クルマの制御を信じれば、誰でも存分に速く優雅に
とにかく、ターボSの走りは、主役のエンジンを操りながら、エンジンに操られている感も強い。周りの脇役たち=賢い電子制御や芯の強いシャシー、頑丈なボディといった黒子たち、が一生懸命働いているからこそ、ドライバーは、たとえ初心者であっても、オーバー500psの実力を不安なく、勇気さえあれば一瞬のうちに、引き出すことができるというわけなのだけれども、そうと分かってはいても尚、このエンジンは凄くて気分がいい、という結論に達する。そのことをボクは、ターボSを存分にドライブし、クルマから降りた瞬間に思い知らされた。エンジンの印象は、前述のごとく、カラダに強く残っている。けれども、クルマ全体のインプレッションはというと、“ポルシェ911に乗った”以上のなにものでもない。上代2000万円オーバーの“高級スポーツカー”のわりには、エンジン以外にこれといって乗った甲斐がなかったりする。
なるほど、ターボもターボSも、911であることには変わりがない。エンジンの秀でた、総合力でノーマルを2倍くらい圧倒する、ものすごい911なのである。最新技術のオンパレードによって、高性能なパワートレインを豪華に、手抜かりなく包み込んだ。それが、最新の911ターボというものだった。
だから、どんな乗り手であっても、とにかくクルマの制御を信じることで、ポルシェターボを存分に速く走らせることが可能である。その間のお楽しみといえば、上手に演出されたエンジンフィールと、そのまわりの意気軒昂なサウンドで、それだけで乗り手(ただし、クルマ運転好き)の心は、天にも昇ったような気分になるのもまた事実である。
そして、ふと気がつけば、まるでVWゴルフを転がしているかのように、淡々と街乗りをも楽しんでいる自分を発見して、また驚くのだ。乗り心地は硬いが優雅で、一方的なスパルタンさなど微塵もなく、何ならこのまま温泉デートにでもカノジョを誘いたくなるくらい。カブリオレボディともなれば、尚更だろう!