子供と一緒に美術館、どう思う?
今年は親子で芸術の秋を楽しんでみては?
実はそんなことはありません。子供達が美術館で得るものは想像以上に多く、沢山の情報をインプットして帰ってくるのだそうです。
子供は美術にどれだけ興味があるの?
ニュージーランドの大学の研究チームが、子供達の美術館での学習量を計るため、都市ダニーデンにある美術館を訪問。平均年齢6歳の子供達58人が、その美術館で1日を過ごしました。そして、その1~2日後、どのくらいその日のことを思い出せるかをテストをしました。すると、子供達が思い出したものを自由に発言していく形式(子供主導型)だと、驚くほどの量の記憶が次々に思い起こされることが分かりました。さらに、その日のことを絵に描きながら思い起こすと、その量は倍ほどに増えることも分かりました。
一方、大人が作成した質問表をベースに、その美術館での1日について質疑応答をしたところ(大人主導型)、子供達はうまく回答できませんでした。
さらに、7ヵ月後に同じようにテストすると、自由に語らせる子供主導型だと、まだかなりの記憶が残っていたのです。
子供が自由に思い出を語れる子供主導型だと次々と出てくるのに、大人主導型だと「なんだったっけ? そんなことあったかな?」とつまづいてしまう。なぜここまでの差が出たのでしょう? これはすでに知られているとおり、大人と子供では着目点が違うから。同じ美術館で1日を過ごしても、大人が重きを置くものと、子供が見ているものには大きな違いがあるのですね。
大人と子供は視点が違う
以前行った思い出の場所を「ねぇ、○○って覚えている? ○○があったよね。○○もしたよね」とママが聞いても、子供は「???」ということありませんか? 実は、これも視点の違いで、子供はその場所を忘れてしまったのではなく、ママの視点では見ていなかったから。でもその時、子供はしっかりと別のことを吸収しているのです。美術館でも然り。この研究者達も、「子供達は美術館で非常に濃く、多大な情報を吸収してくる」と子供を美術館に連れていくメリットを強調しています。特に、その後にお絵かきをする機会を設けてあげると、その日のことがカムバックしやすいとも言っています。
「連れていったって、どうせ何も覚えていないんだから……」ということはないんですね。子供達は子供達の感覚で多くをキャッチしているのです。その後のお絵かきを見れば、一目瞭然でそれを実感できるはずです。
美術館のように、感覚的な学習は、何が正解で、何が間違っているということはありません。家族で行って、大人と子供でいかに注目していることが違うか、その違いを楽しむのも、ママとして新たな発見につながるかもしれません。ぜひこの秋は、お子さんと美術館を訪れてみてはいかがでしょうか?
*出典:Applied Cognitive Psychology (2009) 「Drawing facilitates children's reports of factual and narrative information: implications for educational contexts.」より