ジャガーFタイプクーペはグランドツアラー寄りのよくできたスポーツカー
では、いったい、どんなクルマに仕上がっているのだろうか?ひと言でいうと、グランドツアラー寄りのよくできたスポーツカー、である。鼻歌まじりで転がせば、それはどこまでも安楽なツアラーに徹するけれども、ひとたびドライバーの心とクルマのドライブセレクトモードの両方の“スイッチ”が入ったなら、猛々しいサウンドの演出や、前アシの軽やかさ、後アシのねばり、前後重量&サイズバランスからくる機敏さ、などによって、すぐにリアルスポーツへと転じることができる。
その変わり身の潔さは、XKシリーズよりも激情的で、Eタイプ・ライトウェイトをも彷彿とさせる。歴史解釈に誤りがなく、さりとてモダンさを忘れず、要するに“ジャガーらしい”という表現が、この50年間で最も似合うスポーツカーになった、というわけだ。
そのことは、特に6気筒モデルに顕著であった。エンジンがパフォーマンス面で決して主張しすぎることがなく、それでいて十二分な動力性能を発揮し、心地よい回転フィールとサウンドエフェクトを供しながら、前後バランスも鮮やかにワインディングを駆け巡る。
汗っかきのスパルタンスポーツでは決してない。本気になればそれなりにタイムを出してくれる爽快なシティランナー、といった風情だ。
その総合的なパフォーマンスに敬意を表して、Fタイプの六発を特に、“XKF”と呼びたくなってしまった。
3リッターV6スーパーチャージャーはベーシックモデルが340ps/450Nm、Sが380ps/460Nmと出力が異なる。Rには550ps/680Nmの5リッターV8スーパーチャージャーを搭載。8ATを組み合わせる