景気低迷時はジャパン・ホテル・リートの株価が良かったが……
このようにビジネスモデルの違いによって、利益率が異なる両社ですが、実際の株価はどのような違いがあるでしょう?5年前の株価をゼロとして、その後どれだけ株価が変動したか、チャートを見てみましょう。【図表3 帝国ホテルとジャパン・ホテル・リートの過去5年間の株価の推移】
過去5年間は帝国ホテルよりジャパン・ホテル・リートのほうが株価が上昇しています。
営業利益率の高いジャパン・ホテル・リートの株価がよく上昇しているので、今後も投資対象としてはジャパン・ホテル・リートの方がよいのでしょうか?
そもそも、現在はジャパン・ホテル・リートの営業利益率が圧倒的に高いですが、今後もこの差は埋まらないのでしょうか?
下のグラフはジャパン・ホテル・リートの当期と1期前の賃料種別の売上です。
【図表4 ジャパン・ホテル・リートの賃料種別】
売上の多くが固定賃料であることがわかります。固定賃料とは、客数等にかかわらず一定額の賃料を受け取ることができるということです。
つまり、ジャパン・ホテル・リートは宿泊客の増減や、宴会の頻度など、景気動向に左右されることなく、毎期一定の売上を確保することができます。したがって、ジャパン・ホテル・リートは今後もこれまでと変わらず、高い営業利益率を期待できます。
逆に見れば、これ以上高い営業利益率になることは期待しにくいともいえます。日本経済が回復し続ければ、ホテルの利用も増えるでしょう。2020年には東京オリンピックがありますので、多くの外国人が訪日するでしょう。そうすると、宿泊客数や宴会数が大きく増えることが期待できます。
しかし、ジャパン・ホテル・リートの売上の多くは固定賃料なので、ホテルの宿泊客数や宴会数が増えても、営業利益はそれほど増加しないと予想されます。
一方で、帝国ホテルは景気回復、業績拡大の時には、宿泊客数や宴会数の増加がそのまま売上の増加につながり、結果として営業利益が増加することが期待できます。
実際、2013年の9月に東京オリンピックの開催が決定した時、帝国ホテル、ジャパン・ホテル・リートともに株価は上昇しています。しかし、チャートを見ると一目瞭然ですが、帝国ホテルが大きく上昇しているのに対して、ジャパン・ホテル・リートはそれほど上昇していません。
つまり、帝国ホテルの株価は景気回復、業績拡大の時には比較的上昇率が大きくなると予想されます。一方で、景気後退、業績悪化の時には下落率も大きくなると期待できます。
一方で、ジャパン・ホテル・リートは景気に左右されず、毎期一定の収益を計上することが期待できます。
このように両社は、ビジネスモデルの違いを理由として、業績の変動にも大きな違いがあり、結果として株価の変動にもそれぞれの特徴があると考えられます。
したがって、同じホテル業界に投資するといっても、投資対象によって、期待される投資結果も異なります。
今後の景気拡大を期待するなら、帝国ホテル。景気拡大を期待しないなら、ジャパン・ホテル・リート。
このような観点も、投資判断の参考にしてみてください。