お金を稼ぐ脳は食料を得ようとする脳と同じ部位
お金持ち脳に詳しい医師の吉田たかよしさん
お金を稼いでいる人はまず例外なく積極的で前向きな性格です。逆に抑うつ傾向のある人物は前向きになれず、お金を稼いだり増やしたりすることが苦手の人が多い傾向があります。
先日、仕事を第一線でバリバリこなしてきたビジネスマンが、突然やる気がなくなり、仕事が手につかなくなったとクリニックに訴えてきました。
調べてみるとうつ病まではいかないにしても、ストレスによって抑うつ的な精神状態に陥っていました。こういう状態が長引けば当然収入にも影響します。お金を稼ぐことも増やすこともできません。
じつは脳科学的には、お金を稼ごうとする脳の部分は、人が食料を得ようとする部分と同じなんですね。お金は人類が誕生してからかなり後になって登場してきました。ですから脳の中に直接お金に対応する部位はなかった。そのかわりに食料を得ようとする脳をそっくりそのままお金に関する脳として代用しているわけです。
ご存知のように食欲というのは人間の三大欲の一つ。非常に原始的でかつ強い本能だと言えます。その食物を得ようとする意欲を担う脳を使うわけですから、人がお金に執着したり、お金を大切に思う気持ちも当然と言えば当然なのです。
このことから二つのことが言えると思います。一つは人間の脳は健全に機能する限り、黙っていてもお金を得たいと思うし、そのために行動を起こすようにできているということ。逆に言うならば脳が正常に機能しているなら、本来は誰もがお金を増やせる金持ち脳だということです。
もう一つはお金を得ようと頑張ったり、お金を増やそうと考えるのは人間にとっては自然なことで、決してやましいことでも恥ずかしいことでもないということ。えてして日本人はお金のことを口にするだけでも「はしたない」とか「恥ずかしい」と思いがち。
ですが、それが脳の成り立ちや機能からみて、人間にとってごく自然な欲求だとしたら? 私たちはグルメ番組を見ても不快に感じる人はほとんどいないでしょう? 恋愛映画を嫌だと感じるでしょうか? 同じ人間の本能に関わることなのに、なぜかお金に対してだけは素直に向き合えない。そんな文化的、環境的なバイアスがとくに強いのが日本人のようです。脳科学的に見たら不自然なことなんですね。
脳さえ元気なら誰でもお金持ちになれる!
もうおわかりと思います。本来自然で健康な脳を持っていたら、お金は誰もが稼げるし、お金持ちになれるのです。それができないと言うのは、脳科学的に何らかの病気、ないしは病的な状態があるか、あるいは文化的、環境的なバイアスや抑圧があるから。そのために認識と行動が歪められてしまっている。
いまの私たちの社会は脳を健全に保つのがとても難しい社会です。ストレスが多い現代社会では、程度の差こそあれ、多くの人が抑うつ症状を抱えています。
先日もある企業に招かれて話をしましたが、日々の仕事のストレスといかに上手に付き合い、克服するかがテーマでした。こういう依頼が最近増えてきているんですね。ストレスから抑うつ症状になって、会社に出て来られなくなる。そんな社員がいまどの職場でも急増していて大問題になっているんです。
抑うつ状態や、さらに本格的なうつ病になってしまうことで、脳の健全な機能が妨げられてしまい、すべてに意欲がなくなり行動ができなくなる。仕事もそうですが、当然お金を稼いだり、増やしたりすることもできなくなるのです。
今回の連載では、そんな障害や抑圧を取り払って、本来の健全な脳にするための方法を皆さんにお話ししたいと思います。お金持ちになるために特殊な脳を鍛えるとか、資格や能力を身につけるという話ではありません。
あくまでも本来の健全で健康な脳に戻してやる。そのための障害を取り除くだけで、意欲がわき自然にお金を稼ぐ脳と行動につながっていく。そんなお話をしたいと思います。
★次回は、お金持ち脳のチェック方法についておうかがいします
教えてくれたのは……
吉田たかよしさん
取材・文/本間大樹