心身のバランスを崩したらお金持ちにはなれない
お金持ち脳に詳しい医師の吉田たかよしさん
お金を稼いだり、増やせなくなる人というのは、心身のバランスを失ってしまった人が多い。とくに女性の場合、無理なダイエットは危険!というのも、最近クリニックを訪れる女性で、無理なダイエットにより抑うつ症状を訴える人が増えているのです。
そういう女性には共通の特徴があります。まず身体的な特徴としては顔色が悪く、ガリガリに痩せている。性格的にはまじめで向上心が強く、一生懸命なガンバリ屋さんであること。向上心が強いので、今働いている職場や仕事に飽き足らず、もっと稼げるようになりたいと資格取得や転職を目指す人が多い。
そういう向上心の強い人は体型もスラリと美しくなければいけない。太っていてはダメだという強い思いがあります。
そこで持ち前のガンバリでダイエットをするのですが、それだけに極端に走ってしまう。カロリーを押さえようと野菜ばかり食べてたんぱく質や脂肪を徹底的にカットする。するとどうなるか?
痩せているのに脂肪肝という不思議なことが起きます。というのも小腸で吸収された脂肪は肝臓でたんぱく質と結合して血液とともに体中に運ばれるのですが、ダイエットでたんぱく質が不足しているため、結合させてやることができません。そのため、どんどん肝臓に脂肪が貯まっていく。
過激なダイエットがお金持ちへの道を阻む
ダイエットによって、ただでさえ少ない脂肪が、肝臓でせき止められることで、脂肪を必要としている体内の他の臓器、たとえば卵巣や脳に行きわたらなくなる。実は脳の半分は脂肪であると言ってもいいのです。というのも脳は神経細胞の塊ですが、それはシナプスを介して流れる電流で動いている。電流が正しく流れるには絶縁体が不可欠なんですね。電線の周りには必ずビニールやゴムのチューブが覆っていますが、それと一緒です。絶縁することで漏電を防ぎ、電流が正常に流れる。脳の神経細胞の周りは脂肪の膜で覆われているのですが、脂肪が不足しているため、その膜が作られにくくなる。そこで脳は新たな神経細胞の結合を制限するよう指令を発します。
当然ですが脳の働きは悪くなり、健全な脳の活動を維持できなくなります。また卵巣も脂肪が必要で、それが不足することで性ホルモンの分泌が悪くなる。すると生理不順になったり、心身のバランスを崩して、抑うつ状態に陥ってしまいます。こういう人が抗うつ剤を飲んでも効きません。当然ですよね、原因がうつ病とは全く違うところにあるからです。ただし無理なダイエットをやめて、普通の食事に戻せば、正常に戻ることが多いのです。
興奮状態=躁状態の人は無謀な買い物をする!
抑うつ状態がいろいろと問題を引き起こすことはいろんな視点で述べてきました。では逆の状態ならいいのか? つまり興奮状態ならばお金を稼ぐことができるかというと、必ずしもそうではありません。やはりバランスが一番大切なのです。典型的なのが双極性障害、すなわち躁鬱病を患った人の場合です。双極性障害は抑うつ状態と、その逆の躁状態が交互に現れる障害です。抑うつ状態のときは悲観的で行動ができなかったのが、躁状態になると饒舌になり、楽観的で幸福感が強く、軽率と思えるほどに素早く行動に移すようになります。
前向きかつ積極的になるので、躁状態のときはお金が稼げると思うのではないでしょうか。たしかに、起業や投資で勝負に出るときなどは、躁状態のときのほうが行動に移しやすいということは言えそうです。ただし、躁状態なので前後を顧みず大きな勝負に出てしまったりします。
急にお金の使い方が変わったら、要注意!
私の患者さんにも躁状態になると衝動買いに走り、やたらお金を使ってしまった人が多くいます。なかにはあと先を考えず高価なマンションを借金して購入したりする。で、うつ状態になると一転、その無謀な行為を後悔し、ますます落ち込むのです。躁状態になるとお金の出入りが途端に激しくなる。衝動買いが増えて出費が重なるので貯金を崩したり借金を背負ってしまう。たとえたくさん稼いでも、それ以上に使ってしまうので貧乏になってしまうのです。
いずれにしても、お金を稼いで増やすには心身のバランスを保つことが大切です。バランスが崩れていないかどうか? できるだけ日ごろから意識して自分の状態をチェックする必要があります。
それには前にあげた10のチェックリストでチェックしてみる。その他で分かりやすいのは自分のお金の使い方。通帳をみて極端にお金を使わなくなっていたり、逆にやたらとお金を下ろしていたり、お金の使い方や流れがふだんと異なっていたら要注意! 自分の心身の状態が不安定であるサインだと思ってよいでしょう。
★次回は、お金持ち脳を作る人間関係についてインタビューします!
教えてくれたのは……
吉田たかよしさん
1964年生まれ。灘中学、灘高校を経て東京大学工学部(量子化学専攻)を卒業。東京大学大学院(分子細胞生物学専攻)を修了。東京大学新聞研究所(現・大学院情報学環)を修了。この間に東大経済学部ゼミを修了し、国家公務員I種・経済職試験を上位合格。NHKアナウンサーを経て北里大学医学部へ、医師免許を取得。加藤紘一元自民党幹事長の公設第一秘書として科学技術政策の立案に取り組む。東京理科大学客員教授、神戸大学学術研究員。現在は本郷赤門前クリニック院長として、受験生専門の心療内科クリニックを運営。新宿メンタルクリニック顧問として「受験うつ」に対する磁気刺激治療にも取り組む。著書に『最強の勉強法』(PHP出版)、『仕事脳─成功する人の脳の使い方』(講談社)など多数。受験うつ予防ナビhttp://utu-yobo.com/で脳機能を高める勉強法を公開中
取材・文/本間大樹