サプライズ選考の裏側にあるもの
アギーレ監督は世代交代を急いでいるのか?
代わって5人の選手が、日本代表に初選出されている。
アギーレ監督は世代交代を急いでいるのか?
そうでは、ない。
ブラジルW杯のメンバーのうち、DF内田篤人(26歳)は所属するシャルケ(ドイツ)で戦線離脱している。香川真司(25歳/マンチェスター・ユナイテッド=イングランド)はメンバー発表直前にケガをしてしまい、MF清武弘嗣(24歳/ハノーファー=ドイツ)もケガからの回復過程にある。
さらに加えて、MF青山敏弘(28歳/サンフレッチェ広島)やMF山口蛍(23歳/セレッソ大阪)らも、直近のJ1リーグ戦には出場していない。ブラジルW杯のメンバーではないものの、すでに代表経験のある原口元気(23歳/ヘルタ・ベルリン)は、ドイツ・ブンデスリーガの開幕戦で負傷してしまった。
ハビエル・アギーレ監督(55歳)自身も、香川と原口はケガで選べなかったことを明言している。内田や清武らも、コンディションが整えば代表チームに絡んでくるに違いない。サプライズと騒がれる5人のニューカマーの選出は、実績あるプレーヤーのケガなどが後押ししたものでもある。4年後のロシアW杯へ向けて、アギーレン監督が世代交代を急いでいるわけではないのだ。
ニューカマーには無印と旬の男が
言ってみれば初招集された5人は、“繰り上げ当選”のような立場だ。とはいえ、新監督の初陣に招集されたのは期待の表れである。フレッシャーズのプロフィールを紹介しておこう。サガン鳥栖所属の坂井達弥(23歳)は、左利きのセンターバックだ。今回のメンバーでは、水本裕貴(28歳/サンフレッチェ広島)、吉田麻也(26歳/サウサンプトン=イングランド)、森重真人(27歳/FC東京)と、ポジションを争うことになる。
水本、吉田、森重はいずれも2008年の北京五輪代表で、吉田と森重はブラジルW杯にも出場した。一方の坂井は、過去に日本代表に選ばれた経験がない。9月5日にウルグアイ、同9日にベネズエラと対戦するテストマッチとともに、代表でのトレーニングも彼には貴重な経験となるだろう。
松原健にも同じことが言える。
アルビレックス新潟に所属するこの右サイドバックは、2016年のリオ五輪を目指すU-21(21歳以下)世代だ。同じ右サイドバックの酒井宏樹(24歳/ハノーファー=ドイツ)はもちろん、左サイドが主戦場の長友佑都(27歳/インテル・ミラノ=イタリア)、左右両サイドでプレーする酒井高徳(23歳/シュツットガルト=ドイツ)らの海外組から、貪欲に学んでいってほしい。今回のチームで最年少の彼には、価値ある学びの機会となるはずだ。
MFでは森岡亮太(ヴィッセル神戸)が初の日本代表を射止めた。
23歳の彼が代表に定着するには、本田圭佑(28歳/ACミラン=イタリア)や香川らとポジションを争い、結果を残していかなければならない。日本代表の最激戦区と言っていい中盤の攻撃的なポジションで、存在感を放てるか。
FWではふたりの選手が、日本代表の一員となった。皆川佑介(22歳)と武藤嘉紀(22歳)だ。
サンフレッチェ広島所属の皆川は、186センチの大型ストライカーだ。長身を利した空中戦だけでなく、身体の強さを生かしてポストプレーで攻撃の起点となる。
ザッケローニ前監督のもとでは、ハーフナー・マイク(27歳/コルドバ=スペイン)や豊田陽平(29歳/サガン鳥栖)らの長身選手が生かされなかった。プロ1年目の“無印”にどのような役割が与えられ、皆川はどこまでアギーレ監督の期待に応えられるか。メキシコ人指揮官が思い描くサッカーを推察する手がかりとしても、皆川の起用法に注目が集まる。
武藤は“旬の男”だ。J1リーグでここまで7ゴールは、所属するFC東京で最多の数字だ。現役慶大生の肩書が話題を集めるが、鋭いドリブルと迷いのないシュートは、潜在能力の高さを感じさせる。同タイプの原口よりひと足先に、アギーレ監督の目の前でアピールをしたいだろう。
アギーレ監督の初陣は、9月5日に札幌で行われるウルグアイ戦だ。ブラジルW杯でベスト16入りした南米の強豪には、昨年8月に2対4で敗退している。セレッソ大阪に在籍するディエゴ・フォルラン(35歳)は選出されなかったが、FWエディンソン・カバーニ(27歳/パリ・サンジェルマン=フランス)らの主力が来日する。
初めての日本代表召集にあたって、アギーレ監督は「若手かベテランか。初めて招集されたのか、すでに代表で出ているのか。海外でプレーしているのか、Jリーグでやっているのか。そういった区別はしない。全員がゼロからのスタートだ」と話す。2018年のロシアW杯へ向けたサバイバルが、いよいよスタートする。