ジャガーFタイプクーペはグランドツアラー寄りのよくできたスポーツカー

ジャガーFタイプRクーぺ

トップモデルのRは0-100km/h加速4.2秒、最高速は300km/hに

では、いったい、どんなクルマに仕上がっているのだろうか?

ひと言でいうと、グランドツアラー寄りのよくできたスポーツカー、である。鼻歌まじりで転がせば、それはどこまでも安楽なツアラーに徹するけれども、ひとたびドライバーの心とクルマのドライブセレクトモードの両方の“スイッチ”が入ったなら、猛々しいサウンドの演出や、前アシの軽やかさ、後アシのねばり、前後重量&サイズバランスからくる機敏さ、などによって、すぐにリアルスポーツへと転じることができる。

その変わり身の潔さは、XKシリーズよりも激情的で、Eタイプ・ライトウェイトをも彷彿とさせる。歴史解釈に誤りがなく、さりとてモダンさを忘れず、要するに“ジャガーらしい”という表現が、この50年間で最も似合うスポーツカーになった、というわけだ。

そのことは、特に6気筒モデルに顕著であった。エンジンがパフォーマンス面で決して主張しすぎることがなく、それでいて十二分な動力性能を発揮し、心地よい回転フィールとサウンドエフェクトを供しながら、前後バランスも鮮やかにワインディングを駆け巡る。

汗っかきのスパルタンスポーツでは決してない。本気になればそれなりにタイムを出してくれる爽快なシティランナー、といった風情だ。

その総合的なパフォーマンスに敬意を表して、Fタイプの六発を特に、“XKF”と呼びたくなってしまった。
ジャガーFタイプRクーぺ

3リッターV6スーパーチャージャーはベーシックモデルが340ps/450Nm、Sが380ps/460Nmと出力が異なる。Rには550ps/680Nmの5リッターV8スーパーチャージャーを搭載。8ATを組み合わせる

もっとも、さらなるマルチシリンダーグレードだって、歴史解釈に基づけば、正統派である。けれどもV8搭載モデルともなれば、さすがに、ちょっと目が血走った猫科の猛獣のようだ。動力性能のすさまじさはいうに及ばず、サウンドエフェクトもイタリアとドイツのミックスで過剰なほど。フェラーリオーナーが振り向くほどの轟っぷりで、特に街中では窓ガラスが割れんばかりの轟音となる。フロントにどでかい5リッターエンジンを積んでいるとは感じさせないパッケージなど長所もあるが、トゥマッチな感覚は否めない。
ジャガーFタイプRクーぺ

各車輪に伝わるトルク量を適切に制御するEAD、コーナリング時などにブレーキ力を個別に配分するトルク・ベクタリング・バイ・ブレーキなどを装備。1秒間に最大500回ダンパーレートを調整するアダプティブ・ダイナミクス・システムも備わる