グーズリー ティルカン
以前カンティヨンでも紹介した、ベルギーのトラディショナルタイプのランビックと同じカテゴリーの中で、最も新しいランビックブレンダーです。グーズリー ティルカンのオーナーでもあり、ブレンダーでもあるピエール・ティルカン氏は、ルーヴェン大学で醸造学を学んだ後、ランビックの醸造所で経験を積み、2009年にブレンドを開始、グーズリー ティルカンがスタートしました。技術的に新規参入がとても難しいカテゴリーで、12年ぶりに登場した伝統を継承するブレンダーです。ランビックブレンダー
ベルギーには現在でも、カンティヨンのように伝統的なランビック醸造所がいくつか存在しますが、ランビックには醸造所以外にもブレンダーという伝統的な仕事もあります。ブレンダーとは、ランビック醸造所が造ったランビック入りの樽を購入し、ブレンドして自社ブランドとして販売するというもの。信用と技術が必要な昔からの職人仕事ですが、現在はとても少なくなってしまいました。グーズリー ティルカンの社名にもなっているグーズリーとはグーズ屋といったところでしょうか。オウドグーズとアランシェンヌというビール名は古典的といった意味。社名からビール名まで、すべてにピエール氏の意気込みが感じ取れます。現在ティルカンではカンティヨン、ジラルダン、リンデマン、ブーン醸造所の4種のランビックをブレンドしてオウドゥ グーズを造っています。
オウド クエッチ ティルカン アランシェンヌ
名前のクエッチ(Quetsche)とは、一般に見かけるプラム(スモモ)Prune(プリュヌ・仏)とは区別されている、ベルギーやフランスで採れる大粒のセイヨウスモモのことです。プラムとプルーンという二種類の名称がありますが、日本では生のものをプラム、乾燥または加熱などの加工をしたものをプルーンと呼ぶことが多いようです。ランビック樽をブレンドしてグーズを造ります。グーズにクエッチを漬け込み、ステンレスタンクで最低4カ月かけ て熟成させ、香りと成分を溶け込ませます。ゆっくりと時間をかけて溶け込ませることで、皮が浮き上がり、果実の繊細な風味がランビックに移りこみます。伝統を守ってボトリングは冬場のみ。コルク栓で封をして、18℃の貯蔵庫で、横にして丁寧に90日程熟成させます。
野生酵母は麦汁の糖分以外に果物から出る果糖も食べてしまうので、香りと、色は残りますが甘さはほとんど残らないドライな味わいに仕上がります。穀物由来のコク、染み出るようなホップの苦味、フレッシュな果実を漬けたからこそ出るクエッチの華やかな香りに、トラディショナルランビック特有の酸味が合わさって、大人のフルーツビールの完成です。
ベルギーの醸造家と話をすると、「ビールは人間が造るものではなく、酵母が造るもので、人間は環境を整えることが仕事」という話をよく聞きます。多くの伝統的なランビックは、時間を掛けることでしか品質を安定出来ない、伝統的な醸造方法です。人間の手が入る部分が少ない分、デリケートなビールになるというわけです。
次の頁ではオウドゥ クエッチ ティルカン アランシェンヌにぴったりな料理を初回します。