内服薬だけではなく、湿布や座薬にも注意
「アスピリン喘息」とは
「アスピリン喘息」は急激な運動やストレスが引き金となって発作が起こるように、アスピリンやNSAIDs(非ステロイド抗炎症薬)と呼ばれる薬が引き金となって喘息発作が引き起こされる症状です。詳しい機序は完全にはわかっていませんが、喘息患者の10~20%がアスピリンに対して過敏性をもっているとされ、子供ではまれで、20代から30代にかけて多いです。重症の喘息患者、また副鼻腔炎などの鼻疾患をもっている喘息患者ほど、アスピリン喘息を合併しやすくなります。アスピリン喘息は薬の服用から約1時間以内に鼻水、鼻づまり、激しい咳、息苦しさなどが発現し、その後重症となるケースが多いです。
「アスピリン喘息」を引き起こす薬
「アスピリン喘息」という名前からアスピリンによってのみ引き起こされると勘違いされることもあります。しかし、アスピリンだけではなくその他のNSAIDsと呼ばれる解熱鎮痛剤に対しても反応が起こります(そのため最近ではNSAIDs過敏喘息とも呼ばれます)。例えばアスピリンに過敏性のある方は、その他のNSAIDs、よく知られた名前でいうと、イブプロフェン、ロキソプロフェン、インドメタシンなどにも過敏性をもっています。アスピリンを含むNSAIDsは病院で処方される薬だけでなく、歯医者での抜歯後の痛み止めや、ドラッグストアで買える風邪薬などにも広く使用されています。また内服薬だけではなく、座薬や湿布などの貼り薬、結膜炎や花粉症に出される一部の目薬、肩こりや筋肉痛のスプレーなどにも反応を起こします。
アスピリン喘息の方が使える薬
アスピリン喘息の方はアスピリン他、NSAIDsの薬を服用してはいけません(減感作療法などの治療の場合を除いて)。NSAIDsに分類される薬は種類が多く、避けなければいけない薬はたくさんあるので、痛みや熱が出た場合に服用する薬をあらかじめ決めておくとよいです。NSAIDs過敏症の方が発熱時や疼痛時、風邪の時に安全に使用できる薬は、内服ではステロイドや抗菌薬、漢方などがあります。また、解熱鎮痛薬としてアセトアミノフェンは低容量で比較的安全に使用できるとされています。1回に300mg程度までであれば内服可能で、処方せん医薬品でも市販薬でもあります(市販薬はタイレノール)。外用薬ではMS温湿布などが使えます。NSAIDsの解熱鎮痛剤が使えなくても、痛みや熱に対する対処方法は他にもあります。その都度主治医に相談して処方してもらいましょう。
発作時には
今までNSAIDsで発作症状が出たことがない方はこれまでどおりにNSAIDsを服用しても問題ありません。ただ、いつアスピリン喘息になるか分からないので、アスピリンや他のNSAIDsによるアスピリン喘息という副作用があるということを知り、発作が出た場合には適切に対処できることが大切です。薬を服用しておよそ1時間以内に鼻水、鼻づまり、激しい咳、息苦しさなどが出現したり、過去に同様の症状があった場合は、薬の副作用かもしれないと注意してください。副作用を自覚してからは息苦しさが急速に悪化しやすいため、原則として救急車を呼びます。ピークは自覚症状出現から2-3時間後にくるため、始めは軽くても油断しないようにしましょう。気管支拡張薬の吸入や発作時の頓服薬があれば、使用してください。
アスピリンやNSAIDs以外にも、一部の血圧の薬や緑内障の目薬など、喘息の患者さんにとっては使用によって症状が悪化してしまう薬があります。医療機関では喘息の方が服用してはいけない薬ではないか確認しますが、新しい薬が処方されるときは喘息があるということを伝えるようにしましょう。