ドル高時代の幕開け:ニクソンショック以来初の11週連続上昇
ここでドルの対主要貿易相手国に対する、ドルの総合的な強弱を示すドルインデックスの値動きを確認してみましょう。ドルインデックスは2014年7月より騰げ止まらず、9月26日(金)までで11週連続上昇となっています。これはドルが変動相場制となった1971年のニクソンショック以降、初めての事です。11週連続上昇というような事は、相場の世界ではたまたま起きるものではありません。何か大相場の幕開けを暗示している事が多いように思います。例えば、2013年2月1日に、日経平均株価は1959年以来という12週連続上昇を記録しました。当時日経平均は1万1,000円ほどの水準だったのですが、54年ぶりのこの記録はその後のアベノミクスによる本格的な日本株の上昇転換を暗示する象徴的な出来事でした。その前に11週以上続伸(結果は17週続伸)した1959年も、岩戸景気に乗って日本が高度経済成長期に入る時代に起きた事で、日経平均が始めて1,000円の大台に向かっていた時でした。
ちなみに、ドルインデックスは11週続伸と言っても、25年間の月足レベルで見ると、また下値から少し反発した程度に過ぎません。逆に言うと、今後起きるかもしれない本格上昇は(この11週続伸よりも)遙かに息の長い、大きなものになる可能性があるということです。例えば1996年から2001年にかけて起きたようなドル高時代のようなイメージです。この時もここ数年のように長い持ち合い時期があり、そこから上放れたのでした。今度もそうなるとすると、1ドル=110円はおろか、長期的には125円、150円という可能性もあると思います。今回の11週連続上昇によるドル急騰は、ドル安時代の最後の数年に続いた三角持ち合いの上限を上に抜けるものであり、長期トレンドの大転換を意味する可能性があります。
ここで世界の資金の動きを確認してみましょう。米国のファンド(投信)資産は株式運用型のものが8月末時点で8兆3900億ドル、債券運用型が3兆4840億ドル、それら二つを組み合わせたハイブリッド型のタイプが1兆3820億ドルの規模であります(Investment Company Institute社調べ)。どれも今年は時価の値上がりと新規のマネー流入によって資産額を伸ばしていますが、内容には最近少し変化もみられます。 運用資金のキャッシュフローを見ると、5月以降米国内の株式で運用するファンドから毎月数十億~百億ドル超の流出が見られます。さらにその株式の運用タイプ別を詳しく見ると、グロース型、アグレッシブグロース型という成長株ファンドからの資金流出が最も大きくなっています。 その一方で、同じ株式型でも(米国から見た)海外株式運用型のファンドには安定して毎月資金の流入が見られるところです。
円安メリットを享受する投資方法を考える必要がある
米国人から見れば、ドル高時の海外資産運用は為替で目減りするので不利になる状況です(数年前の日本と同じ状況)。逆に米国以外の海外勢にとっては経済・株価の強い米国で資産運用をしたほうが有利でしょう。目先の効果で見ればそのような狙いとなるのですが、長期的に見れば、米国人は充分高くなった国内の成長株ファンドからお金を抜いて(利益確定)、そのお金(=強いドル)で割安な海外株などの外貨資産を購入しようという動きになっているようにも見えます。海外株を買ってもすぐにドル高で資産減損する可能性もありますが、ドル高時に長期にわたって海外資産を仕込んで行くと、円高時代に強い円を利用して割安な米国株を仕込んでいた日本人投資家が、今、2重(為替&株価値上がり)の大きな利益を手にしているような展開が、彼らには可能です。いずれにせよドル高時代が開始されるとすれば、投資戦略も変更されることになります。米国経済は強く、量的緩和の終了と来年の利上げが確実な情勢です。そのことでドルは主要通貨全てに対して更に強くなります。異次元緩和全盛期の円は、そのドルに対してさらに弱く進むと思われ、一方で弱い経済と緩和に入ろうとするユーロに対しては最近強くなっています。最弱のユーロは当然ドルに対して下がる一方となっています。したがって、当面はドルに対しての円安メリットを享受できる投資方法を考えていく必要があります。たとえば、日本の輸出企業の中でも強い競争力を持つ企業に部品やサービスを提供する企業の中で、株価がまだ割安に放置されている銘柄が日本株にはいくつもありますが、そのような銘柄にこのタイミングで投資をするのは1つの方法だと思います。
参考:日本株通信
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