんへのイメージをニュートラルに保つ。こうすることで、子供が持ちがちな歯医者さんのイメージを変えることができるはずです。
*出典:European Journal of Oral Sciences (2013) 「Applying the Cognitive Vulnerability Model to the analysis of cognitive and family influences on children's dental fear.」より