欧州の金融緩和は、世界的な景気や株価の後押し要因に
「いまの状況は、2013年11月の頃に似ています。ECB(欧州中央銀行)が政策金利を0.5%から0.25%に下げたことに加え、その後に発表された米国の雇用統計で非農業部門就業者数が前月比20万4000人増と市場予想の12万人を大きく上回ったことから、市場への潤沢な資金供給と景気回復が期待され、円安と世界的な株高が起こったときです」戸松さんは、こう話します事実、ECBは6月5日に開催された理事会で、ユーロ圏の政策金利を0.25%から0.15%に引き下げました。また、民間銀行がECBに預金する際に適用される下限金利も、ゼロからマイナス0.1%へと引き下げられています。
「この目的は、デフレ圧力を和らげ、銀行の貸し出し促進を促し、為替相場をユーロ安に導き、輸出競争力を高めて経済を上向かせることにあります。特に、マイナス金利の導入により、銀行は余剰資金を中央銀行であるECBに預けると金利を没収されるのですから、貸し出しを増やしたり、海外に資金を移すことにつながります」
海外に資金を移すことは、ユーロを売って外貨を買うことですから、ユーロ安につながります。加えて言えば、そのユーロ売りの資金が米国の国債に流れ込み、米国では量的緩和の縮小を行っているにもかかわらず(国債を買い付ける資金が減っているのに)米国の国債価格は下がらず、金利が低いままの状態が続いています。これは米国経済に大きなプラスとなります。
「欧州の金融緩和は、世界的な景気や株価の後押し要因になるでしょう。目先は、ウクライナやパレスチナの問題、イラクでの空爆承認といった地政学的リスクから、いったん株価が下がる場面もあるでしょう。ですが、世界の投資家がリスク資産に資金を移すリスクオンに触れやすい状況もある。地政学的リスクを注視する必要はあるものの、大きく下げた場面は株を仕込むチャンスといえそうです」